「おはよう」
「翔か、おはよう」
「…なんか、楽しそうだな」

翔の言葉に首を傾げる。

「そう?」
「あぁ…なんか、昨日と別人…つーか…」
「あぁ、今楽器弾いてないから。楽器弾く時はいつもあんなんだよ」

笑って言うと、翔がえ?と固まった。

「まぁ、気にしないで。あ、あと…お弁当美味しいって言ってくれたからかな…うん」
「…お弁当?昨日、ドラム弾きながら言ってたよな?」
「ん?うん、聞いてたんだ」


****


礫は少し照れたように笑った。
…そんな顔、初めて見た。
誰が礫に、そんな顔させてんの?

日向先生に言われてから、分かった。
俺、礫が好きなんだよ…
だから、他の奴のこと考えて…んな顔すんなよ…

「それ、恋人?」
「違うよ。だからさ、ここ恋愛禁止だろ?」

礫は椅子に座って、俺を見上げる。
見上げられるのはなんか、新鮮だった。

「翔を見上げるとか、新鮮だな…」
「話、そらすなよ…。俺も思ったけど」
「お弁当のこと?別に好きなわけじゃない。ただ、大切な人ってだけだな」

俺は?…俺は、大切じゃない?
あー、なんでこんな女々しいこと考えてんだよ俺…

「翔も、大切だから。そんな泣きそうな顔すんなって」
「べ、別に…泣きそうになんか…」
「嘘つかなくて、いいよ」

頬を礫の細い指が撫でる。

「翔は、大切な人だから」
「俺は…「おら、席につけー」……なんでもない」

俺、なんて言おうとした?
…最近、俺変だ…


****


学校が終わって、急いで家に帰る。
今日は日向サンが帰ってきたから少し奮発してみた。

「ん、完璧だな…蘭丸さんに、届けに行こう」

いつも通り隣の部屋に持っていく。

「蘭丸さーん、いますかー?」
「いるぜ?」
「ご飯、持ってきましたよー」

中に入ると蘭丸さんがベースの手入れをしていた。
蘭丸さんって会うたびいつも、ベースに触れてる気がする。

「今日、日向サンが帰ってきたのでちょっと奮発してみた」
「おっ!!肉だ!!」
「ちょっと、ステーキのお肉が安かったんで」

蘭丸さんの目が輝いた。
うん、可愛い…

「そういや、礫…今週の土曜暇か?」
「ん?暇ですよ。どーしてですか?」
「買い物行くんだけどよ、付き合ってくれね?服とか買いたいんだけど」
「いいですよ、暇だし…俺も服買いたいし」

蘭丸さんが、よかったと笑って俺の頭を撫でた。

「じゃあ、楽しみにしてます。」
「おう、俺のお気に入りの店案内してやるから」
「はいっ、じゃあまた」

部屋に帰ってすぐ、日向サンが帰ってきた。

「おかえり、日向サン」
「ただいま。ん、いい匂いだな」
「ちょっと奮発した。ほら、スーツ脱いで?」

スープを温めて机に置く。

「はい、食べていいよー」
「いただきます。お、美味いな」
「でしょ?これからは、俺が作るから。日向サン忙しいし」
「礫がいいなら、いいけど…」

やっぱり、日向サンがいると落ち着く。
けどやっぱり、疲れが顔に出てる…

「日向サン、お疲れだね…」
「まぁ、な…アクションはやっぱり疲れる」
「そっか…マッサージしてあげようか?」
「気を遣わなくていいぜ?礫といれるだけで安心するから」

食事が終わって、食器を洗っているとソファに座っている日向サンに手招きされた。

「どうしたの?」
「…隣、座ってくれるか?」

隣に座ると強く抱きしめられた。

「どうしたの?」
「…会いたかった…お前と連絡取れなくて…スゲェ心配した…」
「ごめん…けど、俺平気だよ?こうやって、触れられてるじゃん?」

背中に手を回して、ポンポンと背中を叩く。

「今日の日向サン、甘えただね?」
「…お前がさ、段々仕事するようになって…遠くなりそうで…なんか、嫌だ」
「何それ…まぁ、心配ないよ。俺はここにいるから…てか、ここしか帰る場所ないから」

いつまで、ここに帰ってこられるかわからないけど…なんて言ったら心配しそうだから言わない。

「日向サン、ほら。もう離して?食器洗わないと」
「もう少し、だけ…頼む…」

…日向サンらしくない。
なんでだろ?
何かあったのかな?

「……無理、しないでね。お疲れ様」





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