10.てんめいをつくして
僕と名前はここに残るとみんなに別れを告げ、崖の上から天馬たちを乗せた船を見送った
「天馬、君とサッカーできて楽しかった、ありがとう」
僕が誰かに許されたかったのだとすればそれはきっと妹や名前などではなく、僕自身に許して欲しかったのだろう
名前はただ僕の隣でゆっくりと頷いて小さくなっていく船を見ている
「名前、」
こちらを向いた彼女の頬に触れれば死んだ人間と思えない温もりがあった、こうして人と喋ることも出来れば触れることも出来る
まるで生きているような感覚に、たまに自分が生きていないことを忘れてしまいそうになる
けれどそれももうこれでおしまい、僕の未練はもう殆どなくなっており心は十分に満たされている
強いて言えば名前に想いを伝えられないのが心残りかもしれないがそれは僕の中に仕舞っておこう
もしも生まれ変われたならばそのときはこの想いを君に伝えようと心に決めて、僕はこの島から消える
「名前、ありがとう」
「うん」
最期に見た名前は今まで見たことないくらいの笑顔で、とても綺麗だった
私の頬から温もりがなくなりシュウが消えたことを実感した、それまで我慢していた涙が途端に溢れてくる
私は彼が好きだったのかもしれない、村で一人ぼっちだった私に唯一声をかけてくれた彼が、いつしか好きになっていたのかもしれない、しかし今となってはその答えは出てこないけれど
また私はこの島で一人ぼっちとなってしまった、島を見回すようゆっくりと歩いてかつて村があった場所に行けばあの守り神が眼に入る
この島に再び現れてから良い印象が無かったこの石像も、これからは誰も見てくれる人はいなくなるのだと思うとどこか嫌いになれなかった
彼を無事妹の元へ行かせてあげてくださいと腕につけていたミサンガを石像の腕に結びつける
きっと私の未練はシュウだったのだろう、彼が無事に妹の元へといける確信を持てたと同時に心が軽くなった
図々しいけれど、もし願いが叶うのならばどうか私の魂を彼の元へ運んでください
深海少女は今飛び立つの
彼女のミサンガを身に付けた石像に一匹のヤギが寄り添う、ゆっくりと落ち着いた動作でそのまま丸まり眠りについた
end
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