初詣を満喫し終えて、向かった先は初売り。

「悪いな付き合わせて」
「いえ、全然!」

倉持さんが行きたい、というので それについて来たのだ。

「オフのときくらいしかゆっくり買い物できねぇからさ」
「それはありますね。練習後とか出かける余裕ないですし」
「だよな」

大型ショッピングモールの中のスポーツショップ。
お店の中は俺たちのような学生っぽい人や親子連れであふれていた。

「何買うんですか?」
「練習用のウェアはとりあえず 欲しい」

ウェアのコーナーで選んでいる倉持さんの横で周りを見ていて、ふと気づく。

「倉持さん、倉持さん」
「どした?」
「あれ、」

俺の指差した先。
倉持さんは目を瞬かせてから笑った。

「やっぱ友達いねぇなあいつ」
「あー、いなさそう…」
「まじで、いないからな」

1人でスパイクを見ている御幸さん。
青道から近いところのお店だし、いてもおかしくはないけど。

「どうします?声かけますか?」
「いや、いいだろ。オフにまで顔合わせたくねぇし」
「嫌いなんですか?」

嫌いではないけど、うざいなと彼は言って視線を服に戻す。
思い返せば御幸さんとはあまりまともに会話をしたことはない。
良くないイメージが先行してるっいうのが主な原因だろう。

「まじか…」

1人でスパイクを見ていた御幸さんが何かに気づき、手を振る。
その先にいたのは特徴的な白い髪の持ち主。

「今度はどした?」
「鳴さんと白河さん、神谷さんですね」
「は?」

うわーまじか、と倉持さんが少しめんどくさそうな顔をした。

「一緒にいんの見られたらだるそうだな」
「ですよね…」
「どうする?一旦離れるか?」

そうしましょうか、と彼らから見えないよう遠回りをして店から出ようとした時。

「あれ、倉持?」
「…逃げんぞ」
「え、」

倉持さんが俺の手を掴んで走り出す。

「ちょ、追いかけろ!神谷!」
「は!?俺!?」
「お前以外誰が追いつくんだよ!」

神谷と追いかけっことか最悪だな、と俺の手を引いて走る倉持さんが言った。

「どっちが速いんですかね?」
「さぁな!つーか、長距離は専門外」





「俺らは回り込むよ」
「何、必死になってんの?鳴も御幸も」

神谷を走らせた御幸。
そして、回り込んで追いつこうとする鳴。
俺の問いかけに2人が答えた。

「倉持が一緒にいたの、颯音だった」
「なんか面白そうだったから?」

だからなんだと言うんだ。
鳴が必死になるのはわかるが、御幸の理由はひどい。

この辺りに来るだろと御幸が足を止めた場所。
ちょうど曲がり角から現れた2人。

「くそ、まじか!」

倉持の表情が歪み、後ろにいた颯音はため息をついた。

「何してんの、颯音」

鳴が倉持の後ろの颯音に詰め寄り、颯音は降参ですと両手を挙げた。

「別にオフに俺が誰といようが、鳴さんには関係ないじゃないですか」
「敵と一緒にいるのが良しとされると思ってんの?やましいことしてる自覚があるから、お前も逃げたんだろ」
「鳴さんも御幸さんといるじゃないですか」

後ろから神谷が合流して、変なメンバーだなと能天気に笑った。

「俺は別にいいのー」
「なんですかそれ。てか、なんでわざわざ追いかけてきたんですか?」
「お前が倉持といたから」

ほんの一瞬。
颯音の眉間にシワが寄った。
あ。ちょっと、怒ってる?

「なぁなぁ、玖城!」

倉持と話していた御幸が颯音に詰め寄る。

「お前と倉持って何で仲良いの?2人の間になんか、隠し事あるよね?」
「別にないですけど」

隠し事…
そういえば、あの手紙のこと…
あれは、事実なのだろうか。
倉持は知っているのか?

「何それ、俺聞いてないけど」
「何もないって言ってるじゃないですか。聞いてました?鳴さん」
「ふぅん?」

信じる信じないは勝手にしてください、と颯音は投げやりに答えて、倉持の方を見る。

「つーかさ、何も用ねぇなら、俺らもう行くぞ。颯音」
「はい」
「勝手に終わらせないでくんない?」

鳴が倉持に詰め寄り、倉持が「あ?」と眉間にしわを寄せた。

「まだ颯音と話、終わってないんだけど」
「お前さぁ、まだ颯音のこと信じてねぇの?俺と颯音が一緒にいると、颯音が何かすると思ってんの?」

何で颯音の先輩がお前なんだろうな、と独り言のように彼は言った。
しかし、それは鳴の耳にも勿論聞こえている。

「どーゆー意味?!」
「俺なら、颯音を傷つけたり追い詰めたりしねぇよ?お前と違って」
「なっ!?お前が颯音の何を知ってんの?」

じゃあお前は何を知ってんの?と倉持は笑った。

「いい加減にしてくださいよ。何を言い争ってんですか」
「悪い悪い。ちょっとムカついたから」

ごめんなーと頭を撫でる倉持の手を颯音は受け入れて、柔らかい表情を見せる。
そんな顔、鳴名前じゃ見せない癖に。

「俺に気使いすぎですよ。俺、大丈夫なんで」
「俺がただムカついただけだから。行くか?」
「はい」

じゃあ、失礼しますと2人が離れていき 鳴が舌打ちをした。

「ムカつく」
「何にムカついてんの?鳴は」
「全部だよ。わざわざオフに倉持といるのも、倉持のこと信頼してるのも。見た!?あのゆるゆるな表情!!」

倉持の何がそんなにいいんだよ、と2人の後ろ姿を睨みつけていた。










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