救ってくれ。また、誰かを

それから数日後。
鋭児郎とファットガムに呼ばれた先に行こうとしていた。
いつもと違う集合場所なのが気になるが。

「あれ、緑谷?」
「あれ?二人も?」
「キグーだな!」

その後ろ 開いたドアから現れた 梅雨ちゃんと麗日。
駅まで一緒に行けば みんないつもと集合場所が違うらしい。
乗る電車も降りる場所も同じ。
ともなれば、俺たちの目的地は一緒なのだろう。
行った先には ビッグ3も揃っていた。

「これは…あ、相澤先生もいる」

先生は、こちらを一瞥して すぐ目を逸らした。

「あなた方に提供して頂いた情報のお陰で調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか。知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

よくわからないけど、俺たちまで呼ばれてるのは何でだろう。
事務所ごとに席に座り 話が進められていく。
下りてきたプロジェクターに投影された2人。
敵連合のトゥワイスと死穢八斎會の人らしい。
トゥワイスといえば、荼毘と戦った時にいた分列するやつだ。

時折 インターン組の質問で 話が止まるのに向かいの人は少し苛立っていた。

「雄英生とは言えガキがこの場にいるのはどうなんだ?話が進まねぇや」
「ぬかせ!この3人はスーパー重要参考人やぞ」

ノリがきつい、と項垂れる先輩に大丈夫ですよと声をかける。
ファットが声をかけられたのは薬物とかに詳しいから だそうだ。
そして、あの先日の話。

「今まで見たことない種類のモンが環に打ち込まれた!個性を壊す クスリ」

ファットが飴玉を握り潰した。
幸いにも先輩は次の日には個性を取り戻したそうだが。

「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねぇ」
「いえ…その辺りはイレイザーヘッドから」
「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺は個性を攻撃しているわけじゃないので」

話をまとめれば、あのクスリは個性因子そのものにダメージを与えるもの。
それを停止させる相澤先生とは 中身が違うらしい。

「その撃ち込まれたモノの解析は?」
「環の身体は個性だけが攻撃され、他には異常なし。撃った連中もダンマリ!銃はバラバラ。ただ、蛟くんが血防壁で撃たれた弾を回収してくれたお陰で まんまのサンプルが手に入ったっちゅーわけや!」

お手柄だね、という言葉にとりあえず笑っておく。

「そして中身を調べた結果。ムッチャ気色悪いモンが出てきた…人の血ィや細胞が入っとった」

やっぱりか。

「ちなみに、蛟くんが言うに 環に撃たれた弾もそれと同様の血液の匂いがするそうや」
「つまりその効果は人由来…個性ってこと?個性による個性破壊…」

緑谷の顔色が一気に悪くなった。
なにか、思い当たる節でもあるのか?

流通経路の中に八斎會がいるようだが。
この件はなぜ、そこまで八斎會にこだわっているのかという質問が出て。
その答えが 若頭の個性 オーバーホールによるものらしい。
その個性は分解 修復が 可能なもの。
そして 若頭には出生届のない娘がいる。
しかも、手足に包帯が巻かれた…

「その娘さんの身体を銃弾にして 捌いてるってことですか」

俺の言葉で静まり返った室内。
なるほど、ね。
緑谷はその子に一度会っているから、悔やんでいるのか。

「今度こそ エリちゃんを…!」
「「保護する」」
「それが私たちの目的になります」

どこにその娘がいるのかを探るところから 始まるというこの作戦。
早く助けたい気持ちと100%に可能性を近づけてなければという 意見がぶつかっていた。
話し合いがヒートアップするなか、先生が手を挙げる。

「どういう性能かは存じませんがサー・ナイトアイ。未来を予知できるなら俺たちの行く末を見ればいいんじゃないですか。このままでは少々…合理性に欠ける」
「それは出来ない」

