操り人形はやめた
決勝に駒を進めたのは焦凍と爆豪だった。
そして、瓦礫の中倒れていたのも 焦凍だった。
炎は使わなかったか。
まぁ、何年と積み重ねてきた軋轢が1日でどうにかなるわけもないか。
倒れている彼に掴みかかった爆豪も眠らされ、なんともすっきりしない 最後を迎えた。
表彰式では拘束された 爆豪が 2位のところに立つ焦凍に向かって 何かを叫んでいるようだった。
まぁ、彼の言葉で言わせれば 本気じゃない奴に勝っても意味がない って感じだろう。
そして3位には 本来いるはずの 飯田の姿はない。
オールマイトは焦凍に何か伝えているようにも見えた。
そして、同じく 爆豪にも。
『さァ今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合いーさらに先へと登っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!』
次代のヒーローね。。
『てな感じで最後に一言!お疲れ様でした!!』
Plus Ultraじゃないんだ、ってツッコミに俺は少しだけ笑った。
教室に戻っても、飯田の姿はなく。
爆豪も拘束されたまま。
なんとも、変な光景だった。
「おつかれっつうことで。明日明後日は休校だ」
ずっと放送席にいた相澤先生は、今教壇に立っている。
「プロから指名等をこっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながらしっか休んでおけ」
HRが終わり、教室を出て 普通科を目指す。
何だかんだ、エンデヴァーのせいで 話を途中で終わらせてしまったし。
HRがまだ終わっていないのか、教室からは話し声が聞こえる。
「クラス…ここであってるかな」
先生の声だろう。
人使の名前が呼ばれ、廊下に聞こえるくらいの拍手が起こる。
よかった、祝福されているようで。
そこから少しして、教室から生徒がぞろぞろと出てくる。
「人使」
「血郷!」
少し 俯きながら出てきた彼の名前を呼べば、ぱっと一瞬顔が明るくなった。
「なんで、いるの?」
「会いに行くって言ったじゃん」
あれ、ヒーロー科のやつじゃんと彼のクラスメイトが俺を見て言った。
「これからみんなと打ち上げ?」
「あ、うん。やるみたい」
「そっか。まぁ、みんな嬉しそうだったもんね」
彼は少し照れくさそうに、笑った。
「とりあえず、俺は大丈夫だったから」
「え?」
「次はもう、負けたりしない」
待ってるね、と笑って 彼の頭をポンポンと撫でる。
言いたいことはわかったのだろう、彼も頷いた。
「ねぇ、男の頭 撫でて楽しい?」
「ん?んー…なんか、あれ。かわいい から」
「は?」
じゃあまたね、と声をかけて 背を向ける。
もふもふ ふわふわ が かわいい。んだよね?
確か。
人使の髪は ふわふわ してたから かわいい。
▽
「蛟、まだ帰ってなかったのか」
偶然、下駄箱のところで 出会った相澤先生に 普通科に行ってて と答える。
「…仲良い奴でもいるのか」
「そうですね」
「そうか」
マイク先生から何か聞いた、とは思えない態度だな。
多分だけど、マイク先生は あのことを知っていた。
メディアに箝口令がしかれはしたが、ヒーローには情報は出回っていたんだろう。
「…前回と同じ場面。怪我をせずに 抜け出したのは成長だな」
「ご指摘を、もらったので」
「だが、わざと負けるのは ありえない」
バレて、いるようだ。
確信した 言い方に 俺は笑った。
「頭が疲れてただけです」
「…そういうの続けてると、落とすぞ」
脅しでは、ないようだ。
彼の目に 嘘はない。
「爆豪やら緑谷みたいになれとは、言わん。だけどな、どんなにめんどくさくても疲れてても 勝て。それが、ヒーローだ」
「…はい」
「ヒーローになりたいんだろ?うちに来てはい、終わりって ヒーローになれるわけじゃない。ここからまだまだ、道は険しい」
今のままじゃ、足元掬われるぞと 先生は言って 包帯でぐるぐる巻きの手で俺の頭を撫でた。
「いい個性を持ってて、センスもある。あとは、気持ちだな」
「わかりました」
「あと、あれだな。刀は、そんなに必要だとは 思えなかった。今回の戦いで」
たしかに、刀で戦うっていう選択肢忘れてたな。
まぁ、慣れてない武器振り回してもって感じだな やっぱ。
「こだわりがないなら、今日みたいな戦い方の方が有効だと思う」
「刀はお試しでやっただけなので、やめようと思ってます」
「そうか。あと、前から思ってたんだが血は ノーモーションで出し入れ出来た方が便利じゃないか?」
考えてみます、と伝えれば 言いたいことが済んだのか気をつけて、帰れよと 先生は職員室の方へ歩いて行ってしまった。
「たしかに、刀はいらないか。まぁ、必要になれば作ればいいし…」
血の出し入れも、たしかにな。
量も増えたし、瓶だと 結構めんどくさい。
毒のやつは瓶で分類して、大元は 変えた方が良さそうだな。
「それにしても、気持ちかぁ…」
俺は、何になりたいんだろ。
ヒーローに、なりたいのかな。
操り人形はやめた。
だからこそ、ここから決めるのは自分。
「難しいな、」
従って生きてる方が、楽だったのかもしれない。
なんて、死んでも嫌だけど。
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