■ ■ ■

「わぁ、体が軽いや!」
「この感じ久しぶりだ!」
「と、虎さんも治ってる」
「…ふむ。」
「……わぁ」


あれから数時間が経った。
あの場にいた刀達、全員を手入れした後「あの子も直して欲しい」と頼まれ別の部屋に連れていかれて手入れをした。
案外、道具がなくてもいけるかもしれない。
その後、みんなの名前を教えて貰った。
そういうのに関しての記憶力はいい方なので、多分教えてくれたみんなの名前は言えると思う。
お兄さん達の名は、一期一振、三日月宗近。
短刀達は五虎退、乱、厚、平野、秋田って言ってた。
後から治した刀は、小夜、宗三、堀川、鯰尾、燭台切、大倶利伽羅。
で、多分合ってるよね?

みんな私を見るなり、震えるし、後ずさるし、刀は向けてくるし、本当に怖かった。治させてはくれたけれど、矢張り私のことを信じていない刀が殆どだと思う。治した後もめっちゃ睨まれるし…。

まあ、仕方ないと思う。

そういえば私、沢山刀をなおしたな今日…。
よく倒れないものだな、なんて三日月宗近さん、…は長いから三日月さんに珍獣でも見るような目で見られながら言われた。
解せぬ…。


まあ、この話は置いといて…。
「…え」
誰かこの状況を説明してプリーズ。
え?日本語可笑しいって!?いや、気のせいだよっ!
と一人心の中で叫ぶ。
私ってやっぱり寂しいな…。じゃなくて!
まずは1回、刀達の手入れをした後から振り返ろう、そうしよう。

えっと手入れが終わったあとは、一期一振さんが怪我をした手のひらに包帯を巻いてくれて、その後は今日泊まる部屋に案内されて、明日には帰れと矢張り言われ、その後ずっとこの部屋に居た。
気がついたら、日が暮れていたので布団を敷いてそのまま眠った。明日のこと考えても何も思い浮かばなかったしね!
そこまではいいんだ。そうそこまでは…。


「…ん、…あれ?」

何か音が聞こえて目を覚ませば、自分は何故か本丸の庭に立っていた。
あれ?私はちゃんとお布団で寝たよね?と冷や汗をかきながら周りを見回せば、どうやらここは私が落ちたあの池のところだった。
あのまっ黒だった空もいつの間にか晴れて、綺麗な満月が見える。どうりで明るいわけだ…。…じゃなくて!
いや、どうやってここにきたんだよ。
夢遊病とかだったっけ?私…?
なんて考えていれば、

グス、…グス……

という泣き声が聞こえてきた。
「…え」
…わわわ、わかった!
これは夢なんだっ!そうだよ!
だってお布団で寝てたのにいきなり外に出てるって、どう考えても夢じゃん!そうだよ!うん!
と自分にそう言い聞かせる。

その間も泣き声は絶えず聞こえてきた。

そして気づいた。
その泣き声は目の前の池のところから聞こえてくることに。
そう認識した途端、私の足が勝手に動き池に近づいていく。

「え、ちょ…。なんでっ」

矢張り夢なのか?
そうなら早く覚めてと祈る。
段々泣き声が近づいてくる。

ポチャンッ

「冷たっ」
遂に私の足が池の中に入る。
冷たさを感じるということは、夢ではないのでは…?という恐怖が頭をよぎる。
足は勝手に進み、ある地点に来ると止まった。
そこは私が手のひらを怪我したところに近いところだ。

フワッ

「…へ?」

突然、どこからともなく白い小さな光が2つ出てきたかと思えば、それは私の前に来た。
私はあまりの怖さに思考をストップさせ、ただ固まった。

ピカッと効果音が付きそうなくらい光ったかと思えば、そこには男の子が2人。
も、もしかしなくても幽霊か何かだろうか。と思う反面、何故か私は妙に冷静だった。
現れた男の子2人のうち片方は黒髪で私よりも背の高い男の子。もう片方は彼とは反対に銀色の髪てで私よりも背の低い男の子だ。
黒髪の子はただ黙って私を見ていて、銀髪の子はただただ泣いていた。

まるで何かを訴えているようだが、どちらも言葉を発しないので分からない。

不意に黒髪の男の子が私の腕を掴んだ。
「…!」
いや、掴もうとしたがすり抜けた。
男の子は悲しそうに自分の腕を見つめたあと、下の方を指さした。
まるで何かがあるとでも言うように。

「?ここに何かあるの?」
そう聞けば彼は「うん」とでもいうように頷く。
水の中に手を入れて探ってみれば何かが手にあたる。
それを握って水の中から出した。

「…、これってもしかして刀?」
自分が持っているのは刀の持つところの部分だ。先が折れていてない。
それを庭の土の上に置いたあと、また同じように水の中を探っては置く。というような作業を繰り返す。
まるで何かに操られるように…。

しばらくして、ハッと意識を戻すと土の上には二振り分のバラバラになった刀の破片が置いてある。
自分で置いたはずなのに途中から記憶がなかった。
男の子たちの方を振り返れば、いつの間に泣き止んだのか銀髪の子も一緒になって私をただ見つめていた。

「もしかしてこの刀が、あなた達の本体だったりする?」
何となく、ただ何となくそう聞けば、2人は頷いた。
そしてニコリと笑った。
いや、可愛いよ。可愛いけどね!
全く状況が飲み込めてないの…。

つ、つまり、バラバラにされてこの池に捨てられていたのを、私が拾ったでいいのかな?
と崩壊寸前の頭の中で考える。
それで、これからどうしろと…。と思いながら彼らを見ていれば、彼らが光った。
そう光った。
待って、何故か私も光ってる。
えっ、えー?どういうこと…。

そう聞こうとした時、
「ありがとな、大将」
「ありがとうございます!」
という声が聞こえてきた。

そして、目も開けてられないほど光が強くなった。


◇◆◇



「ん、もう朝…。」

襖の間から射し込む陽の光が眩しくて目が覚める。
取り敢えず起き上がろうとするが、何故か起き上がれない。

「あれ…、体が重いな…」

そう呟きながら、目を擦って改めて状況を確認した。

「…ふぁっ!?」

変な声が出てしまったが、それも仕方ないと思う。
だって!だって目の前には綺麗な顔をした男の子の寝顔がある。
待て、どういうことだ…?と混乱しながら寝返りを打ち反対を見る。

「……」

そちらにも可愛らしい男の子が眠っていた。
取り敢えず叫んで良いですか?

ここは楽園かぁぁあ!じゃなくて、

「どういうことぉぉお!!」

あ、本当に叫んでしまった。


(こんな朝早くからうるさいですよ!)
(どうした?小僧!?)
珍しくない奇跡の中で
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