決行

深夜。
携帯を片手に集まった5人。

「来たか!?」
「うん…」

決行日が、決まった。

心の中が妙にざわつく。
嫌な気分だった。

朝 8:00
警察署前に集合した 沢山の警察やヒーローたち。
本当に大規模だな。

イレイザーヘッドは 緑谷を見ておくために ナイトアイ事務所と行動を共にするらしい。

「ブラッディ」
「はい」
「今回は、絶対に顔を明かすな」

イレイザーはそう言って俺にフードを被せ、ガスマスクをつけさせた。

「お前は今回はファットガムのとこと 動くことになる予定だが、可能な限り俺のそばにいろ。ファットにもそういう動きをするとは伝えてある」
「わかりました」
「…あと、中に入ったら可能な限り 戦闘に個性は使うな」

今日はサポートに徹します、と答えれば彼は満足そうに笑った。


8:30 決行。
チャイムを押した瞬間 ドアが吹き飛び 警察が吹き飛ばされる。

「助けます!」

一言そう声をかけ、吹き飛ばされた人たちを全員 地面に下ろす。
言ったそばから、個性使っちゃった…
まぁ、これくらいならいいか。

「なんなんですかァ朝から大人数でぇ」
「離れて」
「何の用ですかァ」

彼はリューキュウ事務所で対処しますと、龍になったヒーローが言った。

「ようわからん!もう入って!行け行け!」

ファットにいわれ、皆中へとなだれ込む。

「梅雨ちゃん 麗日!」
「頑張ろうな!」
「また後で!!」

中は沢山の人が待ち受けていた。
だが、幹部の姿はない。
隠し扉を開け、待ち構えていた敵をナイトアイ事務所のヒーローが押さえ込み、中へと入る。

入ったすぐに俺は眉をしかめた。
ガスマスクをしておいてよかった。
ここは、むせ返るほどの血の匂いが充満している。

降りた先の行き止まりの壁を 緑谷と鋭児郎が破壊して先へ進もうとした時。
地面がグニャリと歪み始めた。
ルミリオンだけ個性を使い進む中、俺たちは一階層下に落とされた。
そこに待ち受ける3人の敵。
戦おうとしたファットを先輩が制した。

「こんな時間稼ぎ要員 俺1人で充分だ」

先輩からは 聞いたことのない 自信のある言葉。

「スピード勝負なら1秒でも無駄にできない!イレイザー筆頭にプロの個性はこの先に取っておくべきだ。ファットガム!俺なら、一人で三人完封できる!」

普段の彼からは想像も出来ない言葉。
だが、彼とてビッグ3の1人なのだから。
決しておかしなことはない。

残ろうとした人たちを連れて、ファットが走り出す。
イレイザーが全員の個性を止めてから そのあとへと続いた。

「皆さん!!ミリオを頼むよ!あいつは…絶対無理するから。助けてやってくれ」





「ブラッディ」

イレイザーが俺を手招く。

「なんです?」
「調子悪いか」

俺があまり喋らないからだろうか。
彼は少しだけ心配そうに 俺を見た。

「大丈夫ですよ。ただ、ちょっと。血生臭いなってだけで」

心配そうな彼の目から、視線を逸らした。
大丈夫、これは…ただ嫌な予感がしてるだけだから。

少し進み、イレイザーを分断させようとしたのか 彼だけを壁から出た手が攫っていった。
それを、ファットと鋭児郎が庇い 別の道へ。

少しずつ 人数を削っていく気か…。
大勢相手よりも、潰しやすいってことか?

ロックロックが壁を固定しつつ、緑谷が道を作っていく。
建物を操る本体が現れないから、イレイザーも個性を消せないでいる。

「埒があかない…」

そんな時急に開けた道。
そして、すぐに道が閉ざされる。

別の場所に 1人だけ分断されたロックロック。

こうやって1人ずつ切り離して行く気か?
そうなれば、個性を使わないなんて言っていられなくなる…。

壁の向こうから聞こえてた彼の声が途絶える。
いま、敵連合って言わなかったか?

