お星様に会ったんだ




ガツガツ

と、目の前にある食べ物を手当りしだいに口に放り込む。

「あんふぁいいひほがふぁ(あんたいい人だな)」
「うんうん」

こんなに食べるのは久しぶりだ。
と思いながら、時折彼女の話に耳を傾ける。

「あはは…、ナツとハッピーだっけ?」

苦笑いをしながらそう聞いてきた彼女に、ご飯を食べながら返答すれば、

「分かったから、ゆっくり食べなって」

という声が返ってきた。
そして、一方的に話を始めた。

「あのサラマンダーって男、魅了(チャーム)っていう魔法を使ってたの。」
「チャーム?」

聞きなれない言葉に聞き返せば、

「この魔法は人々の心を術者に引きつける魔法なのね。何年か前に発売が禁止されてるんだけど…。」

と彼女は続ける。
あー、その魔法で女の子の気を引こうとしてたのか。という考えに辿り着く。
自分も女のはずだが、全く掛からなかったなーと呑気に考えながら、まだまだ続く話に耳を傾ける。

「あたしはアンタ達が飛び込んできたおかげでチャームが解けたってわけ」
「なるほど」
「こー見えて一応魔導士なんだー、あたし」
えへへと気恥しそうにいう彼女。
まだギルドには入っていないんだけどね。と続け、そしてこちらがギルドのことを知らないと思ったのか、説明を始める。

こちらも魔導士でしかもギルドに入っているのでなんとなく分かるのだが、楽しそうに話す彼女を見れば言い出せなかったのでふーんと言いながら聞く。

「そ、そうなんだ」
「よくしゃべるね」

一通りの話が終わり、ご飯を食べる手を止めてそう呟く。
その呟きが聞こえているのか、いないのか彼女はまた口を開いた。


「そういえば、あんたたちは誰かを探してたみたいだけど……」
「あい。イグニール。」

彼女の問にハッピーが答える。
自分もそれに続けて、

「サラマンダーがこの街に来るって聞いたから来てみたはいいけど別人だったな。」
「サラマンダーって見た目じゃなかったんだね」
「てっきりイグニールかと思ったのにな。」

期待はずれだと言わんばかりに呟くこちらに対して、彼女は目をパチパチと瞬きさせながら言う。

「見た目がサラマンダー……ってどうなのよ。人間として」
「ん?人間じゃないよ。イグニールは本物の竜(ドラゴン)だ。」
「……!!!!!」

当然だと言わんばかりにそう言い放てば、彼女は固まる。
なるほど、彼女はイグニールのことを普通の人間だと思っていたらしい。
まあ、本物のドラゴンなんて滅多にお目に掛かれないからね。

「そんなの街の中にいるはずないでしょー!!!」
「……あ」
「オイイ!!!今気づいたって顔すんなー!」

言われてみればあんな所にイグニールが居るはずないな、と改めて気づいて固まる。
どうやら本当に無駄足のようだ。
あんなに期待していたのに…。とガックリ肩を落とす。


「あたしはそろそろ行くけど…、ゆっくり食べなよね」

彼女はそう言ってテーブルの上にお金を置いていく。
その行動に感激して大量の涙が出てきた。
ナツとハッピーは去っていく彼女に向けて、

「ごちそうさまでしたっ!!」
「でした!!」

と言いながら土下座をする。
この際周りの目などは気にしない。感謝の意を伝えることが大事だと思い至った結果である。

当の彼女はきゃー、やめて。だの恥ずかしいなどと何やら言っている。

「い、いいのよ。あたしも助けてもらったし、おあいこでしょ?ね?」

と、同意を求められるが、

「あまり助けたつもりがないトコがなんとも…」
「あい…、はがゆいです」
「あ!そうだ!」

いいことを思いついたと言うように、自分の荷物の中からとあるものを取り出す。

「これ、あげるよ」
「いらんわ!!」

それは自称サラマンダーのあのおじさんから貰ったサインの書かれた厚紙だった。



◇◆◇



「ぷはぁー。今日はいっぱい食べたっ!」
「あい」
夜になり、ナツとハッピーは未だに続く満腹感に満足しながら高台を歩く。
その高台から一隻の船が見える。

「そういや、サラマンダーが船上パーティーやるって。あの船かなぁ?」
「うぷ…、気持ち悪っ」
「想像しただけで酔うのやめようよ」

船の上ということを考えただけで気持ち悪くなったナツにハッピーがいう。
それに仕方ないだろと返していれば、すぐ近くで自分達と同じように船の方を見ていた2人の女の子が何やら言っているのが聞こえた。

「見てみて〜!あの船よ、サラマンダー様の船!私もパーティー行きたかったぁ」
「サラマンダー?」
「知らないの?今、この街に来てる凄い魔導士なのよ」


「へー、あのおじさん凄いんだ」
「あい。知らなかったね」

ハッピーと顔を見合わせて言う。
先程見た時は凄そうには見えなかったが、人は見た目によらないようだとしみじみ感じた。
ぼーっとしていると2人の女の子の声がまた聞こえてきた。

「あの有名な妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士なんだって」

その言葉に衝撃を受ける。

「…フェアリーテイル」

また船へと視線を戻せば若干気持ち悪くなるが、そんなことよりもこっちが大事だ。

「フェアリーテイル」

ナツはもう1度その言葉を繰り返した。


(お星様に会ったんだ)
(金色でキラキラしてたよ)


星の唄聲が聴こえない