じーっとしててもどーにもなんないもん@

石畳の坂道を上りきると見えてくるのは、空と海の青に映える白壁の教会。
オレはいてもたってもいられなくなって、真っ白な建物につづく原っぱを全速力で駆け抜けた。
「……あれ?」
教会の周りはそこかしこに白い花やレースの装飾がいっぱいで、結婚式にぴったりの華やかな雰囲気だ。そばの広いスペースには同じように豪華な飾り付けがされたテーブルも並んでいる。
だけど――
「誰もいない……?」
「だから言っただろゴン!来るのが早すぎるって」
背後から聞こえた声と共に、後頭部へ鈍い痛みが走る。
「ってぇ〜!」
「ほらみろ。受付のヤツすらいねーじゃんか」
ジンジンする頭を押さえ振り向くと、オレにチョップを食らわせた張本人は両手をスーツのポケットに収め、辺りを見渡しため息をついた。
「へへ、ごめんキルア。でもじっとしてられなかったんだもん」
なんてったって、今日はレオリオとなまえの結婚式なんだから!

一番乗りで到着したオレとキルアは誰もいない式場をぐるりと歩いたりしたものの、結局すぐ手持ち無沙汰になってしまい、坂道の近くまで戻って適当な場所に座りこんだ。
「なあゴン。今のうちにスピーチの練習してようぜ」
空を流れる雲を見るのにも飽きてきた頃、キルアはそう言うと折り畳んだ紙を懐から取り出した。
オレとキルアは今日、二人の友人代表としてスピーチを読むことになっている。
ウイングさんに何度も添削してもらって作ったスピーチ原稿がキルアの持ってる紙に書かれているんだけど……実を言うと、オレはこの内容にあまり納得がいってない。だって『本日はこのような素晴らしい席にお招きいただき〜』なんて堅苦しい言い方ばかり並べられていて、これを声に出したってなんだか自分の言葉じゃないみたいだ。
「やっぱりオレ、アドリブで言いたいな。スピーチ」
「はぁ?」
キルアは予想通りのしかめっ面をしてオレを見た。
「要はオレ達のおめでとうって気持ちをレオリオとなまえに伝えればいいんでしょ?こんなかしこまった言い方じゃ伝わる気がしないもん」
「ほんっと分かってねえなーお前は」
人差し指でオレのおでこをつっついたキルアは、次にその指をびしっとオレの方向へ向けた。
「これでいーんだよ。今日知り合いのハンターが何人来ると思ってんだ?万が一ヘタこいてみろ。この先永遠にからかわれ続ける運命なのが目に見えてるだろーが」
「でもこれじゃ、オレ達のスピーチなのにオレ達のスピーチじゃないみたいじゃん!」
「意味わかんねー!そんなに祝いたきゃ別の時に好きなだけ言えばいいだろ!」
「そうだけど!でもさぁ!」
言い合いがヒートアップして、キルアと睨み合ったまま思わず立ち上がる。
そんな時だ。オレ達の耳に石畳を叩く音が聞こえたのは。
微かに、だけどどんどんこちらに近付いてくる一人分の足音。

「……誰か来た」




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