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「マネージャーになって半日も経たずにキミはそれ以上の働きをしてくれた。テニス部部長として礼を言うよ ありがとう、一条さん」
幸村からの感謝の言葉に麗奈は胸の奥がむず痒くなるのを感じた。財閥の令嬢として育った麗奈は当たり前だが人に何かをしてあげるというより、何かをしてもらう方が多かった。
しかし初めて日本の学校でマネージャーというサポート側に回って部員の役に立ち、感謝をされる。
誰かの役に立って感謝をされるという感覚に慣れていない麗奈には幸村のストレートなその言葉がむず痒く感じられたのだ。
「お礼なんていらないわ 私はあなた達のマネージャーとして当然の事をしたまでなんだから」
「フフ そうかな?その割にとても嬉しそうに見えるけど」
「きっと幸村君の気のせいよ!私は至って普通だもの」
「わかった キミがそう言うならそういう事にしておくよ」
そう言って幸村がクスクスと笑う。口では気のせいだと否定している麗奈だがほんのり赤い頬と、嬉しさを悟られないようにわざとツンとした態度を取っている所を見れば照れているのか照れていないのかなどわかりきっている。
あんなに堂々としていて、どこか大人っぽくてキスだって顔色一つ変えずにできるのにこうして照れているのを見るとやっぱり彼女もまだ自分達と同じ高校生なのだ実感する。
「一条先輩…いや、麗奈先輩ってツンデレなんスね!俺 ツンデレでも全然ありっスから!」
「ツンデレ?何なのそれは」
「麗奈先輩みたいな人のことっス!」
ツンデレの意味が分からず赤也にその意味を聞き返せば全く答えになっていない返答が返ってきて更に麗奈が首を傾げる。
「しかしまさかお前があんな行動に出るとはな そうとも知らず聞かれるがまま素直に答えた俺はまだまだのようだ」
ツンデレとは何なのかを考えていた麗奈は後ろから聞こえてきた柳の声にパッと振り向いてその言葉を否定した。
「それは違うわ。柳君は心配して教えてくれたのに私がそれを逆手に取るような事しちゃっただけだもの だからそんなに気に病まないで?」
「お前がそう言うのならわかった。だがまた一つ新たに問題が発生したぞ 精市」
「ああ 彼女だね。分かってるよ どうにか対策を練らなくちゃな」
柳と幸村が顔を見合わせて頷き合う。新たな問題とはついさっき柳の言っていた"黒い噂の絶えない厄介な女"の事だった。
柳と幸村はお互いの言いたいことを理解し合っているようだったがいきなりそんな会話が始まり、内容を知らない麗奈は疑問符を浮かべながらそんな二人に目を向ける。
柳の言う厄介な女とは、先程女子たちの指揮をとっていた栗原の事であった。
公衆の面前でその栗原のお目当てである幸村の頬にキスをしたとなれば目をつけられても無理はない。
「あの場では大人しく引き下がったが栗原の性格上このまま一条を放っておくというのはまずあり得ない」
「うん そうだね。ーーあ、ならこんなのはどうかな?」
俯きがちに解決策を考えていた幸村が顔を上げて麗奈を見つめた。