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あんなに泣いて別れたわりに、その後レオリオと電話したのはたった2回きりだった。「無事家に着いたよ」と報告したのが1回目。それから「みょうじはどうだった?」としばらく日が経ってレオリオに聞かれたのが2回目。どちらも会話は短い時間で終わった。それは受験勉強の邪魔をしたくなかったし、あんまり長く話すとまた寂しくなってしまうから……というのもあるけど、何よりの理由は帰ってすぐにばーちゃんから念を教わることになった私は毎日くたくたで、しかも修行中はドーレから一歩も出ておらず2度目の電話の質問には答えられなかったから、だった。
そんなわけで容赦ないスパルタ修行を約半年もの間耐え抜き、ばーちゃんに太鼓判を押されてから私はようやく生まれ故郷、みょうじを訪れた。
そしてその帰り。あの時の回答がてら、9月1日より一足先にレオリオと二人で会う約束をしたのだった。
ハンター試験の時に地図で見た、ドーレから遠い遠い場所。
彼が住む街の空港へ降り立つと、半年前私を見送ってくれた時と同じような紺色のスーツを着たレオリオは、同じように片方の手をポッケに突っこんで手を振り、私を出迎えた。
「よっ、久しぶり」
「久しぶり。レオリオ」
次に会えた時は嬉しくてまた泣いてしまうかも。と想像していたほど大袈裟な感動はやってこないもので、自分でも不思議なくらいあっさりとした再会だった。
先に私が泊まるホテルに寄ってもらって。チェックインを済ませ荷物を置いて。そのあとレオリオの運転でおすすめのゴハンやさん――私はお酒が飲めないと言ったにも関わらず呑み屋だったけど――に連れていってもらった。
「かんぱーい!!」
グラスを鳴らし、りんごジュースを一口飲めば胸にナンバープレートを付けていた時間へあっという間に巻き戻る。
レオリオがおすすめだというだけあって、お店は食事メニューが豊富で何を頼んでもおいしいものばかり。上機嫌で料理に舌鼓を打ちながら、近況報告や当時の思い出話に花を咲かせていた。
「オレ、試験が終わったらなまえはすぐ行くもんだと思ってた」
「なに?」
「みょうじに」
春巻きを頬張った箸で私を指すお行儀の悪いレオリオをテーブルの下で軽く蹴って、大皿から取り皿へ私も春巻きを移動させた。
「行きたかったけど、ばーちゃんにダメって言われた」
「へー。どうして」
「念を習得してからじゃないとって……あ、レオリオは医大の受験が終わってから修行するんだよね」
「……なんで知ってんだオイ」
「ばーちゃんが言ってた。私達ルーキーの動向は師範代の皆さんに筒抜けなのよ」
口に入れた春巻きはぱりっと小気味のいい音を鳴らして崩れてゆく。私がさくさく咀嚼を楽しんでいる間にレオリオは、次に丸い揚げ物へ手を伸ばした。コロッケかなと思って見てたら、噛みついた先からあつあつのチーズがびよーんと伸びるさまに思わず目を奪われる。なにそれ!おいしそう!
「でね、私も最初言われた時はなんですぐに行かせてくれないの!って思ったけどさ。実力が伴わないまま首突っ込んで、誰かに迷惑かけることになるのはもうイヤだなって。ククルーマウンテンの時みたいに」
「そうか。ってお前!人の皿から取るんじゃねェ!」
「だから出来ることはちゃんと準備してから行こうって思ったわけ!こ、これおいしーね!!」
レオリオが烏龍茶を飲んでる隙にお皿からかすめ取った揚げ物は今までに食べたことのない感動的な味がした。
「で。念願の生まれ故郷へ戻った感想は?」
「うーん。まあ、良くも悪くも当時のままって感じかな。地雷の撤去ができてないから歩けるところは限られてたし。誰も……いなかったし。それよりさ、レオリオは受験勉強どうなの?またカンペ作ったりしてないでしょうね?」