Bloody

「試合、惜しかったね!」
「エンデヴァーの息子といい勝負してたよね!」

雨の降る 朝。
俺に声をかけてきたのは見知らぬ人だった。

「えっと…?」
「テレビで観てたよ!次は頑張ってね」

あぁ、なるほど。
あれは全国中継されていたんだっけ。

「ありがとうございます」

笑顔を見せてそう答えれば、声をかけてきた人たちも静かになった。
多分これで対応は間違っていないはず。

学校に着けば みんなも同じような状況だったらしく、その話で盛り上がっていた。

「おはよう」

先に席に座っていた焦凍が そう 俺に声をかけた。
そういえば、話しかけるとか 言ってたっけ?

「おはよ」
「…顔色悪くないか?」

彼の言葉にそう?と首を傾げる。

「朝、血抜きすぎたかな…」

騒がしい教室もチャイムが鳴ればすぐに静まり返る。

「おはよう」

教室に入ってきた相澤先生は 包帯が取れ ひさびさに素顔だった。

「相澤先生 包帯取れたのね。良かったわ」
「婆さんの処置が大げさなんだよ。んなもんより、今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ」

先生の目の下にはかすかに傷が残っている。
後遺症が、とか言ってたけど 大丈夫なのだろうか。

「コードネーム。ヒーロー名の考案だ」
「「胸膨らむやつきたぁぁああ!!!」」

急に、教室が騒がしくなり先生がそれを目で制す。
ヒーロー名って オールマイトとかイレイザーヘッドとか…そういうやつか。

「というのも先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2.3年から…つまり今回きた指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」

で、これがその集計結果だ。と黒板に投影された数字。
上から 焦凍、爆豪、常闇、飯田、その次に自分の名前があった。

あんな試合でよく指名なんてしたな。

「これを踏まえ…指名の有無関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らは一足先に経験してしまったがプロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

職場体験。
ヒーローを間近で見れるってことなんだろうな。

「まぁ仮ではあるが適当なもんは…「付けたら地獄見ちゃうよ!この時の名が世に認知されそのままプロ名になってる人が多いからね!」」

急に教室に入ってきたのはミッドナイトだった。

「まぁそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。将来自分がどうなるのか名を付けることでイメージが固まりそこに近づいてく。それが、名は体を表すってことだ」

名前か。
記入用に回された紙を見ながら、首を傾げる。
15分もすればできた人から、発表し始めた。

「みんな、意外と考えてるんだな…」

ポツリと呟いた言葉は今日の喧騒に飲み込まれて消える。
まぁ、ヒーロー目指してここにいるから そうなんだろう。

「思ったよりスムーズ!残ってるのは 再考の爆豪くんと飯田くん、緑谷くんと…蛟くんかな」

何か書きかけて消した飯田は結局名前で、緑谷は あだ名のデク。

「…じゃあ、残り2人ね」

八百万がこちらを振り返り、何も浮かばないんですの?と首を傾げた。

「そーね。考えたこともなかったし」
「ブラッディってどうよ!かっこよくね?」

俺たちの会話が聞こえていたのか、瀬呂がこちらを振り返り言った。
Bloody…懐かしい名前だった。

「じゃあそれで」
「え、まじ!?」
「あら、いいの?そんな決め方で」

ミッドナイトさんに何でもいいので、と答えればじゃあ決定ね!と笑った。
爆豪は再考し、再提出になってた。

「職場体験は1週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別リスト渡すからその中から自分で選択しろ。指名のなかった者は予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件。この中から選んでもらう」

配られた資料には300件近いヒーロー事務所の名前。

「それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる。よく考えて選べよ。今週末までに、提出しろよ」

ヒーロー事務所の名前見ても、俺全然知らないしな。
目を通しながら、ため息をつく。

「血郷、」
「ん?」

お前、どこに行く?と俺を見下ろす焦凍。

「なんも、決めてない」
「アイツから、指名あったか?」
「あいつ…あぁ、あるね」

エンデヴァーの名前に、俺は笑う。

「あれがあって、よく指名なんてしてきたね」
「…そうだな」
「行くの?」

彼の目にわずかに、迷いが見えた。

「いいんじゃん?今まで、目背けてた分。ちゃんと見ても」

エンデヴァーの事務所か。

「一緒に行ってあげようか?」
「え?」
「そーいうつもりで声かけてきたんじゃないの?」

そういうつもりではないけど、と彼は少し口籠る。

「いいよ」

エンデヴァーの名前を1番上の希望欄に記入する。

「どこ行ったって、関係ないから」





「職場体験か?」

隣の席のマイクが勝手に俺の手元の資料を覗き込む。

「…猫ボーイ どこ行くの?」
「あいつか?あいつは…エンデヴァーさんのとこだな」
「まじかよ」

どうかしたのか、と尋ねれば彼はどこか複雑そうな顔をした。

「なんだ?」
「いやー…」

ちょっと仮眠室、行かね?と彼からの言葉。
あそこを選ぶってことは、人には聞かれてはいけない話なんだろう。
言われるがまま、仮眠室に行って 彼はソファに腰掛け額に手を当てた。

「落ち着いて聞けよ」
「俺が落ち着いてないことなんか、あるか」
「そーなんだけど。落ち着いてられる話じゃねぇんだよ」

どういうことだ?

「蛟はアテネ育児院の 唯一の生き残りだ」
「は?」
「覚えてんだろ。俺らがプロヒーローになってすぐ。孤児院が敵に襲われて エンデヴァーさんが助けた」

孤児院に敵。
エンデヴァーさん…?

「もしかして、」
「そうだ」
「あの、人体実験の…」

彼が頷いた。

「体育祭でエンデヴァーさんと、話してるところを見たし ほぼ間違いない」
「…あそこの人体実験の内容。知ってるか」
「いや。流石に末端の俺たちにまで情報が出てきてなかった気がする」

なるほど、あれの生き残りか。
だとすれば、多少は納得がいく。
あの 人間離れした雰囲気。

「敵に狙われた理由って…確か、子供を攫う為だったよな…?」
「そう。けど、子供たちの反撃に合って…戦闘になった」

エンデヴァーさんが助けに行くまでに、子供もそこの先生も、そして 敵さえも。全滅。
敵の個性で燃えた施設の中から、1人 助け出された無傷の少年。

「…校長は多分知ってるな」
「俺もそう思う」

俺がそれに気づいたことも、猫ボーイにはバレてる とマイクが言った。

「お前に言うかは迷ったけど。お前なら、なんとか平静保って接してられるだろ。知らないより、知ってたほうが 何かあった時対処できる」
「…そうだな。俺たちが気づいたことも 校長には知らせないほうがいいだろう」

あそこの人体実験の内容は確か特秘。
俺らに知る由もない。

「エンデヴァーさんの事務所…行かせていいのか?」
「いや、、わかんねー。1人か?」
「轟と。」

ますますわからん。とマイクが答えた。

「あの2人は同じ中学の出身だ。上手くやるだろ」
「そうかー?!なんもないと、いいけどな」

あいつは次から次へと問題を持ってくるな。。
まさか、あの生き残りとは…

まずもって、あの事件は謎が多すぎるんだ。
強い個性を持った子供が集められていて、敵はそれを売るのが目的だった。
なのになぜ、殺した?
戦闘になったとはいえ、殺すか?
売り物にしたかったんだろ?
大きな爆発があったとか、先生が敵と繋がってたとか 色々な噂は浮上していた。

「勘弁してくれ、、」

あいつは、ほんとに。
なんなんだ。


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