虹村 億泰

そういえば最近、糖分不足だ。
最後に摂取した糖分は一昨日食べた頂き物のどら焼きだ。
これは低血糖で倒れてしまう。
そうだ、これはカフェ・ドゥ・マゴでとびっきり甘くて
ボリューミーなパフェでも食べなければ。
そう思った私は杜王駅すぐ近くにあるカフェへ行くことにした。

土曜の10時。
お昼前であるからか人気は少なく、テラス席ががらりと空いていた。
いつもは店内奥に座るものの、せっかくなので外でパフェを楽しむことにした。
席に着くなりメニューとにらめっこをしているとふと視界に入る黒く潰れたカバン。
顔を上げるとそこにはまるで、知らない道を彷徨っていたら偶然知り合いにばったり出会ったときくらいの嬉しそうな顔をした虹村億泰だった。

「ど、どうしたの、億泰くん。」

友達と言う程ではないが席が近いこともあり
挨拶程度に会話を交わす仲である彼がしれっと私の向かいの椅子に座りだした。

「よォ〜〜〜!
 偶然!奇跡!まさに女神だぜェ〜〜!」

大げさな言葉を並べてキラキラ笑いながらメニューを手に取る。

「あの…?」

「いやぁ、実はよォ〜〜〜〜、
食べてみたかったんだよなァ、ここのチョコレートパフェ!」

今日の私の目的であるパフェを指しながら言う。

「でもよぉ、不良であるこの俺が一人でパフェなんて
 食っていたらカッコワリィだろ!」

だから薔薇子が居てくれて助かった!
と大げさに感謝される。
たしかに、格好悪くはないがこんな不良がテラス席でパフェなんて食べていたらちょっとシュール。

「私もパフェ食べようと思って来たんだ。」

近くにいた店員さんにチョコレートパフェを2つ頼むと少し困った顔をする店員さん。

「実は、食材の都合でただいま、此方のパフェが
 お一つしかご用意できない状態でして…。」

「何ィイ!」

「も、申し訳ございません!」

凄む億泰君をなだめながらなんとか考える。

「私、違うの頼むから億泰君、食べなよ!」

他のデザートを頼もうと急いでメニューを手に取ったとき、億泰君が「いいこと思いついた!」と声を上げる

「ひとつのパフェをよぉ〜〜〜、
 ふたりで半分こすればいいんだぜ!」

俺ってあったまいい〜〜とご機嫌にパフェを頼む億泰君。
中々に大胆な提案に少し頬が熱くなる。

「え、い、良いの?」

「薔薇子も食べたくて来たんだろ?
 半分に分ければ2人とも食べられるぜ!」

得意げに話す彼はきっと親切心というか、
ただ合理的な考えをしただけで合って他意はないのだろう、と分かってはいながらも少し気恥ずかしさを感じながら運ばれてくるパフェを心躍らせながら2人で待った。


end...

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