あくまでも幼馴染です


「ていうか何で悠仁は宿儺の指食べれたの?普通に考えて、宿儺とか関係なしに、人間の指食べるってヤバくない?カニバリズムじゃない?宿儺以外の指も食べれるの?」
「泉どうしたの、そんな矢継ぎ早に質問攻めなんかして」
「…いや、なんか怒ってるみたいでさ」
「何でだ?」

 泉がこんな風に答える暇を与えずに質問をしてくる時は、大体怒っているときだった。伏黒に尋ねられ、俺は思い当たる節を考えてみたが、全くもって見当がつかなかった。

「泉、虎杖になんか嫌なこと言われたの?」
「違う」
「じゃあどうしたの?」
「ああ、分かった!俺が急にこっち来たから嬉しいんだろ!?」
「お前怒るって言葉の意味分かってるか?」

 矢継ぎ早の質問が終わると、次は無視を決め込んでくる。これも相変わらずだった。フンとそっぽを向いたままの泉にとりあえず「悪かったって」と謝るも「理由も分かってないのに適当に謝罪をするな」と真っ当なことを言われてしまった。

「あ、あれか?急に俺が宿儺を取り込んじまって、悲しんでる…」
《小僧は本当に馬鹿だな。小娘が怒っているのは、貴様が小娘の部屋から勝手に好物を持ち出した挙句、食べたからだろう》
「はっ…宿儺!?」

 突如手の甲で気味の悪い口が蠢いた。驚きはしたが、確かに俺は泉の部屋に行った際、チョコレートを貰っていった気がする。

「…食べたの?あの高級生チョコレートを」
「いやちょっと待て、俺ちゃんと確認したよな?」
「してない!」
《ああ、してないぞ小僧。お前は小娘が着替えている最中に、持ち出したじゃないか》
「ちょっと宿儺いい加減なこと言うなって」
「いい加減じゃない、宿儺が正しいんでしょ?」

 宿儺が余計なこと言うからどんどん事態が悪い方に向かっている気がする。泉は怒ってるし、宿儺は煩いし、どうしたものかと考えていると、バンッと机が強く叩かれた。驚いて泉と二人でそちらを見ると釘崎が、目を丸々と開いてこちらを見ていた。

「アンタらさ、どういう関係なの?」
「はぁ?何だよ急に」
「部屋に入っただの、着替えてる最中だの…。これ完全にクロでしょ?」
「まさか呪いを学ぶ場所に来てまで、変なことしてるわけじゃないよな?」
「二人ともちょっと何を言ってんの?」

 妙に噛み合わない会話に俺も泉も状況が読み込めなくなった。その時には、いつの間にか話の論点がすり替わっていた。

「変なことなんかないよ。幼馴染なんだから部屋にも普通に入るよ、ね?悠仁?」
「うん。昔からそうだったしな。何なら小学校の頃風呂も一緒に済ませてたよな」
「そうだねぇ、懐かしいね」
「「《はぁ?》」」

 怪訝な声が揃う。そこに宿儺の声が入っていたことに驚きだ。コイツなんか普通に俺たちとの会話楽しんでないか。

「小学校っていつ?何年生まで?」
「俺、物心ついてから姉貴と風呂に入ったことなんかねえぞ?」
「いやアンタのそういう情報はいらん」
《小僧お前モノはついているのか?》
「ついてるよ!何だよ、お前らみんなして!」
「いやアンタたちの距離感バグってるから焦ってんだよ」
「ていうか宿儺普通に会話に参加してるのウケるね、おもしろい」
「佐狐お前めちゃくちゃ他人事だな」


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 高級生チョコは後日五条先生が買ってきてくれました。