全力乙女


高校生は忙しい。
流行りの洋服にメイク、髪型を追いながら
話題のカフェやパンケーキ、お店だって常に最新情報を取り入れなければならない。
もちろん勉強や部活も同時進行だ。
そして何よりも重要なのは…。

「はぁ……。」

教室の窓から容赦無く燦々と降り注ぐ陽光に目を細めながらため息をつく。

「なーに黄昏てんのよ」

見計ったようなタイミングで背後から聞こえたよく知る声にドキッとする。

「じょ、仗助くんっ」

隣の席の仗助くんは見た目に反してとてもお茶目で、
私にも気さくに話しかけてくれるとても楽しい男の子。

「青春真っ盛りなこーこーせーがよォ。
 この楽しい夏の時期にため息なんてどうかしたんスか」

隣の自分の席に着くと頬杖をついてにまっと笑った。

「その夏の時期ならではの悩みでさ…。」

少し俯きボソリと答える。

「来週ね、海に行こうって誘われたんだけどね」
「ほぉー夏らしくていいっスね」

顎に手を当て同調してくれる仗助くん。

「ただ…着れるか心配なの、去年買った水着。」

そう。
私の高校生活で最も重要なのは体型維持だ。
運動神経があまり良くない私は文化部だ。
しかし原因はそこではない。

「ほら、私春から少し太ったでしょう」

「そッスか?」

首を傾げる仗助くんにほんの少し救われる。

「そうは見えねーけど…」

ジロジロと観察する仗助くんの視線が気恥ずかしく再び俯く。

「実はね、億泰くんとよくスイーツ食べに行くんだ。
 町外れの喫茶店とか、駅前のカフェとか」

「へぇ、億泰のヤローと………何ィイ!?」

一拍置いて盛大に驚く仗助くんにつられて自分も一驚する。

「薔薇子、お前いま何つった!?」

「え?だから、億泰くんとよくデザート食べに…?」

「薔薇子と、億泰が!?」

なおも驚きつづける仗助くんの先に見える教室の入り口にはちょうど話題の億泰くんが立っていた。

「お~~~~~い薔薇子!」

笑顔で手を振りながら近づいてくる億泰くんに、仗助くんはすかさず尋ねる。

「おい億泰!オメー薔薇子とよくお茶してるって本当かよ!」

胸ぐらを掴む勢いの仗助くんとは裏腹に、
億泰くんはなんだか楽しそうにニマニマと笑っている。

「ほほぉー。
 薔薇子とのデートが羨ましいのかよォ~~~~、仗助クン~~~~?」

「そ、そういうんじゃあねー!」

頬を赤め抗う仗助くんとここぞとばかりにおちょくる億泰くん。
二人のやりとりが微笑ましい。

「仗助くんも甘いもの好きなの?一緒に行く?」

我ながら良い案だと言わんばかりににっこり笑って提案するも、
予想とは反した二人の反応に少し不安を抱く。

「いや、その…別によォ~~~~~甘いものが好きって訳じゃあねぇけど…」

「そーそー!俺と違ってよォ。
 仗助のやつは甘いもん食わねーからな」

「あ、そうなんだ。残念」

「いや嫌いってわけでもねーんスけど」

慌てふためく可笑しな仗助くんは億泰くんをチラリと見たのち、「次はいつ行く予定なのか」と呟いた。

「なんだよ、やっぱり羨ましかったんじゃねーか!」

「オメーは黙ってろ!」

水着の心配などこれっぽっちも脳内から消え去っていた。
体型維持も大事だけど、大切な友達との楽しい時間が最優先であることを改めて感じ、
このささやかな幸せをゆっくり噛みしめた。


end.




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