轟 焦凍

『今回の体育祭 両者トップクラスの成績!まさしく両雄並び立ち今!緑谷vs轟!!START!!』

一発目。
デカイを氷を 緑谷が吹き飛ばした。
僅かに香る血の匂いに、また彼が怪我をしたことを知る。
捕まって逃れる術がないなら相殺するしかないしな。

「スカし野郎、お前なんで 氷から抜け出せたんだ?」
「服と体の間に 血をまとってた。体と氷の間に入る隙間があるなら、血で壊せる」
「お前、発動条件は?」

頭を指差せば 便利なもんだなと爆豪は言った。
まぁたしかに拘束されても 使えるし便利といえば便利なのかもしれないな。

「ゲッ始まってんじゃん!」
「お!切島 2回戦進出やったな!」
「そうよ次 おめーとだ爆豪」

ぶっ殺すと相変わらずな言葉を彼は吐き出す。

「…とか言ってもおめーも轟も強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー」
「ポンポンじゃねぇよ ナメんな」
「さっき 限界近かったもんね」

俺の言葉に 爆豪が俺に掴みかかった。

「図星でしょ?怒んないでよ」
「なんで、」
「見てればわかったよ」

こらこら喧嘩すんな、と鋭児郎に言われて 爆豪が手を離す。

「個性だって身体機能だ。轟にもなんらかの限度はあるハズだろ」
「血郷的にはどーよ?いいとこまで追い詰めたじゃん」
「限度はあるよ。あの氷を防げる手立てがあるなら、緑谷の耐久戦狙いは いいと思う」

俺も、そーだったし。
アイツの 反応が遅れるのを狙っていた。

「悪かったな ありがとう緑谷。おかげで奴の顔が曇った。その両手じゃもう戦いにたらねぇだろ。終わりにしよう」
「どこ見てるんだ!」

折れた指で、焦凍の氷を相殺する緑谷に首を傾げる。
何をそこまで、やる必要がある?

「震えてるよ 轟くん」

焦凍も動きは鈍くなってるし 限界はきてる。
だが、このまま戦えば 勝っても緑谷は次の試合をこなすのは無理だろう。

「君自身 冷気に耐えられる限度があるんだろう…?で それって 左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか」

緑谷も気づいたようだ。
焦凍の弱点に。

「みんな 本気でやってる。勝って…目標に近づくために…!一番になる為に!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

折れた指を彼は無理矢理握りしめた。

「全力でかかってこい!!」
「何のつもりだ…全力?お前も、クソ親父に金でも握らされたか…?」

おい、と爆豪が俺の足を蹴った。
普通に話しかけられないのか、こいつは。

「お前と戦った時の規模が、最大限か?」
「おおよそ」
「お前と戦ってるとき、動きが鈍ってたのは そういうことか」

こいつ、やっぱり頭の回転は速い。
接近戦に持ち込もうとした焦凍に緑谷のパンチがモロに入った。

「何で…そこまで…」
「期待に応えたいんだ!笑って応えられるような…かっこいい人になりたいんだ。だから、全力でやってるんだ みんな!君の境遇も君の決心も僕なんかに計り知れるもんじゃない…でも!」

焦凍の家のことはよく、知っている。
彼と父親の関係も。
彼と母親の関係も。
短い間とはいえ、俺も轟家で育てられた人間だ。

「全力も出さないで1番になって完全否定なんてふざけるなって今は思ってる!」
「うるせぇ!」
「だから 僕が勝つ!君を超えて!」

だが俺は 家族 を知らない。
だから、彼らの中には 踏み込むことは しなかった。

「親父を…「君の!!力じゃないか!!」」

だが、すごいな。
彼はあんなに 堂々と 踏み込んでいけるのか。
何も知らない 彼だからこそなのか。

「勝ちてぇくせに…ちくしょう…敵に塩を送るなんて どっちがふざけてるって話だ…」

彼の周りを 覆った炎。
あれを 纏わせる彼を見たのは、いつぶりだろうか。
隣で爆豪が嬉しそうに笑った。

「俺だって ヒーローに!!」
「焦凍ォォオオ!!やっと己を受け入れたか!そうか!良いぞ!ここからがお前の始まり!れ俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!」

