夢の中の運命

数時間後。

あんな受けたことのないような衝撃を受けた俺をおいて、時はどんどんと進んでいった。

「俺だけなんか、置いてかれてる気分じゃねえかよ…」

俺にも何がどうなったかなんて、わかったもんじゃなかった。
ただ、あの少女…ホウカさんに会った時に、ホウカさんが笑った時に、自分が雷に強く撃たれたような、そんな気分がした。

「ミハルさーん、大丈夫?生きてる?」
「シズクくんか、おつかれ。今日も配達?」
「ああ、うん。会場内にね。」
「そっか、わざわざ申し訳ないな。」

配達に来ていた顔見知り、シズクが俺に声をかけるために楽屋に来た。
だから労ったのに。
いった途端、シズクの顔が曇る。
なんか変なことでも言ったか、俺。

「ミハルさん…なんか変なものでも食ったんじゃないの」
「失礼だな、俺は別に普通だろ」
「普通じゃないでしょ、ミハルさん今まで俺にそんな顔で申し訳ないとか…いった…ことっ、な…っははは、ウケる」
「おい、配達終えたなら早く次の現場いけよ…」
「まあまあ、俺も見てくから。がんばれ、ミハルさん」
「…サンキュ」


やっぱ今日ミハルさん変だわ、ミスんなよ〜、と呑気なことを言ってシズクは去っていった。
俺だって信じられないくらい動揺してんだよ。察せよ。無理だろうが。

「あの笑顔…はぁ、マジやべえわ…」

夢の中でしか会えないと思っていたあの少女の笑顔が頭から張り付いて離れてくれない。
それもそうだ、俺にとっては奇跡で、運命で、そして、一生叶うことなく死んでいくのだろうと思った、そんな相手が、まさに数時間前に、目の前で、夢と同じ笑い方で俺に笑って見せて。

…何かの冗談だったのだろうと思いたかった。信じたくなかった。このまま、何事もなくまた同じように指揮を振る日々を続けていたかった。
けれど。

「飲み込まれ、ちまったよな」

まさに、恋だった。確かに、形を持って。
ミハルのそれは、さらに運命じみて、さらには多少の狂気でさえもはらんで。

ミハルはどっと疲れたような顔で、用意されていた楽屋のソファに横になり、

「少し、寝よう…」

そのまま、少女の待つ夢へとのめり込んでいった。


20151221