最近、トキヤの様子がおかしい。
疲れてるってのもあるし…足を引きずっている。

「トキヤ、足どうしたの?」
「え?あぁ…えっと…怪我してしまって…」
「大丈夫か?ライブ近いんだろ?」
「私は平気です。礫には…関係ないです…」

…冷たいなぁ…
まぁ、こないだのがいけなかったんだろうけど…

「そうだよな、俺には関係ないよな…」
「すいません…」
「いいよ、無理しないで」

微笑んでそう言うと、トキヤも弱々しく微笑んだ。

「トキヤ」
「、はい?」
「ごめんな?支えてやれなくて」

私の言葉にトキヤが目を見開いて顔を背けた。

「…何故、貴方が謝るんですか?」
「ん、ごめん…」
「だから、どうして謝るんです?」

私は無言で体を抱きしめた。

「、え?」
「…じゃあ、また後で教室で会おうな」

すぐに体を離して私は歩き出す。
…最近みんな変だと思う。
変というか、前と変わった?
昨日の日向サンもそうだけど、トキヤも…
疲れてるから?それとも、私のせい?

「おはよう、礫」
「レン?おはよう。今日は女の子いないんだ」
「あぁ、いないよ。ずっと聞きたいことがあったんだ。」

真剣なレンの瞳に首を傾げる。

「あの時…俺に羨ましいって言ったのはどうしてだい?」
「あれね…別に。そのまま、かな…」

家族がいて、助けてくれる仲間がいて…信じてくれる人がいて…
羨ましくないわけがない。
私と違って欲しいものが手に入るんだもん。

「なんかさ、みんな変わったよな」
「…礫が一番変わったよ。あの休んだ日から…いや、もっと前かもしれない」
「…なんのことかな。俺は変わってない」
「そんなはずないよ」
「わかんないな、俺には」

笑って言ってやると目を伏せられた。
その瞳は何を意味してる?
わからない。

「わからないよ」
「え?」
「何もかもわからない」

私がいけないの?
朱利になるときに引いた線がそんなにみんなを変えてしまったのか?


****


週末、マンションの前で蘭丸さんを待っていた。
日向サンには、友人と出かけると伝えた。

「待ったか?」
「いや、今来たところです」
「じゃあ、行くか」

そう言えば、今日HAYATOのライブだったような…

「いつも思ってたけどよ、礫ってピアスの穴何個開けてんだ?」
「3個です」
「多いな」
「そうですか?こういうアクセサリー好きなんですよ」

話ながら、電車を降りるとすごい人。

「うわぁ、人多い…」
「人ごみ、苦手か?」
「あんまり出かけないから。それに、前来た時より人が多い…」

蘭丸さんは少し首を傾げて何か思い出したように言う。

「あぁ、今日はHAYAYOのライブだろ?この近くでやるっていってた」
「あぁ…やっぱりHAYATOか…」
「興味あるか?一応チケット持ってるけど」
「なんで持ってるんすか?」

蘭丸さんのイメージじゃないと笑うと頭を乱暴に撫でられた。

「仕事の仲間がくれたんだよ。仕事でいけないから見てこいって」
「じゃあ、行きますか?いつか俺も舞台に立って歌いたいし…参考に」
「参考に、な。じゃあ後で行くか。まずは買い物」

蘭丸さんが連れて行ってくれたのはロックな感じのお店。

「すごい、カッコイイ…」
「こういうの好きか?」
「好きだけど、着たことない。どんな風に着ていいかわかんないし…」
「じゃあ、俺が選んでやるよ」

何着か手渡され、試着室に入った。

「…どうっすか?」
「なんだ、普通に似合うな」
「ホントですか?よかった…」
「女には見えないな」

クスクスと笑う蘭丸さんに、私もつられて笑う。

「蘭丸さん、結構買いましたね」
「礫もだろ」
「まぁ、そうですけど…あ、これ…カッコイイ」

腕につけるシルバーアクセに視線が奪われた。

「どれだ?あぁ、カッコイイな。趣味いいと思うぜ?」
「ありがとうございます。けど、これ…ペアだって」
「ペア?2つが組み合わさるようになってんのか。…俺と、ペアでつけるか?」
「え?いいんですか?」

