ふと意識が覚醒してはっと目が覚めた。
それと同時に見慣れない木目の天井が目に入り、不思議な気持ちになる。
「あれ?ここは・・・?」
とりあえず起き上がろう、そう思い体を起こそうとする。
ズキンッ!
「い゛ッ!」
体にまるで電流が走ったかのような痛みがあって引き攣った声を上げた。
それでも痛みに耐えながらどうにか体を起き上がらせる。
あまりの痛みに涙目になりながらも、自分の体を確認した。
黒いタンクトップの下には白い包帯が隙間なく巻かれていて、ところどころに血なのか赤いシミのようなものがついている。
「うわぁ・・・」
よく生きていたな、なんて思わず自分の体を見て感心した。
あ、手がちゃんと動いてる。
今更そんなことに気づく。先ほど起き上がる時は無意識に動かしていたので気づかなかったな。
次に特に意味もなく手を頭に持っていく。どうやら頭にも包帯が巻かれているようで髪とは違った感触が指先から感じられた。
そして最後に、手を頭から顔へと持っていき頬を摘む。そして思いっきり抓ってみた。
「っつ!」
ちょっと力み過ぎた為か想像以上の痛みがあった。でも改めて確信できた。
自分は生きているんだ、と。
何となく体の重い痛みだけではそう感じられなかったのだ。頬を抓ってみて始めて確認できる気がした。
「はぁ・・・」
ゆっくりとため息をつく。
そして改めて自分がいるこの部屋を見回す。
部屋には自分が寝かされていたベッドの他に木の本棚とテーブルと椅子にランプ、窓際には花瓶が置いてある。
本棚には何語で書かれているのか分からない無数の分厚い本、テーブルにはコップとジュースのようなものが入った瓶、花瓶には赤と黄色の花が生けてあった。
やはり見慣れぬ部屋である。
さてどうしたものかと考えた後、痛む体に鞭を打ち、取り合えすベッドから降りようと床に足をつけて立とうとするが、力が入らず体が前に倒れた。
「〜っ!!」
ドン、という大きな音とともに体が床に思いっきり叩きつけられた。
声にならないほどの痛みが体を容赦なく貫く。
バンッ!
「今、大きな音が・・・ってねーちゃん!なにやってるんだぜ!?」
いきなりこの部屋の扉が開いたかと思えば、自分に水をくれたあの少年が入ってきて、こちらを見て驚いたように声を上げる。
「いや、立とうと思って・・・」
「そんなケガじゃ無理なんだぜ!」
少年は慌ててこちらに駆け寄る。
彼にはいっぱい迷惑をかけてるな・・・なんて苦笑しながら思う。
傷を気遣ってくれているのか優しく起こしてベッドに座らせてくれる。
「ごめん、ありがとう」
「いえいえなんだぜ!」
お礼を言えば彼はニコリと笑いそう返してくれた。
「あっ、そういえば君の名前は?」
「俺?俺は光!」
よく考えたら彼の名前を知らないな、と思い聞けばそう返ってきた。
「ミツル・・・」
「そうなんだぜ」
ミツルか、ミツル・・・。
「じゃあミッツ!」
「えー、みっつ?光がいいんだぜ」
「・・・分かった。ミツルって呼ぶ」
ミッツは気に入らなかったか・・・。なんでだろう??
・・・・・・まあ別に良いけど。
「ねーちゃんは?」
「ん?」
「ねーちゃんの名前は?」
彼からそう尋ねられる。
あ、そうか。
そういえば自分もまだ名乗っていなかった。
「えっと、オレは・・・・・・。えっと・・・あれ?」
「どーしたんだぜ?」
「名前・・・分かんない」
「ええっー!」
あれ?自分の名前は・・・、と考える。
どうしてだろう、思い出せない。
よく考えたら自分は今までどこで何をしていたのだろう。
何故あそこに倒れていたのだろう。
分からない、わからない・・・。
自分の名前も歳も誕生日も家族や友人のこともどんな性格だったかも、何もかもがワカラナイ。
「それ、"きおくそうしつ"ってやつなんだぜ」
「記憶喪失か、そうかも・・・多分」
「俺と似てるんだぜ!」
「え?」
耳を疑った。
だってニコニコ笑いながら彼はサラリとそう言ったから。
「オレ、に〜ちゃん達のことあまり思い出せないんだ。」
どんな顔でどんな姿をしていて、どんな声だったかが分からない。でも叱られた時とか褒められた時とかに言われたことだけはちゃんと覚えている、と光は続けて言う。
確かに似ているのかもしれない。
「だから、ねーちゃんも大丈夫なんだぜ!」
「うん」
根拠のない大丈夫だったが、何故か本当に大丈夫な気がしてくる。
「うん!」
もう一回そう言って頷いた。
バンッ
またこの部屋の扉が開く。
「お、起きたか!ボウズ・・・じゃなくて、嬢ちゃんだったな」
それと同時に知らないおじさんが顔を出した。
「あの人が助けてくれたんだぜ!」
「そうなの?」
「おう、傷だらけのわりに元気そうだなあ」
二カリと笑ったおじさんはこちらを見てそう言う。
「えっと、色々とありがとうございます」
「いえいえ。どういたしまして」
お礼を言えば、また二カリと笑った。
「そうだ、俺の妻が昼飯を作ったんだ。どうだ、食べれそうか?」
「・・・そ、そこまでお世話になるわけには・・・っ」
「そう遠慮しなさんな、食ってけよ」
「おばちゃんの料理、凄く美味しいんだぜ!」
流石にそこまで彼らに迷惑を掛けたくない、と思い遠慮しようとするのだが、何故か引いてくれない。
どうやらこちらが折れるしかないらしい。
「ほら、良いから食べに行くぞって歩けないか。持ってこようか?」
「・・・・・・すいません、ありがとうございます。」
おじさんのその問いに、遠慮するのを諦め素直にお礼を言った。
(どうやら僕らは)
(欠けているらしい)