彼はそう答えた。
予知は一日1時間の間に1人しか見ることができないらしい。
それだけでも充分なのでは、という言葉に 彼は悲しそうな顔をした。

「例えばその人物に近い将来。死。ただ無慈悲な死が待っていたらどうします」

俺を見てみろ、という言葉も彼は聞かず だめだと一蹴した。
大切な人の死でも、予知してしまったんだろう。
回避できない 覆せない 無慈悲な死を。





話し合いが終わり 外へ出た俺たちに緑谷が話してくれたエリちゃんと接触したときのこと。
救えなかったことを悔やんでいるんだろう。

「通夜でもしてんのか」
「先生!」
「あ 学外ではイレイザーヘッドで通せ。いやァしかし、今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだなぁ」

今更なんで?と鋭児郎が驚く。

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ。話は変わってくる。ただなァ緑谷。お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ。喧嘩したしな」

信頼?
なんの話だ…?

「残念なことにここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと俺は確信してしまった」

相澤先生…じゃなくて、イレイザーはそう言って緑谷の前にしゃがみこむ。

「俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう 緑谷。わかったか、問題児」

トンっも拳を先生は緑谷の胸にぶつける。

「ミリオ顔を上げてくれ」
「ねぇ私知ってるの。ねぇ通形。後悔して落ち込んでてもね 仕方ないんだよ!知ってた!?」
「…ああ」

連合が関わっている。
しかも、俺に限って言えば荼毘と接触してまた迎えにくると 言われている。

「気休めを言う。掴み損ねたその手はエリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない。前向いていこう」
「はい」

他のメンバーはどうしたい?という言葉にみんなは迷わず 参加の意思を伝えた。
ただ1人、俺だけを除いて。

「蛟?」
「血郷?」

視線が俺に集まる。
俺も迷わず行くと思ったんだろう。
助けを待つ人がいるなら助けに行く。
それがヒーローであるはず。
わかってはいる。
そう答えるのが 普通 なのだと。

「イレイザーヘッド、2人で話せますか」
「…わかった」

インターン生は前線に出るかもわからない。
それでも、いい経験を得られることは間違いない。
だが。

人がいないとこまで 2人で移動して、彼を見る。

「俺は、参加して いいんですか」

前線にいようが サポートでいようが。
大規模な案件。
隙は出来る。
本当に連合の接触はないのか?
それに、周りを人質に取られれば俺は 彼らについていかざるを得ない。
この、ピアスと一緒で。

「出来るなら、したいですけど。連合が関わっているなら…」
「珍しいな」

彼が笑った。

「俺…荼毘と、接触しました」
「、は?」
「また。迎えにくると 言われています。入院中も、花を持って来ていたのは…あいつです」

言わないつもりでいたが、仕方ない。
これを言わずに参加するのは 無理だ。

「…おそらく、連合は 俺を諦めてはいないです。迎え入れる準備を進めてる」
「そういうことか」

沈黙。
そして、彼は乱暴に俺の髪をかき混ぜた。

「先生の立場から正直言おう。来るな」

やっぱりか。

「それが本心だ。お前を また攫われるわけにはいかない。だけど、」
「だけど?」
「イレイザーヘッドとして 言うなら。お前は必要だ。今回の作戦に回復系の個性はいない。案件が片付くまで リカバリーガールを近くに置くことも救急車を呼ぶこともできない」

そうなったら、お前の個性は必要だと 彼は言う。

「けど、血を止めるだけです」
「だとしてもだ。それだけでも、救えるものは増えるんだ。お前が、俺を救ったように」

彼の手が 頬に触れた。

「…お前は、攫わせやしない。だから 来い。」
「はい」
「救ってくれ。また、誰かを」

優しい笑顔だった。
安心させるように頬を撫でて、彼はそっと手を離す。

「ただ、約束しろ。次連合と接触したら、すぐに言え。隠すな。いいな!?」
「…はい」
「そこはしっかりと、反省してくれ」


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