生死のボーダーライン

「じゃあ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」

緑谷の謹慎が明け、行われた授業。
入ってきたのは3人の先輩。

「多忙な中都合を合わせてくれたんだ。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名。通称ビッグ3の皆だ」

ビッグ3。
1番左の人 なんかすごくオールマイト感。
体もがっしりしてるし…
けど、反対の男の人は 線が細い。

「じゃあ手短に自己紹介よろしいか?天喰から」

顔を上げた彼が こちらを一瞥する。
怖い顔したように見えたが、なんか違う。
あれ、怖がってる?緊張?
カタカタと震え始めた 肩。
そして、帰りたいと 背を向けてしまった。

「あ 聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね!不思議!」

にこにこと笑う真ん中の女の人。

「彼はノミの天喰環。それで、私が波動ねじれ。今日はインターンについてみんなにお話ししてほしいと頼まれて来ました。けどしかしねぇねぇところで!君はなんでマスクを?風邪?オシャレ?」

波動さんは急に障子に話しかける。

「あら あとあなた。轟くんだよね!?ね!?なんでそんなところを火傷したの!?芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの!?ね?峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうなるの?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?どの子も皆気になるところばかり!不思議」

彼女はノンストップで話しかけている。
てか、みんなの名前 覚えてるのか…?

「ねぇねぇ尾白くんは尻尾で体を支えられる?蛟くんもどうしてそんなに火傷してるの?ねぇねぇ答えて。気になるの」
「…合理性に欠くね?」

あ、相澤先生怒ってる。

「イレイザーヘッド 安心してください!大トリは俺なんだよね!前途ー!!?」

急に謎の掛け声。
そして、こちらに耳を傾ける。
シーンとした教室で、彼だけが笑ってる。

「多難ー!っつってね!よぉしツカミは大失敗だ」

彼はそう言って笑う。
うん、みんなして 変な人。

「まぁ何が何やらって顔してるよね。必修てわけでもないインターンの説明に突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね。1年から仮免取得…だよね。フム。今年の1年生ってすごく…元気があるよね。そうだねぇ何やらスベり倒してしまったようだし…君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

…もう、何が何だかよくわからない。
雄英も変な人多いんだな…。

そして 体操服に着替えて 体育館γへ。
天喰さんは また壁の方を向いている。

「ミリオ…やめた方がいい。形式的にこう言う具合でとても有意義ですと語るだけで充分だ。皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない」
「あ 聞いて。知ってる。昔 挫折しちゃって ヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ。知ってた!?大変だよねぇ通方ちゃんと考えないと辛いよ。これは辛いよー」

それだけの実力差があるってことなのだろう。
インターンの経験や三年間のスキルは俺たちが今まで敵と遭遇して得たものより 大きいってこと何だろな。
ザコに見えますか、と言う問いに 彼はうんと答えた。

「いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」
「おれ…「僕……行きます」意外な緑谷!!」

珍しい。
緑谷がそうやって前に出るの。

「問題児!いいね君やっぱり 元気があるなぁ!」
「近接隊は一斉に囲んだろぜ!よっしゃ先輩。そいじゃあご指導ぉーよろしくお願いしまーっす!!」

始まってすぐ 体を透けた洋服。
調節が難しくて、と服を履こうとした彼に緑谷の蹴り。
だがそれはすり抜けていった。
技も全てすり抜けて、彼は姿を消す。
そして、遠距離の個性を持つメンバーの後ろから現れた。

「おまえら。いい機会だしっかりもんでもらえ。その人 通形ミリオは俺の知る限り最もNo.1に近い男だぞ。プロも含めてな」

相澤先生の言葉。
No.1に近いか…

「おまえら行かないのか?興味ないわけじゃないんだろ?」
「俺は仮免とってないんで」
「じゃあ 蛟 お前は」

先生の言葉に首を傾げる。

「戦わなくても わかりますよ」
「は?」
「まぁ、こんな機会そうないだろうし、行きますけど」

だが、時間をかけて培ったものはどうやっても 覆せるものじゃない。
彼の個性はワープではないだろうな。
服までもすり抜けてしまうところを見ると。
そうなれば 恐らくすり抜ける系。
それを応用して ワープのような瞬間的な移動をしている。
その移動が地面に潜った時に起こってるから…

「質量的なものかなぁ…」

次々と殴られていくメンバー。
そして残るは、俺1人。
地面に沈み、消えた先輩の体。
俺だったらどこから来る?
後ろ?裏を取って前?…いや、後ろだ。

振り返る。
それと、ほぼ同タイミングで目の前に現れた彼。

「当たり…!」

俺の攻撃がすり抜けないタイミング。
それは、彼が俺に触れる瞬間。
皆腹パンされてるし、狙うのはそこだけ。

「ん!?」

お腹に当てられたパンチを服との隙間に入れた血で庇う。

「いいね!」

彼はまた 消える。
次はどこから…。
また、後ろか?
それとも 今度は前?

