まだ 間に合う
「あら?オイねぇアレ瀬呂たちじゃん!やったぁ スッゲ!おーい!」
「上鳴くん!やったぁ スッゲ おーい!」
ちゃんと答えてくれるのすごいな。
喜びの舞?をする彼らを見ていれば珍しく 爆豪が自分から 緑谷に近づいていく。
「………通ったんか デク てめクソ」
「かっちゃん…!あ…うん…」
「そんな力がありゃ当然だ」
珍しい。
爆豪が緑谷を認めた。
けど、なんだろう あの表情。
「借り物…自分のモンになったかよ」
借り物の力?
自分のものに?
どういうことか さっぱりわからない。
「血郷、いくぞ」
「はいはい」
マスクを外して 彼の隣に並ぶ。
なんか、複雑そうな顔してんな。
「ねぇ、かっちゃん」
「あ゛!!?」
「こわっ。ちょっと呼んだみたかっただけ。今は、余計なこと考えんな」
爆豪の背をぽんぽんと叩けば 彼は舌打ちをして そっぽを向いた。
「次そうやって呼んだら殺すぞ」
「ごめんて」
結構 A組は残っているな。
みんなに声をかけながら奥の返却棚に ターゲットを戻していく。
「結局 ガスマスクの正体は わかってねぇな」
爆豪は俺のそれをコツコツと指で叩く。
「そーだね」
まぁ、使ってはいたんだけど。
バレないだけで。
「残り10名だって」
「どうでもいい」
「こらこら。A組できてないのは…残り9人か」
そして、間も無く終了の合図。
全員が無事 通過したようだった。
また画面がつく。
『えー100名の皆さん。これご覧ください』
画面に映ったフィールドが爆破されていく。
『次の試験でラストになります。皆さんはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』
救助演習か…
『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者としてどれだけ適切な救助を行えるか試させていただきます』
壊れたフィールドに入っていく 人々。
傷病者に扮した彼らを救助するらしい。
ポイント採点で、基準値を超えていれば 合格らしい。
なにやら緑谷たちが揉めているなか、士傑がこちらに歩いてきた。
「爆豪くんよ」
「あ?」
「肉倉…糸目の男が君のとこに来なかった?」
すごい毛。
もじゃもじゃだ…
「ああ…ノした」
「やはり…無礼を働いたと思う。気を悪くしたろう。あれは自分の価値基準を押し付ける節があってね。何かと有名な君を見て暴走してしまった。雄英とは良い関係を築き上げていきたい。すまなかったね」
良い関係。
…学校同士のそんなの 必要なのか?
「おい坊主の奴。俺 なんかしたか?」
焦凍が話しかけたのは円陣に入ろうとしてきた男。
たしかに 嫌な視線で 焦凍を見ていたけど わざわざそんなこと聞きにいく姿は意外だった。
「ほホゥ。いやァ申し訳ないっスけど…エンデヴァーの息子さん。俺はあんたらが嫌いなんだ。あの時よりいくらか雰囲気変わったみたいスけど、あんたの目はエンデヴァーと同じっス」
「焦凍…」
彼は俯いた。
その横顔に、嫌な予感がして声をかけようとした時。
鳴り響いた警報。
『敵による大規模破壊が発生!規模は市内全域。建物破壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う!』
また展開した部屋。
『一人でも多くの命を救い出すこと!』
放送の声が終わると同時に、学生たちが飛び出した。
都市部へ行こう、と動き出した俺たちの前に 現れた泣き叫ぶ子供。
「あっち…おじいちゃんが!!ひっ潰されて!!」
「ええ!大変だ!!!どっち!?」
「なぁんだよそれ!減点だよぉ!」
泣いていた少年が途端に 冷静な声で緑谷を怒る。
採点は救助者が行うのか。
ガスマスクを外して、彼の前にしゃがみこむ。
「大丈夫だよ、落ち着いて」
笑顔を見せながら 子供の首で脈を測る。
「帽子外すね。傷は深くないけど、頭の出血はひどいね。ほかに、痛いところはあるかな?」
