言葉に甘える

甕覗の39話と40話の間の話。




パチリ。
目が覚める。見慣れない木造の天井にここはどこだったっけ、と記憶を探る。――そうだ、フラダリさんの知り合いの家だっけ。えんとつ山であの後倒れたと聞いて、フラダリさんが去った後また寝っちゃってそれで……

ぼんやりとしていると、襖が開く音がした。そして勢いよく横になっていた身体が蹴り飛ばされる。


「いってぇ!!!??」

『いつまで寝てるんだよ』

「り、リオル…!お前……!!!」


犯人はリオルだった。そりゃ、格闘タイプのポケモンに蹴られたとなるとめちゃくちゃ痛い。この野郎。
するとそばに置いてあったモンスターボールから俺の手持ちがどんどん出てきて、フレアを筆頭に引っ掻かれたり、叩かれたりと散々だった。

ようやく落ち着いてくれたところでまた襖が開く。そこにいたのはフラダリさんではなく、深緑色の着物を着た茶髪の男性。はねた茶髪から除く糸目は何を考えているのか読めない。


「声が聞こえたからもしやと思ったが…目が覚めた様だね。おはよう」

「お、おはよう、ございます……」


全く見覚えのない人で焦ったが、冷静に考えてこの家の人だろう。ってことはフラダリさんの知り合いの人ってことか。


「フラダリくんから話は聞いているよ。いくら急いでいたとはいえ、あそこは火山なんだ。水分補給はしないとね。この地方は他の地方よりも比較的に暖かいから尚更だ。暑いから半袖でいればいいという問題でもない。気をつけなさい」

「は、はい……」

えんとつ山での自分のことが、完全に見透かされている。いや、恐らくフラダリさんから聞いたからだろうが……


「君のポケモンたちも心配していたようだが、どうやら色々あったみたいだね」


俺の頬に出来た真新しい引っ掻き傷を見て茶髪の男性は言った。


「……さて、名乗り遅れたけれど、私はカヤと言うんだ。よろしく」

「シズクです。こちらこそっよろしくお願いします…!」


ペコリとお辞儀をすれば、カヤさんが笑ったように見えた。糸目って表情が読みにくい気がする。
カヤさんは外を見るような素振りを見せると、今晩も泊まっていきなさいと言った。今晩もってことはやっぱり起きてフラダリさんと話してから、1日経ってるらしい。
でも2日続けて泊めてもらうのは申し訳ない。そう言えば、カヤさんは俺が体調が万全じゃないだろうと答えた。フラダリさんにも疲れが溜まっているとか言われた。見てわかるほどなのか。


「私は薬師をしているから、多少は医学をかじっているんだよ。だからわかるんだ。シズクくん、無理をしては駄目だ。君は今旅をしているし、誰もいない所で倒れてしまっては元も子もない。休養はできる内にしておきなさい」


カヤさんの言葉にぐうの音も出ない。
それもそうだ。俺が倒れたらポケモンたちに迷惑がかかるし、もしたまたま通りかかって助けてくれた人にだって。


「じゃあ……もう1日お世話になります」


だから彼の言葉に甘えることにしよう。


2016.1/7