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VIXXの宿舎の感想は、"デビューする前から初期までの僕たちの宿舎より広い"だ。
だけどベッドじゃなくて敷き布団なのは…僕なら絶対に嫌だな。
それなら、狭い空間であってもドンウンと一緒に寝てる方がまだマシだよ。
「…寝室はあまり、見るな。」
「ん?ああ、恥ずかしいの?どうせあの汚く置かれた布団も、テグンのだろ?」
「………片付ける。」
寝室の扉が開いていたから眺めていると、後ろに巨人(テグン)が立って僕の目を塞いだ。
一応メイクしてるから、やめてもらいたい。
嫌がる素振りをするよりは、この男はからかった方が面白いだろう。
からかってやると、テグンは案の定僕の目から手を離し、汚く放置されていた布団を片付けに寝室の中へと入って行った。
やっぱりあの布団、テグンのか。
布団を片付けている間に、リビングでブラックコーヒーを飲ませてもらう。
ブラックコーヒーはあまり飲まないが、変に甘ったるいジュースを出されるよりもマシだ。
「…なまえ、紹介する。」
コーヒーを飲んでいると、片付けが終わったらしいテグンがメンバーを引き連れて来た。
どうやらVIXXのメンバー紹介をしてくれるらしいけど、会う機会なんてあるんだか。
まあ、訊いていても損はない。
エンから順番に、ケン、ホンビン、ラヴィ、ヒョクと紹介される。
名前が覚えられるかは置いといて、なんとなく全員の顔は解ったような気がした。
特別広くはない(けど僕たちの初期や2代目よりはまだ広いと思う)宿舎だから、VIXXの子たちもこのリビングに居座る。
居座る、という言い方もおかしいが、他の言い表しようが思い浮かばなかった。
「それにしても、どこもまあまあ片付いているんだね。僕たちには昔、突散らかす奴が居てベッドの周りが散乱してたこともあったよ。」
「突散らかす奴…。」
「番組でメイドが来たときは大変だったね。」
「あ、僕それ、観てました。僕、デビューからミンスさんのファンだったんで…。」
「へぇ。ありがとう。」
せっかくだし番組だしで、BEASTの昔の思い出話を少し話すことにした。
2代目宿舎のときのメイドは大変だったと言うと反応した彼は…確かケン。
ケンは僕のファンだと言って、照れくさそうな表情を浮かべていた。
自分のファンだと言われて、悪い気はしない。
しかもデビューからとなれば、あのまったく目立たない、存在感のないデビュー曲も見ていてくれたということになる。
心の底から"ありがとう"と言えば、ケンは照れくさそうに鼻頭を掻いていた。
「あの頃はマネージャーと毎日のように言い合いもしていたね。マネージャーが、なんで女が居るのに部屋が汚いんだ、って言うから。」
「マネージャーと…すごいですね…。」
「別にすごいことじゃないよ。僕は自分のもの以外を片付けてやれるほどお人好しじゃないから、僕だけが片付けても散らかっているところは…、まあ、散らかっていたね。」
テレビが来るから、と言うことである程度片付けて放送してもらっていたけど。
それでも、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
リアリティー番組と言っても、流石に普段通りの汚いままの部屋を放送はしたくないからね。
いつも放置されたように置かれてあった服はジュンヒョンのものが多くて、よく今になってファッションリーダーだなんだと周りに言えるようになったな、と思う。
今の自宅は物がなさ過ぎて片付いているけど、前に掃除機をかけているときにかけるべき場所ではないところをかけていたから…やはり掃除オンチはそのままなんだと思ったけど。
それからもVIXXのメンバーと話をしていく。
僕はあまり話す方じゃないから、基本的にはどうしても受け答えが多くなる。
その反対に、エンはよくしゃべる、と思った。
「僕、ミンスさんのMystery時代とBreath時代の髪型が好きなんです!」
「FICTIONの演技もすごかったですよね!」
「あー…FICTION…。懐かしいね。」
ヒョクの発言からミュージックビデオの話しになり、FICTIONの話題が出た。
あれは僕の中の黒歴史だから、あまり掘り起こさないでほしいんだが…。
無知とは恐ろしいものなんだな、と思う。
チラリとテグンに目を向けると、テグンは僕を見ていたのか視線が重なった。
すると気まずかったのかなんなのか、すぐに視線を逸らされてなんとなくムッとする。
別に、逸らさなくても良いと思うんだけどな。
「なまえ、もう行こう。」
「は?どこに?」
「…良いから、行こう。」
未だにFICTIONの僕の演技について熱く語っている、VIXXのメンバー。
あまり話して欲しくない話題だからこそ話しに入っていなかったのだが、そのときにテグンからどこかへ行こうと言われる。
突然「行こう」とだけ言われても困るものがあるのだが…、テグンはいったい、どこへ行くと言っているんだか。
意味が解らなかったが、不幸中の幸い、あまり話したくはなかったので正直助かった。
えーまだ話しましょうよー、なんて人懐っこく言うエンをテグンが強制的に丸め込み、僕たちはVIXXの宿舎を出て外に出る。
引っ張られるように繋がれた手は、未だに繋がっていて…ふと前回のことを思い出した。
あのときはあまりにも急過ぎるテグンの変化に驚きはしたが、今はなんとも思わない。
思わないと言えば失礼かもしれないのだけど、前よりも驚くことはなかった。
「どうしたの、テグン。」
「…あんまり、話したくない話題だったのかと思ったから。抜け出した。」
「…ふぅん。僕のこと、よく見てるね。」
取り敢えずテグンのこの奇行の意図が解らなかったので訊いてみたら、予想外の返答が来た。
テグンには全部解っていたらしい。
僕があまり、話したくない話題だったのだと。
そんな些細な気遣いで、なんとなくテグンの印象が変わっていった気がした。
無口で無愛想でアイドルらしくない奴かと思っていたけど、気遣いは出来るらしい。
前回からなんとなくはそう思っていたけど。
急に抜けたものだから行きたい場所も解らず、結果行くところが決まらずに適当に映画でも観に行くことにした。
僕、ホラー映画観たいんだけどやってるかな。
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