USJ
昼休みを終えて 皆が待ちわびヒーロー基礎学。
この時間になるとみんなのテンションが少しだけ高くなる気がする。
「今日のヒーロー基礎学だが 俺とオールマイト そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
なった…?
急な変更とか?
「災害水難なんでもござれ。人命救助訓練を行う」
コスチュームの着用は各自の判断でと指示が出て、各自着替えを済ませてバスの止まっているところに移動した。
委員長になった飯田がテキパキと指示を出しながら、バスに乗り込む。
空いてる席は、、爆豪の隣か。
「隣、座るね」
一言声をかければ、何故か睨まれた。
前も睨まれたけど、なんなんだろう。
バスの中でも テンションが高いのかみんな騒がしい。
「お前のそーいうスカした態度気にいらねぇ」
多分俺にだけ聞こえるくらいの声だった。
隣に座る彼からの言葉に 俺は彼の方を見る。
「なんだよ」
「どういう態度でいてほしいの?」
「あ?」
教えてくれたらそうするよ、と言えば舌打ちをされた。
なんでこんなに怒ってるんだろう。
いや、焦りを隠すための怒りなのかもしれない。
「逆に、俺も聞いていい?」
返事はない。
「君は何をそんなに焦ってるの?何がそんなに、怖いの?」
彼が目を見開いて俺に掴みかかろうとした時 相澤先生の言葉で みんなが静まりかえる。
「自分は誰にも負けないって思っているなら、堂々としていればいいのに。怒りで誤魔化すから、弱者に見えるんだよ」
俺に何か言いたげだったが、この空気では無理と判断したのか舌打ちをして窓の外に彼は視線を投げた。
バスが止まり、降りた先には宇宙服のようなものを着た人。
人なのかは、定かではないが。
「水難事故、土砂災害、火事…etc。あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も ウソの災害や事故ルーム!」
相澤先生はキョロキョロと周りを見渡したが、「仕方ない。始めるか」と宇宙服さん…ではなく13号先生にそう声をかけた。
「えー始める前にお小言を1つ2つ…3つ…4つ…」
多いな。
増えてくし、、
「皆さんご存知だとは思いますがぼくのこせいはブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
「ええ…しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう個性がいるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください」
いきすぎた個性、ねぇ。
確かに、間違いはない。
俺も、今 この場で。人を殺せと言われれば 殺すことができる。
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転!人命の為に個性をどう活用するか学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな」
話。長いな。
ご静聴ありがとうございましたと頭を下げた先生に 拍手する生徒。
「ん?」
だが、それよりもざわりと体の中の血が騒いだ。
「一かたまりになって動くな!」
相澤先生の焦った声。
「13号!生徒を守れ!」
広場の方から湧き出てくる 人。人。人。
「なんだアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!あれは 敵だ!!!」
先生がゴーグルをつけて、飛び出す。
なんだろ。
この 血が騒ぐ感じ。
この感情の名前を 俺は知らない。
「先生!侵入者用センサーは!?」
「もちろんありますが…」
まぁ、センサーが反応していないとこを見ると何かしらの個性が妨害しているんだろうな。
前回の校門の破壊も彼らがしたのだとしたら、焦凍がいうように用意周到に画策された奇襲なのだろう。
先生が戦っているうちに避難を、と促されるがなぜか自分の足は動かない。
というより、目が 離せない。
敵の中心にいる 手で顔を隠した彼から。
「だれ…?」
「おい、血郷。避難だ」
肩を掴んだ焦凍が無理やり俺を引き寄せた。
それでも、視線は 彼から 外すことができなかった。
「避難はさせませんよ」
生徒たちの前に現れたら黒いもや。
「初めまして。我々は敵連合。せんえつながらテンションこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴 オールマイトに生き絶えて頂きたいと思ってのことでして。」
オールマイトを殺すことが目的、か。
「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはずですが、何か変更あったのでしょうか。まぁらそれとは関係なく 私の役目は これ」
もやが大きく動く直前、殴りかかった爆豪と鋭児郎。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」
「危ない危ない…。そう、生徒といえど優秀な金の卵。…散らして、嬲り、殺す」
一瞬だった。
黒いもやが生徒を包み込むのは。
「ここは……」
着いた先は恐らく火災ゾーン。
至る所で炎がゆらゆらと揺れている。
何かと炎には縁があるのだろうか。
まぁけど、これくらいの炎なら大丈夫だ。
敵の数はざっと10名前後か。
「蛟!」
「あれ?尾白か」
「どうする?」
彼の問いかけに首を傾げる。
「どうするって?」
「逃げて 隠れるか…それとも、」
彼が敵に視線を向ける。
「ここ 訓練施設内だし、訓練の時間内だから 個性は使っていいの?」
「え?あ、まぁ、、多分」
「じゃあ、倒せばいいんじゃないかな」
あの場に戻りたい。
俺はもう一度、彼に 会いたい。
湧き上がる血が それを望んでいる気がした。
「尾白は近接戦闘タイプだったよね?」
「あ、うん」
「見える範囲にいる敵は俺が相手するから 隠れてる敵とかいたら 任せていい?」
▽
蛟の個性は血を操ること。
前の訓練では 刀を創り出して戦っていたのに、全員の相手をするってどうやって?
