「いらっしゃいトド松くん!」

 玄関を開けて一番に、名前ちゃんの普段よりもラフだけど可愛らしい部屋着姿に目を奪われる。ごくっと唾を飲んで息を整えてから、「お邪魔するね」と静かに告げた。

「先に奥の部屋行って待ってて、飲み物もってく」
「何か手伝おっか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そっか。何かあったら呼んでね」

 笑い返してくれる名前ちゃんと目を合わせてから、短い廊下の先にある部屋へと足を踏み入れる。玄関先からも思ったけど、やっぱり女の子の部屋ってかわいい。あと甘い匂いもするし。というか、名前ちゃんの部屋が特別いい匂いがするのかな。
 ソファのない名前ちゃんの部屋ではいつもベッドを椅子代わりに使っている。ぼふっと身体をベッドに沈ませて、彼女が飲み物をもって部屋に戻ってくるのを待った。






 彼女の部屋に遊びにくるのは初めてではないし、エッチするのも初めてじゃない。部屋にきてテレビを見たり一緒にスマホのアプリで遊んだりしながら話して、そういうことしてるのも大体ベッドの上だから、自然とお互いキスする回数も増えていって最後はスマホなんてほっぽり出してお互いの身体に手を伸ばすのだ。
 今日も目が合ってから、吸い寄せられるように唇を合わせた。

「ん……んっ、トド松く……」

 部屋の甘い匂いとはまた違った鼻腔をくすぐる名前ちゃんの匂いや、柔らかい感触にドキドキする。
 はあ、何でこんなに可愛いんだろ僕の彼女。ほんと可愛い。ずっと触ってたい。唇を離して名前ちゃんの顔を覗けば、とろんとした目で僕をゆっくりと見上げた。ぴくりと身体の中心が反応するが、それでも余裕を持ったように僕は笑い返す。

「ね、名前ちゃん」
「……なに?」
「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
「お願い?」
「うん。……今日は僕のこと、気持ちよくしてよ」

 そう告げれば、名前ちゃんは一瞬訳が分からないというように大きな黒目をさらにくりっとさせて首を傾げた。

「あ、別にいつも気持ちよくないわけじゃないよ?名前ちゃんの中すっごく気持ちいいし」
「そ、そういうこと言わないで……」
「ごめんごめん。でも本当のことだからね?」
「トド松くん……!」
「ごめんって。だけどさ……」

 不意打ちをつくように名前ちゃんの無防備なスカートの中へ手を忍ばせて、つっと下着の上から敏感な部分をなぞる。

「いつもはここで気持ちよくしてもらってるけど、今日はこっちでもしてほしいな」

 びくんと身体を反応させた彼女を見届けてから、スカートから抜いた手のひら、人差し指で、ゆっくりと名前ちゃんの唇を押した。唇の柔らかい感触だけでも本当はすごくドキドキしてるんだけど、ここで余裕をなくすわけにはいかないからね。今日はご奉仕してもらおうって決めてたし、それに、

「え……く、口で?」
「嫌?」
「嫌じゃない、けど……」
「けど?」
「……私、やったことなくて」

 名前ちゃんの可愛い姿を、もっともっと見てたい。

「そうなんだ。でも大丈夫だよ、僕が教えてあげる」

 不安げだけど、それでも頬を赤くしておずおずと頷いた名前ちゃんに、胸の高鳴りはより一層強くなった。





「まずは脱がせられる?」
「えっ!私が脱がすの?」
「僕自分で脱ぐの恥ずかしいなぁ」
「いっつも自分で脱いでるじゃん……」
「それとこれとは状況が違うの。ほら、名前ちゃん」

 抵抗の色を見せながらも僕の言った通りに動いてくれる名前ちゃんにぞくぞくと身体を抜ける感覚がする。ベッドに座りながら、脱がせやすいようにちょっと腰を浮かせれば名前ちゃんはそっと目線を逸らしながら僕の下着を脱がせていった。

「名前ちゃん照れてる?」
「そ、そんなの、決まってるでしょ……」
「いつもこれで気持ちよくなってるのに?」
「だからそういうこと……!」
「冗談だってば、怒んないでよ」

 冗談じゃなくて事実のくせに、なんて言ったらきっとまた怒るだろうから、その言葉は飲み込んで代わりに「ね、舐めてみて」と次の行動を促す。

「どうやって……?」
「好きなようにしてみていいよ」

 頑なに視線をこちらに向けない名前ちゃんは、一瞬僕の顔を見上げたあと、ためらいながらも舌を出してそれをゆっくりと這わせた。赤い舌が口から覗いた瞬間から、奪われるように意識がそちらへと集中する。

