ミッション開始・vsケロマツ
早速手に入れたケロマツをボールから出して僕と対峙する。得意げに笑って勝ちに来ているらしい。
「ケロっち!あたしたちのデビュー戦、勝ってみせよっ!」
わかっているのかいないのか、ハリマロンに対してケロマツというのは相性が悪い。ポケモンの全てはタイプと言い切れるわけじゃないけど、いくらなんでも無謀すぎる。どれくらい無謀かってきかれると、特性で浮遊を持つポケモンになんの対策もせずに地面タイプの技を当てようとするくらい。
かといってわざわざセイやコウを出してしまっても圧勝するのは目に見えている。
…しょうがない措置、というか。
「リマ、GO」
元気よく飛び出してきたリマ。デビュー戦というのなら、このリマだってデビュー戦だ。ならこっちが勝って華々しく飾ったって何ら問題はない。
というわけで、タイプ相性重視。
「ケロっち、先手必勝!あわ攻撃!」
「ジャンプしてつるのムチ!泡を割るんだ!」
ケロマツから出されるシャボン玉のような泡をジャンプで避け、つるのムチで一掃する。当たるとダメージがあるから、一応対処はしておかないと。
そのままつるのムチでケロマツを狙う。
「左右に逃げてよけて!」
「リマ、ケロマツを捕まえろ!」
ケロマツが右に逃げる。緑のつるが一本それを追い掛け、どんどん壁際に追い詰めていく。
とうとう逃げ場がなくなり、ケロマツは仕方なくつると相対した。その顔には少しの焦りと、疑惑。トレーナーがこれを乗り切れる策を考えてくれているのかという疑いと、自分で動いていいのかという躊躇い。
「チェックメイトだね。リマ、そのまま攻撃!」
「!ケロっち、あわ!つるのムチを弾い…」
て、と紡ぐ前に、リマの攻撃がヒットした。
前にあるつるを弾こうとしたときに後ろから回らせたつるで前方に押し出す。大したダメージは受けてないだろうけど、バランスを崩すには十分だ。
バランスを崩す直前、つるがケロマツの頬に当たった。ビンタのようなものだ。そこですかさず反対からもつるを伸ばし、無傷の頬を叩く。ぺぺぺぺ…とただ叩く音だけが周りに響いた。
もともと青いケロマツがさらに青くなってきたことを確認して、リマに合図を送る。つるで支えられたケロマツが目を回していた。
「はい、僕の勝ち。もう少し先を見据えた支持じゃないと、後半に苦しくなるよ」
「うう…はーい」
「でも、初めてにしては筋がいいと思うよ。ケロマツとリマはよく頑張ったね、お疲れ様」
「りーまっ!」
「コトって強いんだね、勝てるかもって思ったのに」
経験の差、ってところだけど。僕くらいのトレーナーはどこにでもいる。
ケロマツの頬に治療を施す。少し遅くなっちゃったけど、早く母さんのコーンスープが食べたい。それと、我が家に新しいポケモンが増えたこともちゃんと伝えておかなきゃいけないし…
僕がポケモンをもらえた理由はわからないけど、たとえもらったとしても旅に出る意思はほとんどない。自分の手が届く範囲が見れたらそれでいい。
だいたい、旅に出て手持ちのポケモンが死んでしまったらどうするのか。言っておくけど、僕はそんなところは見たくない。どうせなら老衰でいなくなってしまったほうがまだましだ。
「じゃあまたね、サナちゃん、セレナちゃん」
「ちょっと待って」
「?」
思っていることをおくびにも出さず、今度こそと足をアサメに向けた。ら、今度はセレナちゃんに呼び止められた。いい加減コーンスープの元に帰らせてくれないかな。
「その呼び方についてなんだけど」
「え、ダメかな?」
どうやら僕の彼女に対する呼び方が気に食わないらしい。怒っているとは言い難い、しかし憮然とした態度を崩さないままだった。
ちゃん付けはどうやら彼女的にはアウトだったということか。
「私たちもコトって呼んでるんだから、呼び捨てにしてもらっていいのよ?」
「あっ!あたしもね!」
「…『ちゃん付けは好きじゃない』って言うならやめておくけど、呼び方なんてその時によって変えるものだと思うよ。これから距離が縮まっていったなら呼び捨てにもしていくだろうけど、ね」
確証のないことはしない。ポケモントレーナーになってから死んでしまった人なんてこの世にはゴマンといるのだ。
ごめん、と刺々しい発言をした謝罪をし、僕はやっとアサメタウンへと歩き出すことができた。セレナちゃんとサナちゃんは少し不満そうにしていたのが印象的だった。