階段を駆け下りてくるエンデヴァーの姿に また血がふつふつと湧き出す。

「何笑ってんだよ。その怪我で…この状況でお前…イカれてるよ。どうなっても、しらねぇぞ」

2人の攻撃がぶつかり合った瞬間 大爆発が起こった。
それを防ぐように 血の壁が 俺たちの前を覆い隠す。

「おー、サンキュ血郷。よく反応できんな…」
「助かった…」

血は勝手に瓶の中に戻って行き、砂煙がはけた頃 場外に出された緑谷の姿が見えた。

『轟くん 三回戦進出!!』

ぼろぼろになってまで、焦凍を変えたかったのか。
変わってるな…

「あんな風には、なんなよ」
「ん?…そうだね」

爆豪の言葉に笑って、席を立つ。

「オイ、どこ行くんだ」
「…トイレ」

控え室へ続く廊下で、彼の声がする。

「炎側の操作…ベタ踏みでまだまだ危なっかしいもんだが子どもじみた駄々を捨ててようやくお前は完璧な俺の上位互換になった!卒業後俺の元へ来い!俺が覇道を歩ませてやる!」
「捨てられるわけねぇだろ。そんな簡単に覆るわけねぇよ。ただ、あの時 あの一瞬はお前を忘れた。それが良いのか悪ィのか 正しいことなのか…少し考える」

エンデヴァーの横を通り過ぎて、焦凍が足を止める。

「けどな、血郷を負けさせたことは…許す気は無い」
「あのままいけば、お前は 負けていた」
「あんな無様に勝って、何の意味がある?!」

いつも、そうだ と焦凍が呟く。

「アイツは、お前に尻尾振って。俺の邪魔をする」
「尻尾を振る?血郷がか?まさか!」

エンデヴァーが笑った。

「アイツはいつも、俺の首を狙ってる。気付いてなかったのなら、まだまだだな」
「え…」

何だ、ばれてたのか。
ばれたのか今日だけかと思ってた。

「アイツはお前に必要になる。仲良く やることだな」

エンデヴァーは焦凍を追い越しこちらへ歩いてくる。
そして、影に隠れていた俺と視線を一瞬だけ絡ませたが何も言わずに通りすぎていった。
やけに静かになった廊下に、今度は俺の足音が響く。

「3回戦進出おめでとう、焦凍」
「血郷…聞いてたのか…?」
「久々に見たよ、焦凍の炎」

何か言いたげな彼に 俺は微笑む。

「俺が、アイツを嫌いなのが そんなに意外?」
「だって…お前が、逆らうとこなんて…」
「そりゃ、衣食住やら金銭的な支援してもらってるし?」

まぁなくても生活はできるんだけど。
あの事件での 見舞金や慰謝料やらで。

「従って生きても 従わず死んでも 俺にとっては どうでもよかったし」
「なんで…」
「けどね、事情が変わったから。俺は、俺のやりたいようにやるよ」

言ったでしょ?と首を傾げる。

「テメェの言う通り動くと思うなよって」
「だったら!なんであの時俺に負けた」
「ただ言うこと聞かずに勝つより よかったでしょ?負けながらに勝つ姿を見せつけたほうが。無様で」

まぁ、焦凍には悪いことしたなって 少しは思っているよ。
完全に 俺とエンデヴァーの喧嘩に巻き込まれたんだから。

「別に焦凍に恨みはないし。焦凍が色々教えてくれたおかげで、なんとか生活もできてるし。感謝してるけどね」
「そう、か…」
「俺はもうあの人のオモチャになる気はないから。言われるがままヒーローになる気も、アイツに望まれるまま焦凍の相棒になる気も ない」

お互い自由に生きようよ、と笑った。

「俺たちは、操り人形じゃない」
「…言われなくとも、そのつもりだ」
「そう。それなら、よかった」

じゃあ、観客席に戻るね と彼に背中を向ければ 名前を呼ばれる。

「戻れるか…?昔みたいに」
「昔って?」

いや、いい。と焦凍が首を振って少しだけ笑った。

「…普通に、話しかけていいか。これから」
「焦凍がしたいなら、すればいいと思うよ」





「遅ェ」
「え、なに。怒ってる」
「どんだけトイレ長ェんだよ、クソ野郎」

随分な言い方だな。
そして、幼い。

「そこ座って見とけ」

爆豪が席を立ち、控え室の方へ向かっていく。

「なんか、気に入られてね?」

上鳴の言葉に どうだか、と笑った。


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