◇43

レオリオの運転でお店に来たのだから、帰りもレオリオが運転するんだと誰だって思うじゃない。
なのにいつの間にかレオリオの手元には空のジョッキが転がっていて、お店を出た後は結局私が運転してレオリオを家まで送ることになってしまった。

「なんでお酒飲んじゃうかなぁ。はるばる遠くから来た客人に運転手させないでよね!」
「わりーわりー。つい楽しくなっちまってなぁ。あ、そこ右」
「はいはい」
ぐちぐちレオリオを責めながら車を走らせ30分ほど。レオリオに言われて車を停めた場所は住宅街にある駐車場だった。降りたレオリオがちょっぴりおぼつかない足で隣のマンションへ向かうところを見ると、ここがレオリオのお家みたいだ。
「今日は楽しかったよレオリオ。ありがとう。じゃあ今度はヨークシンシティで」
「は?ヨークシン?」
車の鍵を返して、タクシーを呼ぼうとバッグから出した携帯を血相変えたレオリオに取り上げられる。
「お前もう家帰るのかよ!」
「今日じゃないよ。ホテル取ってたでしょ?1泊して明日帰るの」
「明日ぁ?!」
携帯を奪い返そうとするも、私の手は虚しく空を切る。レオリオは絶対私が届かない位置に携帯を高々と掲げながら話を続けた。
「てっきり9月までこっちに居るもんだとばかり……仕事か?」
「そういうわけじゃないけど。9月まであと2週間もあるよ?ずっといる必要ないでしょ。ね、携帯返して」
レオリオの肩に手を置いてジャンプしても、ジャンプした分だけくいっと後ろに腕を反らされる。口をへの字に曲げてうーんと唸ったレオリオは何を思ったか話をぶった切ってスタスタとマンションのエントランスへ入っていってしまった。
「部屋上がってけよなまえ」
「ええ……」
携帯を人質に取られた私に選択肢はない。レオリオの後を追いかけて、半ば強制的にマンションのエレベーターに同乗させられる。
「やらしーの」
「なんもしねーっつーの!明日帰るんならもう少し、コーヒーぐらい飲んでけって言ってんだよ」
「ふーん」
ま、コーヒー出してくれるなら。ね。
エレベーターが開いて、出たすぐのドアに鍵を差し込むレオリオを私は黙って待っていた。

「散らかってるけど......まあ、入ってくれ」
狭い玄関を通り抜け、リビングに通される。部屋の中はあちこちに難しそうな参考書や医学書が山積みで、テーブルの上には開きっぱなしのノートと筆記具もあった。私と会う直前まで勉強していたのかもしれない。
「おお。医大生って感じ」
「まだなってねえけどな」
思わず呟くと、レオリオが照れ臭そうに頭をかいた。



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