壁をぶち破って そちらへ行けば倒れた彼の姿とその傍らに立つロックロック。

「ニセモノが急に現れて襲ってきやがった!気をつけろ!新手だ!まだどこかに!」

イレイザーが倒れたロックロックに近づき、もう一人がこちらに歩いてくる。

「緑谷 蛟 そっちは大丈夫か」

この人 こんなこと言うわけない。
ずっと学生を目の敵にするような態度を取っていたではないか。
心配なんて、ガラじゃない。

「下がれ緑谷!」
「わっ!」

目の前に作った壁。
そして、壁を崩せば嬉しそうに笑う女の子。

「トガヒミコ!」
「トガ!そうだよトガです!覚えててくれた!!わああまた会えるなんて嬉しい!嬉しいな出久くん!」

彼女はそう言って、もう一度距離を詰めてくる。

「血郷くん!今日はお顔隠してるの?血まみれじゃないの?また見せてよ血まみれなお顔!みんな待ってるよ!」

伸ばされた手を避ければイレイザーの捕縛帯がトガを捕まえる。

「ここまでだ!」

だが、その捕縛帯を上手に使い位置を反転させ イレイザーの背中を刺した。
そして、着地したトガの前に新しい壁。

何が不仲だ。
完全にお仲間じゃないか。

「イレイザー!」

俺と緑谷が先生に駆け寄る。

「俺は大丈夫だ。それよりロックロックの止血を。あとナイフを拾っておけ。トガは血を使うらしい」

倒れている ロックロックに歩み寄ってお腹と手の傷口に手を当てる。
傷は深いが、内臓は大丈夫そうだ。

「ロックロックは、大丈夫そうか」
「問題ないです。内臓は、避けてる」
「…そうか」

よし、血は止まった。
痛みもあるだろうし、動けばすぐに開く。
このまま動かさない方が得策だ。

「次、イレイザー」
「俺は浅いからいい。無茶するな」
「大丈夫です。ちゃんと、訓練してます」

これは誰も内緒でやっていた訓練。
リカバリーガールにお願いして、生徒の怪我の止血をずっとやらせてもらっていた。
いかに 頭に負担をかけずに 早く 終わらせるか。

「お前、いつの間に…そんなこと、」
「リカバリーガールに 頼んだんです。練習させてほしいって」
「…お前、本当に…」

溜息をつく彼にごめんなさい、と呟いた。
イレイザーの傷に触れて、血を固めていく。

「閉じました。動かし過ぎれば、開くので気をつけてください」
「ありがとう」

治療を終えたのとほぼ同時に、声と共に壁が脈打ちだす。

「ロックロックは俺が!イレイザーは本体を探してください!」

血で彼を包み込み浮かす。
声が色んなところ響いて、所在がわからない。
そして、もう一度聞こえた声。

「緑谷、上だ!」
「わかった!!」

天井へ蹴りを入れ、やっと姿を現した本体。
それを血で受け止め、地面に降ろした。

「どうやら…使われてしまったようだな…」

迷宮が終わり、やっと合流できたサー・ナイトアイが呟いた。
生き迷宮は終わったが、薬が切れた彼にはもう戻せないらしい。

「しかしまだトガとトゥワイス…敵連合がどこかに潜んでいるはず!」
「トガ…トゥワイス…許さねぇ!!裏切りやがってぇ!」
「他のメンバーはどこにいる」

知るか!!と彼は吠えた。

「ここにいるのは二人のみ…ということか」

荼毘は、いないのか…

意識を取り戻したロックロックが傷を抑えながら俺たちに言った。

「なーにを立ち話してんだ!!」
「ロックロック…」
「無視して進め!連合の方は警察に任せりゃいい!俺たちの最優先事項はなんだよ!?」

俺がここに残る。
わかったらとっとと足動かせ と彼は言った。

「必ず助けだします!ロックロック!」
「言ったな…!?必ずだぞ!デク!」

走り出そうとした彼らを追おうとして 足を止める。

「お前も行け、ブラッディ」
「血は止めました。けど、薄っぺらい瘡蓋です。動けば、開きます」
「わかった。さっさと、行け」

その先に。
見えたのはボロボロな通形先輩とボロボロの治崎。
そして、3人の側近。
これだけの人数を一人で…

「ナイトアイ!確保を!!」
「後…ろに います…」

ボロボロなルミリオンとエリちゃんをサー・ナイトアイが抱きしめる。

「凄いぞ…凄いぞ…ミリオ」
「ルミリオンがここまで追い詰めた!このままたみかけろ!」

その言葉をイレイザーが叫んだ瞬間。

「いい加減…起きろ クロノォ!!」
「イレイザー!!」

後ろから叫んだ声。
イレイザーが緑谷を吹き飛ばし、一人攻撃を受けた。
あれは確か…クロノスタシス。

「全て 無駄だ!!」

地面から突き上げてきた棘。
先生の方へ飛び込み、それを間一髪のところで避ける。

「おや。君も一緒に、来たんですね」

倒れるイレイザーと、それの上に馬乗りになるクロノ。
ふつり、と血が体の中で粟立つ。

「貴方は、殺しはしませんよ。見つけたら生きて連合に差し出す、約束ですからね」

クロノはそう言って、笑った気がした。


戻る

TOP