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「一先ずほとぼりが覚めるまでは常に俺達のうちの誰かが一条さんと一緒に行動するんだ」
「ふむ 栗原を寄せ付けないためだな」
「ああ。だけどもちろんこれは解決策じゃなく単なる一時凌ぎに過ぎない。だから、解決策が見つかるまでは俺達で一条さんを守る」
幸村がそう言って真剣な表情で部員達の顔を見渡せば部員達も異論はないようで、幸村のその案に納得して頷いた。
「そうだな 一条は俺達の為に自ら危険を冒し部の蟠りを解消してくれたのだ。その心意気を見習い今度は俺達がそれに答えねばならん」
「真田君の言う通りですね。解決策が見つかるまでは我々が責任を持って一条さんをお守りしましょう」
「だな!まぁ喜べ この天才的なブン太様が守ってやるからには百人力だぜい!」
「俺も俺も!麗奈先輩に危害加えようとする奴がいたらいつでも潰すんで安心してください!」
「おい赤也、潰すってな……いや、でもこの場合一条が危ないからいいのか…?」
「まあ深く考えるのはやめんしゃいジャッカル 何も考えずただ一条の護衛をすればええんじゃ」
「…そうだな。女子達の問題を解決してくれたのもそうだけど一条は俺達テニス部のマネージャーだしな」
テニス部レギュラー一同が口々にそう言ってくるのに対し麗奈はただ一人解せないといった表情で彼らを見つめた。
「ねえ 守るって、まさか私をって事かしら?」
「そうだけど…俺達じゃ不満かい?」
「いいえ、不満とかの話じゃないの。ただね 私には必要ないのよ」
麗奈の言葉にその場にいる全員が不思議そうに首を傾げる。
だが柳だけは麗奈の言わんとしている事を理解したようで、その場から一歩前に出て彼女を見つめた。
「"必要ない"というのは話の流れから察するに俺達がお前を守ると言った事への答えだろうか?」
「ええ。でも気を悪くしないでね あなた達が頼りないとかそういうんじゃなくて守られなくても自分の身くらい自分で守れるって意味だから」
その言葉にテニス部員達の顔色が驚きに染まった。
厄介な女に目をつけられたというのに焦った様子を見せるどころか自分の身は自分で守るなど予想だにしていなかった言葉が返ってきたのだから無理もない。
「で、でも危ないっスよ!その桑原ってやつ、何してくるかわかんないんスよ!?」
「おい赤也、桑原は俺だ!お前の言ってる奴は栗原な!」
「あ そうだったス。すんませんジャッカル先輩!つい名前が似てたんで」
「あ、おう わざとじゃねーならいいんだ」
うっかり名前を言い間違えた赤也に一瞬場の空気が和む。だが再び静寂が訪れ、幸村が静かに口を開いた。
「必要ないと言うからには何か策でもあるのかい?」
「そんなものないわよ。ーーいい?私が今日した事はあなた達の負担を減らす為にやった事なの。それなのに変な女に目をつけられたってだけで私を守る守らないの話になるなんて、本末転倒もいい所だわ」
麗奈が凛とした表情でそう言い切ると幸村の瞳が僅かに見開かれた。
「隕石が降って来るならまだしもたかだか雌猫一匹じゃない。私なら大丈夫だからあなた達はテニスに集中しなさい わかったわね?」
本来、ごく普通の女子ならば申し訳なさそうにしながらも守ってもらうことを了承するような雰囲気だっただろう。
だがそんな反応とはまるっきり正反対の対応をされ幸村達は思わず言葉をなくした。
自分に構わずテニスに集中しろとまで言われればこれ以上この件に口を出すのは難しいのだろう。
かくしてテニス部レギュラー達は新しいマネージャー・一条麗奈の、想像を遥か超越した鋼の精神力にただただ目を剥くのであった。