蘭丸さんの方を見ると、いいぜと笑って言ってくれた。
買ってやるって言ってくれたけど申し訳なかったから半分だした。

「キラキラしてる」
「それを見てるお前の目の方がキラキラしてるよ。たまに、子供みたいな顔するよな」

ご飯を食べながら腕に付けられたアクセを見つめてる。

「まだ子供だし。俺、まだ16歳ですから。今年、17です」
「若いよな、無駄に」
「無駄ってひどくないですか?蘭丸さんとはそんなに歳変わらないじゃないっすか」

メロンソーダを飲みながら言うと笑われた。

「そこが、子供っぽいんだよ。」
「酷いなぁ〜…」

そう言うと蘭丸さんが笑う。
この時間が一番、楽しいかも…

「蘭丸さん」
「ん?」
「今日誘ってくれてありがとうございます」
「わざわざ言わなくてもいいって。俺も楽しんでるぜ?お前といられて」

笑顔で言われて、つい目を逸らした。
蘭丸さんの腕にある私と同じアクセについ嬉しくなった。

随分と単純なのかもしれない。

「そろそろ、ライブだな…行くか?」
「そうですね、行きましょうか。あ…」
「どうした?」

席から立って、ガラスの向こうに見えた姿に俺は固まった。

「どうかしたか?」
「いや、学校の…人が…」
「あ?…あの3人か?」

蘭丸さんが指差す先にいるのは翔に四ノ宮、七海の3人だった。

「えぇ、まぁ…」
「ふぅん…あんなのがいるんだな…お前の学校…」
「アイドル目指してるから、キラキラしてますよね…」

俺が目を逸らしながら言うと、蘭丸さんがクスクス笑った。

「お前も、キラキラしてると思うぜ?」
「え、やだ」
「ヤダって何だよ。ヤダって」

頭を撫でられて、店の外に出る。

「会いたくないだろ?」
「あ、はい…」
「会わないうちに、行くぞ」

手を握られて、彼らの横を通り過ぎる。
握られた手に酷く安心して、少し微笑む。
けど、視界に入った七海の笑顔に握った手に力が入った。

「…七海…」
「どうした?」
「いや…大丈夫です…」

俺は七海から視線を逸らした。

「アイツと、仲悪いのか?」
「いや…そういうわけじゃないんですけど…」
「……なんか、あったのか?」
「あの子自体は悪くないんですけどね…」

あの子の、全てが…才能が、気に入らない…
なんて、言えるわけないし…
苦笑いを向けると頭を撫でられる。

「礫って、結構自分の中にため込むよな…」
「え?あぁ…そうですか?」
「あぁ…もう少し、頼っていいぜ?」
「ありがとうございます」


****


七海と那月と喫茶店にいたとき目の前を通った姿に、手を止めた。

「今の…礫?」
「御幸君に、似てましたね…」
「七海もそう思うか?」

目の前を通った2つの銀髪。

「一緒にいたの、誰だ…?」
「わからないです…けど、仲が良さそうでしたね」

七海と顔を見合わせる。
一瞬、手を繋いでいるように見えたのは…見間違いだよな…?
いや、まずさっきのが礫じゃないかもしれない。

「礫じゃ、ないんじゃねぇか?」
「え?」
「アイツがこんなとこ来るとは思えねェし…あんな奴学校にいないだろ?」
「そうですね。一瞬だったから、見間違えだったのかもしれないですね」

そう、あってほしい。
スゲェ、幸せそうに見えたんだ。
さっきの表情が…
安心しきった、顔。
俺の前で見せたことなんかないような…
胸が、キツく締め付けられる。

どうして、俺じゃないんだよ…隣にいるのが…



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