「けど、考えすぎだ!」

目の前に現れて、殴られたお腹。
衝撃で 膝をついた。


「とまァーこんな感じなんだよね!」
「わけもわからず全員腹パンされただけなんですが…」

皆お腹を抱えている。

「俺の個性 強かった?」

彼の問いにみんなが強すぎる、と声を上げた。

「私 知ってるよ。個性!ねぇねぇ言ってい?言ってい!?トーカ」
「波動さん。今はミリオの時間だ」
「そう!透過なんだよね!君たちがワープという移動は推察された通りその応用さ!」

ワープの原理は俺が思っていた通りだったが。
それをあの戦闘の中 正確に行っていたと考えると すごい。

「攻撃は全てスカせて自由に瞬時に動けるのね…やっぱりとても強い個性」
「いいや、強い個性にしたんだよね。発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね。同様に鼓膜は振動を網膜は光を透過する」

そんな状態で?
何も見えない。何もわからない。
それでも、正確に 現れる。

「簡単な動きにも いくつか工程が必要になる。だから、案の定俺は遅れだ!ビリっけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた。この個性で上に行くには遅れだけはとっちゃダメだった!予測!周囲よりも早く!時に欺く!何より予測が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!経験則から予測を立てる!」

予測。
予測ができても 俺の場合は何通かの道筋が出来てしまう。
その中から 絞っていたせいで さっきは反応が遅れた。

「長くなったけどコレが手合わせの理由!言葉よりも経験で伝えたかった!インターンにおいて我々はお客ではなく1人のサイドキック!プロとして扱われるんだよね!それはとてと恐ろしいよ!時には人の死にも立ち合う。けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の経験」

…ここまで言われればやはり 気持ちは固まる。
インターンに行きたい。

「俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ一年生!」

だが、行き先は?
職場体験先が普通って言うなら、エンデヴァーのところ?
…こんなのあるなら、もうちょい真面目に選ぶべきだったか。

とりあえず電話をかけた先、数回のコールで もしもしと腹立つ奴の声。

『珍しいな、どうした。血郷』
「あんたのとこで インターンってできるのか」

俺の問いに 彼は少し黙った。

『今は、忙しい。構ってやれんな。』

それは、そうか。
オールマイトの一件で 彼は最近忙しさを増しただろう。

「やっぱりそうか…」
『インターン、行きたいのか?ヒーローを目指す気はないと言っていただろ』
「話が変わってきたんだよ。今は 可能な限り最短ルートで ヒーローになりたい。だから、経験が欲しい」

彼は電話の向こうで満足そうに笑った。

『どんな経験が欲しい?』
「戦闘。最前線の。」
『…それなら、些細なもんでも 個性事件が多い繁華街に事務所構えたとこがいいだろう』

繁華街…

『戦闘といえ、周りの環境や相手の個性によって 得られるものは大きく変わる。それを一纏めに学びたいなら、それがいい』
「なるほどね…」
『体育祭、他にもスカウトが来てただろ?写真送れ。良さそうなところを選んでやる』

助かる、と一言伝え 電話を切ろうとすれば彼は俺の名前を呼んだ。

『怪我の具合は、もういいのか。忙しくて、見舞いには行けなかったが』
「火傷の跡は沢山残ってるけど、もう平気。それじゃ」

電話を切って、スカウトリストを送れば 10分後くらいに返事がきた。

「んー…相澤先生のとこ行くか」

職員室に行き相澤先生を呼べば 中に入ってこい と言われ彼の元へ。

「どうした?」
「インターン行きたいんですけど。エンデヴァーに、じゃなくて、エンデヴァーさんに 断られて」
「あぁ…なるほどな」

動くのが早いな、と彼は一言。
エンデヴァーから送られてきた一覧を彼に見せる。

「この中で 行けるとこ…ありますか」
「…どういうチョイスだ、これ」
「今欲しい経験を 得られるところで。エンデヴァーさんが選んでくれました」

相澤先生はそれに目を通してから天喰覚えてるか、と首を傾げた。

「今日来た先輩ですよね?」
「この大阪のファットガムってとこ。天喰が行ってるとこだ。お前にスカウト出してるくらいだし、頼めば話は聞いてくれるかもな。さっき話し合いがあって、インターンは実績が多い事務所に限るって 話になってな。他は正直、こっちとしては認められない」
「わかりました。じゃあ、ここダメだったら また考えます」

蛟、と彼は俺を呼ぶ。

「インターンに行けば、またお前は 戦いの中に身を置くことになるかもしれない」
「…はい」
「正直、俺としては お前を行かせたくはない」

彼は俺を心配してくれているんだろう。
ヒーロー殺しや神野での怪我。
彼には散々迷惑をかけているし。

「…それでも、俺は行きます。戦いの中でしか、生死のボーダーラインはわからないです」
「それで死んだらどうする」
「…片足くらいは突っ込むかもしれないけど、死にません。約束なので」

沈黙。
そして、溜息。

「なんでそう。頑固なんだよ、お前は」
「譲れないものが、あるからです」
「…いーよ、わかった。とりあえず、話通してこい」

くれぐれも気をつけるんだぞ、と念を押され 俺は笑った。

「明日、天喰先輩のところ 行ってみます」
「あぁ、」


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