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今日はなまえとは別行動らしい。
スタッフから俺に手渡されたミッションカードには、そう書かれていた。

まあ、それもそうか。
俺のカードに書かれていたのは"サプライズで結婚指輪を買いに行きましょう"というもの。
サプライズと書いているのだから、なまえが居ないことにも納得出来る。



「…これは?………なるほど。」



だけど俺がなまえの指のサイズなんてもの知ってるはずもなく、途方に暮れているとスタッフから助け船が出された。

手渡された細くて小さな指輪。
どうやらこれは、なまえの右手の薬指によく着いていた指輪らしい。
BEAST先輩に頼んで、この指輪をこっそり拝借してもらったようだ。

そう言えばなまえは、指に何個もの指輪をジャラジャラと着けていたな。
俺はあまりそういうものを好まないから気にしていないが、なまえは恐らく…アクセサリー自体が好きなんだろう。
そうなるとセンスでのプレッシャーがかかる。

指輪は俺のセンスで選ぶ。
それは店も然りなので、周りを見渡しながら店から吟味を始めた。



「…違う。…違う。……なまえぽくない…。」



とは言え、あまりにも多過ぎる店数とディスプレーに置かれている指輪がなまえっぽくなかったりと、まったく進まない。
もう少し楽に考えても大丈夫ですよ、とスタッフに言われてしまうくらい、考え込んでいた。

きっと、他の女が相手であれば…今よりももう少し気楽に、簡単に選んでいたと思う。
だけどなまえは俺が昔から尊敬していた先輩でもあるし、このウギョルを通して…また別の存在にもなり掛けている気がしたから。
だから、適当に簡単に選びたくなかった。

この感情が何か、なんて解っている。
自分にも人にも厳しくまっすぐで、人をからかうわりに自分が攻められると弱く、当たり前に弱点もあるなまえに惹かれているのは事実だ。

けれどなまえには、影がある。
俺が踏み込むことの出来ない、深い影。



「…エン?」



あまりにも進まないため、スタッフの提案で携帯を使って調べることにした。
ひとつの喫茶店に入り、コーヒーを飲みながら調べていると聞き慣れた声が。

チラリと視線を向けると、そこにはメンバーのハギョンの姿があって。
他にはサンヒョクとウォンシクの姿もあった。
こんなところで何をしているんだ?

騒がしいあいつらが居るとなると、ここは関わらない方が安全だろう。
だから気付かれないように反対側を向いたが、それでもハギョンにはバレバレだったらしい。



「テグナ!おー!僕の可愛いテグニやー!」



誰がお前のだよ、という言葉は口にはせず、溜息だけで拒否を表す。
どうせ溜息を零そうが言葉にしようが、ハギョンは御構い無しに来るだろう。
現に俺の方に来てベタベタとくっ付いてきた。

鬱陶しいので肘で無理矢理退かせると、ハギョンは泣き真似をする。
それが癇に障ったので蹴り飛ばしでもやってやろうかと思ったが、それはウォンシクとサンヒョクによって止められた。



「あ、もしかして収録中ですか?」

「…ん。」

「まあそうですよね。カメラもありますし。」



テグニー!、なんて言っているハギョンは無視することにして、ウォンシクの質問に答える。
カメラが俺を囲っていると言っても過言ではないのに、収録以外の何に見えると言うんだか。

手振りで、収録中だからあっち行け、と表現するものの、このふたりも聞き入れない。
こいつら最初は俺と少し距離を取っていたくせに…今じゃそんなの御構い無しになっている。

例え仮に此処に居るのがウォンシクやサンヒョクでなく、ジェファンやホンビンであっても俺のサインを見て去って行くことはないだろう。



「ヒョンは何してるんですか?ミンス先輩は?居ないんですか?」

「…今回は別。俺は、なまえに渡す指輪を買いに来たから。だから居ない。」

「指輪!わあ!良いですねー!」



質問して来たので返してやると、ひとりでぎゃあぎゃあ騒いでいるサンヒョク。
その姿はまるで猿山の猿だ。

あいつらと話しつつ、検索する手は止めない。
この付近で調べてはいるが…あまり、良いと思えるお店が見付からなかった。



「レオヒョン。」

「ん。」

「俺がよく行くお店、ミンス先輩もよく行ってるらしいですよ。行ってみます?」



どうするか、と思っていたとき、ヒョン、とウォンシクに話し掛けられる。
どうやらウォンシクは、なまえがよく行くお店に行っているらしい。

一応は結婚指輪なんだ。
なまえが普段着けているような指輪はちょっとごめんだが、まあ、参考程度なら。

ウォンシクにその店の場所をメッセージで送ってもらい、そこへと移動する。
僕たちもついて行きたい!、なんて騒ぐハギョンはもちろん無視した。



「…パンク?ロック?」



なまえが行っている、という店に到着してまず驚いたのが、店がダークだということ。
ウォンシク、こんなところに来てたのか。

BEAST先輩のイメージからは懸け離れた雰囲気を醸し出すこの店に入る勇気が出ない。
だけどなんとか覚悟を決めて店の中に入った。

髑髏や蛇や死神が描かれているアクセサリーが多く飾られている。
こんなダークなものを結婚指輪には…と思っていたとき、シンプルな指輪が視界に入った。



「……これなら。」



飾られているペアリングの中でも、ひときわ目立つシンプルな指輪。
周りが派手なデザインが多い中で、これだけは嫌味なくデザインされていた。

その指輪を手に取り、会計を済ませる。
ちょっと高くて驚きはしたが、まあ普段から買い物はあまりしないし、気にはならない。

なまえは、喜んでくれるだろうか。



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