「意外。子ども苦手なの?」
「ううん、好きだよ」
「まあ、そうよね。じゃなきゃ星に付き合えないもの」
黙り込んでシオンを観察するカルアは何かを警戒しているように見えた。それに気付いた月はひっそりとカルアに声をかける。はっと我に返ったカルアはゆるりと首を横に振る。けど、そうでないならばカルアの性格上警戒するように観察するのではなく会話に参加するような気がするのだけどと心配になる。月の不安が表情から伝わってきたのか、カルアは苦笑して「気にしないで」と。両手を小さく振って宥める。
星との会話を弾ませていたシオンは2人のやりとりにも耳を傾けていた。そして「おねーちゃんは?」と。突然カルアに声をかける。
「おねーちゃんはどこから来たの?」
「私はイッシュ地方からだよ」
「シオンちゃん、そこ知ってるよ! おいしーアイスがあるんだよね?」
「ヒウンアイスのことかな? よく知ってるね」
「うん。このあいだテレビでみたのー」
それまで関心を一切向けられなかっただけに、まさか声をかけられると思っていなかったカルアは身構える。実際に交わす言葉は些細なものだが、探られているような感覚がして腹の底がぞわぞわする。きっと勘違いだと自分に言い聞かせ、シオンの目を見て質問に答える。そこでふと気付く。
「デカ目効果でもない黒色のカラコンなんて珍しいね」
「え?」
「あ、いや……JK的にはカラコンと言えばデカ目で盛るって感じだからつい」
「ふうん。……おねーちゃん、すごいね! そんな違いに気付くなんて、人のことよく見てる!」
「癖的な?アイメイクって個性が1番でるところだって思ってるから」
にこにこと絶えず浮かべられていた笑顔が消える。地雷を踏んだ気がするとカルアは慌てて話題を変えようとするが、シオンは「種族隠しに髪色や瞳の色を変えるというのはよく使われているんだよ。特にこのセイショウ地方ではね」と。話を続ける。なぜ種族を隠す必要があるのかと聞こうとしたが、まもなくロムシティの駅に到着するという放送によって遮られる。
放送につられるように天井を見上げていたカルアはちらりとシオンの方に視線を戻す。ぱちりと目が合うと、シオンはこにことした笑顔を再び浮かべる。そして息を吐き出すように小さな唇を動かす。声を出さずに告げられた言葉をなんとなく理解したカルアはほんの少し顔を強張らせ、立ち上がる。
「星、月。もうすぐ着くから降りる準備するよ」
「えーっ! おねーちゃんたちもう行っちゃうの?」
「えーっ、もっとシオンちゃんとお喋りしたい!」
「………乗り足りない」
「皆して我儘言わなーい。ほら、2人ともシオンちゃんにばいばいして」
唇を尖らせて不満気の表情を浮かべる3人だが、カルアは一蹴する。星と月の手を掴み、1秒でも早くこの場から去りたいとでも言うように急かす。何をそんなに慌てているのだろうと2人は首を傾げながらカルアに引っ張られる。月は揺れる車体に足元をとられないように必死になるが、星は気にせず振り返り「シオンちゃんばいばーい」と。空いている手を大きく振る。案の定駅に停まるためにかかったブレーキで転びかけていた。