小話

「花嫁さん!!ねぇにーに!!名前、花嫁さんやりたい!!」

職業体験型テーマパークでのウェディングセレモニー体験にて、名前ちゃんは目をキラキラ輝かせながらはしゃいだ。

「これ人気なんだろ?もう他の子に決まってるんじゃねーか?」
「そっか…」

目に見えてしゅんとした名前ちゃんを見て、慌てて真田くんは機嫌をとる。

「と、とりあえず聞いてみようぜ!
すみません、このウェディングセレモニー体験の新婦役って空いてますか?人気って聞いたんですが…」
「ああ、今回はまだ空いてますよ!ただ、本日は同行者の男性の方に新郎役をお願いしておりまして…併せてお願いできますでしょうか?」

新郎役様については大人の方用のお衣装準備してございますので、とにこやかに係員さんにいわれ、ちょっとだけ真田くんは嫌そうな顔だ。
そのまま、名前ちゃんをちらりと見る。大きな目をこれでもかと輝かせた名前ちゃんを見て、ため息をひとつついた。

「はい…じゃあ俺が新郎やるので、新婦役をこいつにやらせてやってください…」

やったー、と嬉しそうに名前ちゃんが小躍りした。
写真撮っといてくれ、俺のじゃなくて名前の!俺のはいらねーから!と言い残して、彼は着替えへ向かった。似合いそうなのになぁ。


*****

結論から言うと、真田兄妹の新郎新婦は大変に見目麗しかった。

名前ちゃんも大変可愛らしい少女だし、憧れの花嫁さんのウェディングドレスにたいそうご機嫌さんだ。
真田くんはというと、容姿が整っている上に体を鍛えていてがっしりしているためか、礼服がとても似合っていた。

他の役でセレモニー体験をしている子たちの保護者たちから、新郎くんイケメンね…新婦ちゃんも可愛い子だわ、と囁き声がきこえた。
そうなんです、真田兄妹美男美女なんです、とただの同行者に過ぎない私が胸を張りながら、パシャパシャと2人の写真をスマホに収める。

それにしても、いざ衣装を着ればノリよく新郎役をやると思ってた真田くんの表情が、なんだか珍しく硬いのが気になった。
なんだかんだ私たち高校生だし、こういうのは恥ずかしいのかな?

*****

帰ってから、LINEに今日の写真のアルバムを作成して共有した。
やっぱり見返しても表情が硬かったので、ついでに聞いてみる。

《今日の写真、アルバムにしたから是非ご家族と共有してね!
真田くん、ウェディングセレモニーの時ちょっと表情硬くない?》

《今日ありがとうな!お袋見せたら喜ぶと思うから助かるわ。
そうか?と思って見てみたけど、確かに硬てーな俺の顔 笑》

《名前ちゃん、全瞬間めちゃかわだから見せてあげて〜!
そうなの、めっちゃ硬いの。笑 そんな着るの嫌だった?》

《古川って写真うめーな!ほんと全瞬間かわいーわ 笑
いや、実際着ちゃえばそんなに嫌ではなかったし楽しんでたんだけど、名前がドレス着てるの見たら、あいつが嫁に行く日のこととか考えちゃって…》


「真田くんって…結構シスコンだよね…」

あんなに可愛い妹ちゃんなら、しょうがない…かも?
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