と、いうより。
敵を目の前にして、どうしてこんなに落ち着いているんだ。
「こそこそ作戦会議は終わったかぁ!?」
敵がこちらに向かってくるのを 蛟は微動だにせず見つめ、そして クスクスと笑った。
「終わったのは、お前らだよ」
「なんだと!?」
ガクッと動きを止めた敵。
そして、急に地面に倒れこんだ。
なんだこれ、と暴れる敵が赤黒い紐のようなもので地面に縫い付けられていた。
ほかの敵も同じように、壁やら木に縫い付けられている。
これだけの人数をこんなに簡単に?
「尾白ー、敵は殺しちゃいけないんだっけ?」
「あ、うん。できれば、、」
「どこまでなら許されるの?てか、どーしておくのが正解??」
動けなくして 拘束しておくのがいいと思う、と答えれば彼はなるほどね、と笑った。
なんだろ。
蛟って、なんか変だ。
「殺しちゃダメなんだって。難しいね」
腰のポーチから新しい瓶を出した彼は敵の前にしゃがみこむ。
「ねぇねぇ、お兄さんは 血液型 何型?」
「は?」
「他のお仲間さんは何型かな?同じだといいねぇ」
拘束した敵に話しかけながら、新しく出てきた瓶の中身がふわふわと漂い、他の敵の方へ近づいていく。
「な、なんだこれ!!」
暴れてそれから逃れようとする敵の顔を血の紐が固定した。
敵と話している蛟を影から襲おうとする奴を倒しながらも、彼の方に意識が行く。
「まぁ、いいや。人じゃない奴らには 興味ないし」
パンッと血の球が弾け、敵が悲鳴をあげる。
そして、少しして 人形のように体から力が抜け 静かになった。
「もういない?」
蛟がこちらを振り返り、首を傾げる。
「あ、うん。こっち、2人気絶させてある」
「そっか、ありがとう」
蛟は地面に縫い付けた敵をまるで、地面かのように踏み付けてこちらに歩み寄ってくる。
「さっき、、何したの」
「ん?これ?」
黒いキャップの瓶を開けて、俺が倒した敵に一滴 血を垂らした。
「ちょっと刺激の強い 睡眠薬」
敵の顔に落ちた血は、じわじわと傷口に吸い込まれていく。
「俺の血に色々混ぜて作ったやつ。操ってるのは俺だけど、体内に入ってしまえば あとは相手の体の中の血流に任せてる。刺激が強くしてあるのは 攻撃にも使えるかな?っていうだけ」
さてと、と蛟が立ち上がり 敵を地面に縫い付けていた血を 瓶の中に回収し始める。
「これの欠点は一旦使うと回収できないところだよねぇ」
「なんで、轟との時は刀で戦ったんだ?」
「身内にこんなことしちゃダメでしょ?」
これ、副作用あるから と蛟は笑った。
「副作用って?」
「血液って拒絶反応あるじゃん?ごく少量だけど、拒絶反応が起こることもあるんだよね」
まぁ、今の医療なら助かるけどねと言って彼は歩き始める。
「蛟って、」
「うん?」
「接近戦とか…そんなに得意じゃないの?」
俺のその言葉にどうして?と首を傾げる。
「戦い方がなんか、隠密行動っぽくて」
「個人的にそういうのの方が好きかな。正面切って戦うより俺の個性では有効だし」
「たしかに」
夜とか、暗闇の中で 離れた場所からでも拘束したり攻撃できるって考えたら すごい個性だな。
けど、拓けた土地で1対1 の接近戦をする場合の 戦い方を見てみたい。
「じゃあ、俺はさっきのところに戻るけど、尾白はどうする?」
「俺は他のエリアを見てくるよ。みんなも心配だし」
「了解」
蛟の背を見送り、近くのエリアへ俺も向かった。
だが、ふと 気づく。
「……あれ?」
なんか、変だと思ったんだ。
あいつ、この炎の中 暑くないのか?
戦闘中も まるで火のことなんて気にしてなかったよな、、?
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