デカい式場押さえるくらいの甲斐性はオレにだってあるさ@

石畳の坂道を上りきると見えてくるのは、空と海の青に映える白壁の教会。
と言えば聞こえはいいが、実際はただの片田舎にあるちっぽけで古い建物だ。
しかし白い花やレースがたくさんあしらわれた装飾だったり、2列に伸びた華やかなテーブルのクロスが風になびく様なんかになまえが心底嬉しそうな顔をするのを見ると、式場をここにして良かったと思う。

言っておくが、ここで式を挙げたいと言い出したのはなまえの方だ。
オレだっていっぱしの医者でありハンターだ。億万長者……ではなくとも、例えば結婚情報誌の一面を飾るような名門ホテルや、どっかのテーマパークで結婚式をしたい、となまえが望めばそれを叶えてやれる程度の力はある。
「本当にここでいいんだな」
今さら否定されたってどうにもならねえけど。
過去に何度も投げかけた質問を今一度受けて、晴れ晴れした笑顔をうっすら曇らせたなまえが両手を腰に当てた。
「ここがいーんだってば。だって一緒に祝ってほしいもんね、ピエトロさんも」

教会の屋根にある、3つの鐘の音が冴え渡る。
オレはめっきり吸わなくなった新品のタバコを開け火を付けた。
いつもなら「くさい」と小言を言うなまえも今日は黙って立ちのぼる紫煙を眺めながらオレの隣に並んだ。

あいつとは。
ピエトロとはこの街で、ガキの頃から何をするにも一緒だった。
あいつを亡くしてからオレは自分の一生をかけてやるべきこと、使命とも呼べる夢を見つけた。医者になってあの日助けられなかったあいつのような子供を一人でも多く救ってやるのだと。
あいつのことを片時も忘れたことはないが、それでも時間というものは残酷で、医大に通うためこの街を離れ、学業に追われ、仕事に追われ、墓にもなかなか顔を出せなくなってくると少しずつ記憶の表層が磨り減ってゆくのを感じずにはいられなかった。
そんな時分になまえは言ったんだ。「結婚式はピエトロさんのお墓がある教会でしよう」と。
「ヘンな気遣いするなよ。なまえは会ったこともねえ奴なんだし」
「会ったことなくたってレオリオの大事な人は私にとっても大事な人だよ」
「一生に一度のことなんだぞ」
「だったらなおさら私がそうしたいの!これからどんな街に住んで、どこで仕事することになったって、結婚式のこと考えるたびにピエトロさんを思い出すでしょ。そういうのがレオリオには必要なんじゃないの?」
そう言って笑ったんだ。




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