必殺技

「まずは仮免の取得が当面の目標だ」

久々に教壇に立つ 彼を見た。

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得のための試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」
「そんなキツイのかよ…」
「そこで今日から君らには1人最低でも2つ必殺技を作ってもらう」

必殺技…
教室に3人先生が入ってきて、なおさら教室が騒がしくなる。

「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

服を着替えて、移動した先は 体育館γ。

「ヒーローとはあらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適性を見られることになる。情報力、判断力、機動力、戦闘力。他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など。多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」

なるほどね。
技は必ずしも攻撃である必要もない、らしい。

「後期の始業まで…残り10日余りの夏休みは個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す圧縮訓練となる。尚、個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して行くように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

1人1人に割り当てられたエクトプラズム。

「病ミ上ガリダ、無理ハシナイヨウニ」
「はい」
「ドウイウモノニスルカ、決マッテイルカ?」

その言葉に少し首を傾げた。

「戦闘中は色々やるんですけど、これといって 名前とかつけていなくて」
「ドンナコトヲヤッテイルンダ」
「まずは…血を ミスト状に広げて」

瓶の中の血が 視界から消える。

「これで 索敵とか。あとは、この状態で 対象を 捕縛したり」

いつものように、血を集め先生の体を血で捕まえる。

「あと…なんだろう。こーやって ナイフとか刀 作ったり」

別の瓶から出した血で手のひらにナイフを作り、それを今度は刀に変える。

「あとは、血の壁作って防御に使ったり…」
「フム。形ハデキテイルナ」
「あとは 血の繭を作って 人を守りながら運んだり できますね」

技としての精度は申し分ないな、と先生は言う。

「名前ヲ付ケテ 新シイコトニチャレンジシヨウ」
「はい。あとは、血の量が増えればやれることも増えるかな…と」
「ソウダナ」

血で武器を作ることを刀血。
防壁を作ることを 血防壁、捕縛することを血縛と 覚えやすそうな名前を先生がつけてくれた。
索敵に関しては 名前をつけると敵にバレやすいということで、名前はつかなかった。

「血ニ毒ヲ混ゼテイタトモ聞イタガ」
「あ、それは何種類か」
「ソレガデキルナラ血液ヲ薄メテモ問題ナイノデハ?」

ん?そう言われれば確かに。
元々毒血を作るときの実験で、半分以下の割合なら別のものを混ぜれた。

「混ぜて 硬度とか変わらないか 試してもいいですか」
「構ワン」





「やってるねぇ 皆!」
「オールマイト」
「私が 呼ばれてないけど今日は特に用事もなかったので来た」

療養してくださいよ、と言うが 必殺技の授業なら見たいと彼は言った。

「エクトプラズム!!死んだ!!もう一体頼む!!」

爆発音と爆豪の声。

「彼はすごいな」
「ええ、もっと強くなりますよ あれは」

オールマイトは緑谷に声をかけに行く。
相変わらず、お気に入りだな。
その後には他の人にも声をかけていたが、彼のポケットには すごいバカでも先生になれる!という本が入っていた。

「…いいのか、それで」

蛟は病み上がりだが、大丈夫だろうかと視線を向ければ なにやらしゃがみこんでいるのが見えた。

「おい、大丈夫か」

気になって 声をかけに行けば 彼はふわふわと浮かせた少量の血に水を混ぜ合わせていた。

「…何してんだ、お前」
「血液の量が増えれば やれることも増えるかなぁ。と。硬度やら精度やら 変わらないなら 極限まで薄めれば 一回の採血で 今までより 多く使えるようになるし」

水が混ざった血液をナイフに変えて、彼はエクトプラズムと戦闘を始めた。

「使イ心地ハ ドウカネ」
「特に、問題ないですね。違和感もないし」

その血を今度は捕縛に使って、感覚を確かめているようだった。

「…無理はするなよ」
「わかってます」

オールマイトに言われた言葉を思い出す。
彼にヒーローを諦めろなんて、俺には 言うことはできない。
やっと あんなに真っ直ぐ向き合うように なったのだから…





「ここか、開発工房」

血液の調合に時間がかかって、そこを訪れた時には外はもう真っ暗だった。

「失礼します」

中には 2人の人。

「コスチュームの改良で話があって来たんですけど」
「イレイザーから聞いてるよ。中入んな」

中に案内してくれたのがパワーローダー先生。
女の子の方が 学生だろうか?

「とりあえず コスチュームの説明書みせて」
「あ、はい」
「で、今回はどうしたの?」

とりあえず ポーチの中の血液の瓶をテーブルに置く。

「今まで、こういう風に血を携帯していたんですけど。ノーモーションで血液を取り出したくて」
「なるほどね。結構な量を持ち歩く?」
「そうです」

タンクを背負いますか!?と近づいて来たのは 奥で何かを作っていた女の子。

「発目、話にすぐに入ってくるな」
「近接戦も結構やるし 身動き取れなくなるようなのはちょっと…」
「では!服みたいに着るとか!あ、弾帯みたいに たくさんぶら下げますか!?」

ぐいぐいと 距離を詰めてくる彼女。
なんだこの、圧力…

「あ、けど。弾帯は…いいかもしれない」

持ち運ぶにも。
銃とか作って貰えば、その弾飛ばせる?
そうなれば、自分中心の索敵から その弾を撃ったところからの索敵もできるようになるんじゃ…

「ついでに、それが撃てる銃も欲しい。弾は、中身は空でいい。血を入れておくから」
「わかりましたわかりました!!私に!お任せ下さい!!」
「…しっかり見てはおくから。」

ありがとうございます。よろしくお願いします、と伝えて 俺は工房を出た。

「…血の服を着る…か」

うーん、と首を傾げながら 俺は寮へと戻った。


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