好きなものは、何ですか?@

おばばさまの指導に耐え抜いた経験から、腕には自信があった。
だけど、やっぱり言葉は欲しいしもっともっと喜んでほしいから……

***

「と、突然呼び出してごめんね…!」

「いや、暇だったしこっちに用事あったからいいけどさ。……とりあえずまた前髪どうしたのか聞いていいのか?」

会うたびに質問するのが恒例行事となりつつあるシズク君の言葉にえへへと笑いかえしながら私は答える。

「ええっと、その、寝ぼけてるエアームドさんの近くを通ったら羽根でスパァンっと……?」

「エアームドの羽根って…おま、危なっ!」

「うん、グリーンさんにも怒られた…」

「そういや、グリーンさんは?」

「あっ、今日からリーダーズ会議なの!2,3日は帰ってこれないんじゃないかなぁ」

「…………へぇ」

「シズク君?」

「あ、いや、それで?なんで俺は呼び出されたわけ?」

「え、ええっとですね……そ、その、あー…」

「なに?」

「シズク君の、好きな食べ物って何かな!?」

「俺の好きな食べ物?」

シズク君に向かってぶんぶんと音がなるほど頭を縦に降る。
ひとまずリビングへと案内すると、すかさずシズク君は対面キッチン越しに用意された食材の数々を見て絶句する。

「……これ、全部使うのか?」

「えっ、あ、いや、シズク君が何好きかわからないから…色々揃えておいたの」

「すげーけど、サチコいきなりどうしたんだ?」

「えと、ひ、日ごろの感謝を込めて作りたいな…なんて…?」

「ふーん…?」

「シズク君…何が好き?」

「いきなり言われてもなぁ…じゃあ、カレー。甘めのやつ。」

「!!カレーね、わかった!」

じゃあ、作るから待っててねとシズク君をソファに座らせて目の前に紅茶を用意する。

カレー、カレーか…
雑誌でも男の人が好む料理一覧にあったし…うん、やっぱりシズク君に聞いてみてよかったかも!

そんなことを考えながら私はキッチンでさっそく準備を始めた。

***

「はいっ、シズク君!お待たせしましたー。」

「おー、ありがとう。」

「チキンカレーに、してみました!どうかな?」

「まだスプーンすら持ってないから…感想急かすなって。」

「ご、ごめん…」

ドキドキしながら、シズク君がカレーを口に運ぶのを見守る。

「…な、見られてると食べづらい。」

「あっ、ご、ごめんね…つい…」

「そんな不安がらなくてもさサチコは料理得意だって自分で言ってるじゃん。」

「うん、得意なんだけど…えっと、得意なだけじゃダメっていうかなんていうか……」

「ふーん?よくわかんないけど、カレー美味いよ。俺好みの辛さだし。流石だな、サチコ。」

「!!」

シズク君の言葉はいつでも正直。
だからこそ、信じられる。

よかった、本当によかった。

「シズク君、ありがとう!」

「ん?どういたしまして…?」

スプーンを咥えながら、首を傾げるシズク君に私はもう1度お礼を言って、笑った。
何が何だかわからないって表情をシズク君はしているけど、いいの。


シズク君のおかげで、グリーンさんに作るもの決められたから……!!