外に出ると少し先の交差点で信号待ちをしているバスが見えた。
咄嗟にバスに乗ろうと思った私は、走れば間に合うであろう近くのバス停までダッシュした。
信号が青に変わり、近づいてくるバスを確認しつつ財布から小銭を取り出す。
音を立てて停まったバスに乗り込むと一人掛けの椅子がちょうど一つ空いていた
ラッキーなんて思いながら近づく途中、ふと視線を感じ目線を上げる。
「よォ。お散歩かい」
思わずしかめた顔に、向こうはわざとらしく反応する。
「何だその顔は。失礼じゃあないか」
嫌いとかではない。ただ私は何となくこの人が苦手だ。
「あ、いえ…その、」
「とにかく、座れよ。バスが発車できないだろう?」
「私、すぐに降りるので…」
「バス会社は客に座ってもらうためにこのイスをとり付けてんだぜ。
いいから座れよ」
「はっはい!」
圧倒されるような目力と迫力にそそくさと座る。
「君、用事でもあるのかい?」
(後ろから背中に話しかけてくるか…!?普通。)
視界に移っていなくても想像できる。
足でも組んでさも「どうせ暇人だろう」と言わんばかりの上から目線で質問してくる。
「え、まあ…図書館に行こうかと…」
視線を床に向けながら小声で答える。
「ふうん、図書館、ねぇ…」
「な、何でしょうか…?」
「どこの図書館に行くんだい?」
「え、役所の図書館ですけど…」
後ろから嘲笑うような声がかすかに聞こえた。
「よし、暇なんだろう。この僕に付き合えよ」
「…はっ!?」
ワンテンポ遅れて咄嗟に出た大声に周りの人たちはチラチラと此方を窺う。
「おい、声が大きいぞ」
「す、すみません、じゃあなくて!
な、なぜ私が…」
「茨の館という図書館がある。
最近、珍しい本が寄付されたらしい」
「珍しい本…?何ですかそれ」
「それを確かめに行くんじゃあないか
もちろん、君も来るだろう?」
無理やり同行させようとしておいて今更そんな質問、
無意味ですよ、と言ってやりたいのを我慢し、
珍しい本に興味を示すと嬉しそうにほほ笑む露伴。
それから数分乗り続け、
茨の館という名の図書館の最寄り停留所で降りる。
茨の絡まる素敵な外観の図書館へ2人で入り、
早速珍しい本を探す。
それは貸出禁止らしく、司書へ申し出る必要があるらしい
「どんな本なんでしょうかね…!」
胸を高まらせながら待ち受ける私に、
露伴はさらりと告げた。
「なんでも、時折本から声が聞こえてくるらしいぞ。」
何食わぬ顔で司書が入っていった部屋の扉を見つける露伴
「こ、…え?声ですか?本から?」
「ああ、人間のうめき声のようなものだと聞いた。」
急に背筋が凍る。
「う、嘘ですよ…ね…?」
「嘘をついて僕に何の得がある。
さて、この【エニグマ】と呼ばれる謎の本。
どういう条件が揃えば声が聞こえるのか?
その検証をする。」
ホラーがまるでダメな青ざめる私を余所に、興味深々に角度を変えながら本を探る露伴。
「君も興味あるだろ?
手伝えよ。」
新しいおもちゃを与えられた少年のようにキラリと輝く瞳を見つめながら、今日の外出は失敗だったなと感じた私だった。
end...
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