首を横に振った少年をあまり動かさないように血で浮かせる。
「よく頑張ったね。すぐ、救護所に連れていく。君のおじいちゃんも、俺の仲間が救い出すから。緑谷、この子を連れていく。そっちは救助は任せる」
「わかった」
救護所は控え室の位置に、と近くの人の声を聞き そこまで走る。
その途中に 索敵をしながら救助者の位置を確認した。
助けられそうな人を血繭に包み込み、まとめて救護所へ。
自分が辿り着いた時には救護所はもうすでに人が運び込まれていた。
「頭部の出血あり。傷は深くないです。受け答えははっきりしてます」
「…うん!じゃあ、右のスペースに運んで」
救助してきた最後の1人を救護所に託し終えた、そんな時爆破された救護所。
爆発の方向を見れば、同じように 救護人を連れてきた 緑谷と目が合う。
『敵が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行して下さい』
「緑谷!俺は救助者の移動を優先させる!」
「わかった!僕が「俺がいく!」真堂さん!?」
前に出たのは真堂さんだった。
まぁ、誰でもありがたい。
敵を彼らは任せて、重傷者をそれぞれ血の繭で 包み込む。
「歩けない者は俺が移動させます!歩行が可能人たちの 移動を手伝ってください!」
近くにいた人に声をかけ、救護人を移動させていく。
敵の討伐に夜嵐や焦凍が駆けつけたのがわかる。
だが、様子がおかしい。
攻撃の息も合ってないし。
むしろ、喧嘩してないか?
冷たい目、お互いに何か言い合いする姿。
それを表すように、風で焦凍の炎が流される。
しかも、それは先程戦線に立ち攻撃を受けた 真堂さんの方へ。
「なにしてんだ。血防壁!!」
巻き込まれそうになった真堂さんを緑谷が助けに入るのが見えたから、2人を守るように壁を作り すぐに回収する。
「何をしてんだよ!!」
「焦凍!!集中しろ!!!」
2人だけで抑えきれなかった敵がこちらに流れてくる。
「どいてろ。俺がやる。蛟!拘束は頼んだ」
「了解です」
真堂さんが地面を割り、そこへ落ちていく敵。
それを血縛で地面に縫い付ける。
「あれ、真堂さん動けないんじゃ…」
「まぁちょっとだいぶ末端まで痺れてるよね。音波も振動ってなわけで個性柄揺れには多少耐性あんだよ。そんな感じ騙し討ち狙ってたんだよね!それをあの一年二人がよォ!!」
急に乱れた口調。
じっと彼を見つめれば なんだよ とそっぽを向いた。
どうやら、あれが本性のようだ。
「緑谷!捕まえてるアイツら行動不能にしてくれるか」
「ごめん!まかせて!」
怪我人の避難を 終えて戦闘に視線を戻す。
ボロボロな焦凍の姿と制圧したはずのボスが 動き出すのが見えた。
「で?次は?」と敵が笑う。
次から次へと面倒くさい。
「二人から 離れてください!!!!」
「血縛!!!」
緑谷が蹴りを叩き込むのとほぼ同時に 敵の体を拘束した。
もう一発緑谷の攻撃が入れば形勢は変わるかもしれない、そんな時鳴り響いた音。
『配置された全ての救護者が危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程 終了となります』
終わった…のか。
きょろ、と辺りを見渡せば地面に倒れたままの焦凍が見える。
「焦凍!」
血を回収しながら、地面に倒れる彼に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「…すまない」
悔しそうな彼の表情。
何が喧嘩の原因かは わからないが。
おそらく先程話してた エンデヴァー関連のことだろう。
「…謝んな。すぐに、どうこうできることと できないことあんだろ」
「っだと、しても…」
「…後悔してるなら 変われ」
彼に肩を貸し、立たせる。
「…まだ。間に合うから」
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