ピンク色の可愛い紙袋の中身をそっと覗き込む。下着のカラーに合わせてくれたのか柔らかい不織布が入っていて、この中に先ほど買った二着のベビードールが眠っている。買ってしまった……! と謎の興奮と少しの緊張に口をきゅっと結んでいると、隣に座っていた友人にばっちり見られていたようで、ふふっと笑われた。
なんだか恥ずかしくてやめてよ、と軽く友人の腕を叩いていると、ポケットの中のスマホが震えた気がして取り出す。ロックを外すと電車の中では明るすぎる画面をそっと暗くして、通知を確認すると魈さんの名前が表示されていて胸が弾んだ。
「なに? お、彼氏くん?」
「そう、……迎えきてくれるって……!」
優しい! と声を大にして言いたい気持ちを抑えて隣の友人にだけ聞こえる声量で言うと、フッと笑われて半目でこちらを見られた。なに、別に惚気てない。
魈さんは今日明日は休講なようで、午前中にウェンティに捕まっていた予定が終わったので迎えにきてくれるらしい。本当に優しい……。
今どこに居るかと聞かれて、もうすぐ魈さん家の最寄駅なことを伝えると「分かった」と短く返される。改札の外で待ってくれるみたいだ。
友人はこの後バイトに入っているらしいので、下着を見に行ったまま解散になる。お昼まだだけど、魈さんはもう食べたかなあ。一緒にどこかで食べたいけど、ウェンティと食べてるかも。あと一駅で最寄駅なこともあって連絡はそのままでスマホをロックする。自動ドアの上にある液晶に次の駅までの待ち時間が表示されているのを眺めていると、ラブラブですねえと友人に揶揄われたのでまた腕を軽めに叩いておいた。いたい〜っと態とらしく反応してくる。
電車のアナウンスが鳴って、もうすぐ最寄駅みたいだ。友人に今日はありがとう、とお礼を言うと「結果報告待ってま〜す」とニヤニヤされたので適当に流しておいた。自分も結構際どい下着を私のお会計中に選んでいたのに、棚にあげるなんてなしだと思う。足の間に私と同じパステルピンクの紙袋があるのによく言えるな……。
電車が止まって、自動ドアが開く前に立ち上がる。じゃあまたね、と手を振ると笑顔で振り返してくれた。
「魈さんっ! お待たせしました」
「それ程待っていない。何か持つ、貸せ」
「あ、いやこれは自分で……やっぱりお願いします」
自動改札を出ると柱に寄りかかっている魈さんがぱっと目についた。人のまばらな昼過ぎの駅を小走りして魈さんに駆け寄ると、組んでいた腕を解いて荷物を持ってくれるらしい手を出される。下着が入ったものを魈さんに持たせるのは……、と思って遠慮しようとしたが、可愛いパステルピンクの女の子全開な紙袋を魈さんが持っているところが見たくてやっぱりお願いした。文句一つ言わずにそれを持ってくれた魈さんをじっと眺めて、予想通りあまり似合わなくて笑みが溢れる。可愛い。
「昼は食ったのか」
「まだです! 魈さんはもう食べちゃいましたか?」
「いや……まだ入る」
まだ入る……ということはウェンティと軽めに食べたんだろうか。魈さんは意外とよく食べるけど、流石にお昼を二重に食べるのはすごいと思う。でもウェンティだったら昼から居酒屋に連れていかれてそうだし、そんなにがっつりは食べてないのかも。そう思うことにしよう。
この前はオムライスを食べたから、今日は違うのがいいな。
魈さんは何か食べたいものありますか? と歩幅を合わせてくれている魈さんに聞くと、いつも通り「なんでもいい」と返ってきた。
駅から魈さんの家までにあるラーメン屋さんを通り掛かって、美味しそうな匂いに足を止める。こってりしたもの食べたいな……魈さんには重いかな。メニューの写真をじいっと見て、つけ麺いいなあと思いながらちらりと魈さんを見ると「分かった」と頷かれて二人で手を繋いで店内に入った。お札を入れて食券のボタンを押して寄ってきた店員さんに小さな紙切れを渡す。魈さんはさっき軽く食べた風な口ぶりだったのに、大盛りを注文していて男の人の胃袋に関心した。カウンターに並んで通されて、付け合わせの調味料の蓋を開けて遊んでいると一番に来たのは魈さんが頼んでいたらしい餃子で、美味しそうだったので一つ貰った。
二人同時に出してくれたラーメンは魚介系のもので、久しぶりに食べたこともあってあっという間にお腹の中に消えていった。たまに食べるラーメンは本当に美味しい。私が食べ終わる前に完食した魈さんも満足気に水を飲んでいて、その姿がなんだか可愛くて自然と口角が上がった。