平穏に潜む危険
「ここからは力があるものしか通れない」
22番道路から迂回しようと思っていたら、なぜか警備兵の人が通行人を追い出した。解せない。
何をするわけでもなく追い出された僕は行き場のない手を彷徨わせながら草むらに足を踏み入れた。これは一度、状況を整理したほうがいいかも知れない。
まず、僕を含めた五人はミアレの研究所にいるというプラターヌ博士にあわなければならない。そして博士に会わなければならないならば、4番道路を通ってミアレに入るという道が一番早い。
けれどその4番道路に入るところでパンジーさんが立っていて、パンジーさんを通過するにはジムに挑戦する必要がある。
僕はジムに挑戦したくない。どちらかといえば僕はほかの地方にあるというコンテストに参加したいと思っているのだから当然だ。旅をするのに最低限の力さえあればいい。
で、一応22番道路からもほかの街には行けるので、そこを通過しようとしたら冒頭のセリフを言われたと。なるほど、わけがわからない。
「これ、誰かの陰謀とかじゃないよね」
「ぶいっ!」
思わずつぶやいてしまった言葉にコウが元気よく返事を返した。うん、今の荒んだ傷だらけの心に塩を塗りたくられた気分だ。
歩くリズムに合わせて揺れることで眠くなったのだろうか、肩に乗っていたセイがずり落ちそうになって慌てて抱き抱える。コウは右肩から頭に登った。
よく考えてみれば、この状況を他の人たちが見ていたらどう思うのか。普段はちゃんと地面を歩かせているので土まみれの足のままで肩に登ってきているのだけれど。
嫌な予感がしつつ右肩を見ると、そこには少量といえども土が残っていた。軽く払って決心する、今度からはブラッシングをしてから乗せよう。
「これは、ジムに挑戦するしかないか…」
やりたくないがしょうがない。パンジーさんが話を聞いてくれるとは思わないし、さっさとジムバッチを手に入れてしまったほうが早そうだ。
そうと決まればポケモンの捕獲をしなければ。
パンジーさんが言うには、ハクダンは虫ポケモンを好んで使うトレーナーが多いらしい。草タイプのリマと電気タイプのピナ、それに炎タイプのセイとノーマルタイプのコウじゃあバランスが悪い。
虫タイプといえども二つタイプを持っていればどうなるかわからない。
例えばセイだけで行ったとして、相手のポケモンが虫と水の両方を持っていたら、中和されてあまり炎の効果がでないのだ。
出来ることなら岩、もしくは飛行が欲しい。特に飛行タイプはこれから空を飛ぶを覚えさせることもできる優れポケモンだ。よし、捕まえに行こう。
「ついでだし、ここのポケモンもどんな感じか見ていこうか」
まず浮かんだのは飛行タイプのヤヤコマだった。進化すると炎と飛行の2タイプ、うん、いいな。それにビジュアルがかっこいい。他の飛行タイプには悪いけど、今のところ一番欲しい。
22番道路にはヤヤコマは出ない。逆走して、森の付近まで戻らなければ出てこないだろう。
けれど折角通ってるんだから一匹くらいはポケモンを捕まえたい。炎タイプはいるけれど、一応シシコも捕まえてみようか。
草むらをがさがさと揺らし、逃げ回るポケモンたちの中から好みに合いそうなものを探す。流石に大きな段差の向こうに逃げられれば追っていけないけれど、ドンピシャなタイプがいたら絶対に捕まえることにしよう。
シシコを探してしばらくして、僕たちは22番道路からハクダンシティに戻ってきた。
22番道路にはシシコやルリリが大量に出た。その分色んな特徴が出てくるが、どれも僕が捕まえたいと思うポケモンはいなかった。
探しているうちに暗くなってきたので、ポケモンセンターで宿を取って休むことにする。あまり寝ていない状態で無茶をするのはよくない。
幸いにも、それほど大きなダメージも受けてないし、昨日や一昨日に仲間になったポケモンたちと交流を図るいい機会にもなるんじゃないかと思ったのは隅に置いておく。
「出ておいで」
ボールの開閉ボタンを押すと、リマは元気よく出てきたけれど、ピナは疲れた様子を隠しもせずに顔を歪ませつつそっぽを向いていた。
こっちを向かせようと思って手を伸ばしても、ハートのような形をしている尻尾に手を叩かれた。どうやら昨日の今日で連戦したことに憤慨しているようだ。
何を隠そう、今回のポケモンを捕獲するに至って、主に戦わせていたのはピナである。
色んなポケモンが出てくるとは言え、出てくるのは炎かノーマル、あるいは飛行の三タイプくらい。リオルは今回一度も出てこなかった。
そしてリマは草タイプ。炎タイプと飛行タイプに弱いので、今回の連戦はほとんど不参加にしてしまった。セイとコウはいわずもがな、戦おうという意志すら見せてくれなかった。
つまり消去法で残ったのがピナ。乗り気ではないとはいえ、戦ってくれた彼女には感謝しかできない。
「ごめんね、ピナ…」
「ぴぃか」
「ほら、明日は3番道路のヤヤコマを捕まえに行くし」
「ぴか」
「また力を貸してくれると嬉しいな…とか」
そっぽを向かれた。
ブラッシングをしながら頼んでみてもダメか。仕方ない、セイとコウに頑張ってもらうしかないな。
傷薬で手当も済んで、ブラッシングによって毛並みも少しは良くなってきたとき、ピナは僕に体重をあずけてきた。おお、生きた湯たんぽ。
ピナの頭を撫でつつ暖をとっていると残りの3匹も胸の中に飛び込んできた。
ブラッシングも済んでないし、このままだと布団が汚れるな。
そう思いつつ、まあいいかと4匹の体温を確かめながらベッドに寝転んだ。