「……っ、こう?」
「ん……うん、それでいいよ」
「……ん…………っ、ふ」

 慣れていない名前ちゃんのぎこちない動き。だけど、少しずつ抵抗が薄れていっているのか、段々と舌の動きに強弱がついてくる。名前ちゃんが僕のほうを伺うみたいに目線を上げた。視線が絡んで、耐えきれず口元を緩める。かわいい。僕のために名前ちゃんが頑張ってくれていると思うと、身体の奥がじわりと熱くなった。

「そのまま咥えて」
「ん……っ、む」
「咥えたまま舌動かせる?」
「……?ふ……ほーお?」
「っ……ん、そう、ゆっくりでいいから動かして……」

 徐々に余裕が奪われてくみたいに口から熱い息が漏れ始める。初めてにしてはいい線いってるんじゃないかな。なーんて、僕も名前ちゃんにしてもらうのが初めてなんだけど。
 唾液で滑りがよくなったモノが彼女の口から抜き差しされる様を見下ろすように眺める。たまに名前ちゃんが不安そうな表情をして僕を見上げる度に息がつまるような思いがした。

「っ、は……上手だね」

 髪に手のひらを滑らすように頭を撫でながらそう言えば、恥ずかしそうに名前ちゃんは瞳を伏せる。はあ、最高、かわいい、すっごくかわいい。このまま口で頑張ってもらうのも悪くないけど……。

「名前ちゃん」
「んーん?」
「そろそろ疲れたでしょ?もうやめても平気だよ」

 少し間を置いてから名前ちゃんが口をゆるゆるとはなして、それから、離れる寸でのところでペロッと先っぽに舌を這わせた。不意打ちをつかれた僕の肩は少しだけ跳ねて、掠れた声が小さく漏れる。
 ……あーもう。そういう事するんだから。

「ほら、ベッドおいで」

 床に座り込んでいた名前ちゃんの腕を掴んで上へと引き上げて、それから、服を脱がせながら彼女の耳元に唇を寄せた。

「気持ちよくしてもらったから、今度は僕がいっぱい気持ちよくしてあげるね」
「んっ……!」

 耳に舌を這わせながら、最初にしたようにスカートの中へ手をいれて下着の上から割れ目をなぞった。今から気持ちよく……と考えていたはずが、しかし、予想外にもぬるりとした感触が指に伝わってくる。

「あれ?ねえここ、濡れてる?」
「やだっ……」
「やだじゃなくてさ、名前ちゃん……もしかして僕の舐めて興奮した?」
「ちが、んぅ!……あっ……!」

 下着をずらして直接そこに指を滑らせれば思った以上に濡れていて、僕は口元の緩みを抑えられなくなった。

「すっごく濡れてるね、名前ちゃんのここ……ほら、指もう入っちゃったよ」
「だ、め……やっ……!」
「僕の舐めながらエッチな気分になっちゃったんだ?」
「んっ……んっ、ちがう、っ!」
「違わないよね」
「……ひゃ、やぁ……ん」
「今日あんまり慣らしてあげれてないけどいい?さっき名前ちゃんに気持ちよくしてもらったおかげで、もう僕きついんだけど」

 いつもはもっと慣らしてあげるところだけど、今日は初々しいご奉仕をしてもらって、こんなエッチなところ見せられてさ、あんまり余裕ないんだよね。ごめんね名前ちゃん。でも気持ちよくしてあげるからさ、

「も、まだ……!待って、っ」
「もう待てないよ」

 許してね。
 スカートと下着を全部脱がせてから、とっくに乾いてしまった唾液の代わりに名前ちゃんのやらしい液をそれにこすり付けた。それから両足を持ち上げて、ゆっくりと腰を沈めていく。やだやだと首を横にふる名前ちゃんが本当は嫌だと思っていないことも、ほんとは全部知っている。

「やっ、あ、やだ……っ!」
「嫌?」
「ん、だって……!」
「じゃあやめる?」
「あっ……う、やだ、や……」

 動きを急に止めれば、名前ちゃんは泣きそうな顔をしながら僕を見上げた。あーもう、そんな可愛い顔しないでよ。顔色を変えないように見つめ返せば、切なげな表情で目線をそらして、名前ちゃんが熱い息を吐いた。

「……やめ、ないで」

 ぞくりと、快感が背筋を震わせる。

「知ってるよ。やめてほしくないよね?」

 誘発されるように先程よりも強く腰を打ちつければ、名前ちゃんは今度こそ嫌だと口にすることもなく、首を横にふることもなく、だらしなく口を開けてかわいい声をあげ続けていた。
 ご奉仕するのもされるのも好きだし、すっごく気持ちいいけど、でも。

「あっ……あ、トド松く……きもち、い!」
「僕も気持ちいいよ、名前ちゃんっ」

 一緒に気持ちよくなれるのは、もっと最高なんだよね。
 もっと気持ちよくなろっか、名前ちゃん。2人で。

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