知っている

「オールマイトがいる…」

いつの間に来たんだろ。
まぁ、オールマイトがいればなんとか なるだろう。

「…なんか、凄い血の匂い」

誰の?
匂いの元を探せば、視界に入ったぐったりとした相澤先生。
それを蛙吹さんと峰田で背負っていた。
敵にバレないようにそちらに走って行けば2人が俺に気づいた。

「蛙吹さん。代わるよ」
「蛟くん!」

先生を背負って、敵に見えにくいところまで移動して横に寝かせる。

「意識は?」

俺の問いに彼女は首を横に振った。

怪我は両腕と顔か、、
出血も多いし 放っておけば手遅れにもなるだろう。

「先生、ごめんなさい」

手についた彼の血を舐めとって彼の額に手を当てる。

恐らく顔も腕も骨は折れてる。
それは、俺にはどうすることもできないけど、せめて出血だけでも止めないと。

「先生 頭を打ったりとか してた?」
「打ったというより、叩きつけられてて…」
「わかった」

…頭蓋骨内に出血は…あ、ここは。くも膜下出血を起こしかけてる。
時間は、ないから 仕方ない。
広がり始める血を血管に戻して、血管を修復させる。
こんなことしたのバレたら 色々やばいだろうけど 仕方ない。
腕の出血も止まり 少しずつ瘡蓋になっていく。

「血が…」

それを見ていた蛙吹さんがじっと俺を見た。

「みんなには 内緒だよ」

笑って、そう伝えれば彼女はこくこくと頷いた。





「平和の象徴はテメェら如きに殺れねぇよ」

敵と戦っていたオールマイトの助けに入った焦凍、鋭児郎、爆豪、緑谷の4人。
爆豪は黒もやの敵を取り押さえていた。

「動くなよ。怪しい動きをした、と俺が判断したらすぐ爆破する」
「ヒーローらしからぬ言動…」
「攻略された上にほぼ無傷…すごいなぁ最近の子供は。恥ずかしくなってくるぜ敵連合…」

手の男がボソボソと喋る声が、ここまでギリギリ聴こえてくる。

声に、聞き覚えはない。
けどなんだろう。
俺はあの人を 知っている、気がする。

「脳無。爆破小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」

彼の指示で脳を出した黒い人?が焦凍の氷を破り動き出す。
体が割れているのにも動き出したそれは、みるみるうちに再生していく。
そして、爆豪に一気に距離を詰め殴りかかった。
吹き飛んだ爆豪と、砂煙の中咳をしながら立っているオールマイト。

「これ…」
「どうしたの?」

この、血の匂い。
知ってる。
保健室にいた、ヨボヨボな男の人だ。
あれが、オールマイトってことか?
兄弟であっても、親子であっても血は微かに匂いが違う。
血を操る俺だからこそ判別できる 微細な違いではあるが。
間違いない、あの匂いは 同じだ。

「加減を知らんのか…」
「仲間を助けるためさ仕方ないだろ?さっきだってホラそこの…あー地味なやつ。あいつが俺に思いっ切り殴りかかろうとしたぜ?他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー?」

彼は、まるで演説しているみたいに 誰かを説き伏せるみたいに一人 話を続けた。

「俺はオールマイト。怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まる。この世の中に!
何が平和の象徴!所詮抑圧のための暴力装置だ おまえは!暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ!」
「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の目は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘吐きめ」
「バレるの 早…」

確かに。
ヒーローは誰かを守るもの。
けど、誰かを守って戦う敵は 敵なのか?
ヒーローが殴る一発と敵が殴る一発。
そこの差を誰が作ったんだろう?

戦おうとする焦凍たちをオールマイトが止めた。

「大丈夫!プロの本気を見ていなさい!」

オールマイトは脳無と呼ばれた黒いやつと真正面から 殴り合いをし始めた。

「凄い、スピード…」
「無効ではなく吸収ならば!!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えるなら!さらに上からねじふせよう!」

オールマイトの血の匂いが 強くなる。
体が限界なのか?

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵よ こんな言葉を知ってるか!? Plus Ultra!!」

ガラス張りのドームを突き破り、吹き飛んだ敵。
ショック吸収をないものにした。
だが、砂煙の中 血の匂いは一層強くなっていた。

「さてと敵。お互い早めに決着つけたいね」
「チートが…。全然弱ってないじゃないか!!あいつ俺に嘘を教えたのか!?」
「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが、できるものならしてみろよ!」

手の奴が、一歩後ろに下がった。

「脳無さえいれば!奴なら何も感じずに立ち向かえるのに!」
「死柄木弔…落ち着いください。よく見れば脳無に受けたダメージは確実に表れている」

首をがりがりと掻き毟る弔と 呼ばれた手の男。
それを諭すように 黒もやが声をかけた。

相澤先生から手を離して、ポーチの中の瓶の蓋を開ける。

「やるっきゃないぜ…目の前にラスボスがいるんだもの…」

弔が動き出そうとする コンマ数秒前。
緑谷が地面を蹴って飛び出した。

「オールマイトから離れろ!!」

殴りかかった緑谷の頭上に現れた ワープしてきた手。
そこに突き刺さった銃弾。

「ごめんよ皆。おそくなったね」
「すぐ動ける者をかき集めて来た」
「1-Aクラス委員長 飯田天哉 ただいま戻りました!!」

ずらりと並んだヒーロー達。

「あーあ 来ちゃったな…ゲームオーバーだ。帰って出直すか 黒霧…」

もやの中に逃げようとする彼に降り注ぐ銃弾。
それが何発か彼に当たった。
飛び散る血を 操った血液でわずかに掬い上げて、自分の手元に戻した。
多分、先生達にも バレていない。

「今度は殺すぞ 平和の象徴 オールマイト」

もやに飲み込まれて消えた敵。
自分の血の中に混ざる 弔 と呼ばれた彼の血を分離させて 手のひらに落とす。
それを舐めて、あぁやっぱりと一人項垂れた。

「やっぱり、」
「相澤先生!!」

駆けつけたヒーロー達が相澤先生に駆け寄る。

「救急車に!早く!」
「君たち生徒はあっちに、集まって」
「はい」

蛙吹さんが行こう、と俺の手を引く。

「先生はきっと大丈夫よ」
「そうだね」

あの男を。
弔と呼ばれた彼を、俺は知っている。
いつかも、どこでかも わからない。
けど、この血の味を 俺は間違いなく 知っていた。





「よし、両足重傷の彼を除いて…ほぼ全員無事か」

刑事さんが集まった生徒たちを見ながら 言った。
緑谷は戦うたびに どこかしら負傷している気がする。

「とりあえず生徒らは教室に戻ってもらおう。すぐに事情聴取ってわけにもいかんだろう。」
「相澤先生は…」
「両腕粉砕骨折 顔面骨折…幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ、眼窩底骨が粉々になってまして…目に何かしらの後遺症が残る可能性もあります。…だそうだ」

良かった。
脳の損傷は ない。

「13号の方は裂傷は酷いが命に別状はなし。オールマイトも同じく。彼に関してはリカバリーガールの治癒で充分処置可能とのことで保健室へ」
「デクくんは!?」
「ああ、、彼も保健室で間に合うそうだ。私も保健室の方に用がある。三茶 後頼んだぞ」

刑事さんが猫の顔の刑事にそう伝えて、移動していく。

「良かったね、蛟くん」
「そうだね蛙吹さん」
「梅雨ちゃんと呼んで」

彼女のその言葉に首を傾げたが、すぐに頷いた。

「さっきのはみんなには内緒だよ、梅雨ちゃん」
「わかったわ、蛟くん」


戻る

TOP