そんなわけで、昼ご飯を一緒に食べることになった。
「あ、朱利君ってらんらんと仲良しなんだよね?」
「あぁ、まぁ…」
「らんらんのお弁当、誰が作ってるか知らない?」
寿さんの言葉に蘭丸さんを見る。
「…えっと、言わない方がいいんですか?」
「あ、やっぱり知ってるんだ!!誰々?やっぱ彼女?」
「えっと…」
蘭丸さんが諦めたように溜息をついた。
「蘭丸さんのお弁当は、俺が作ってますよ」
「「「は?」」」
「だから、今日のお弁当の中身一緒じゃないですか」
卵焼きを食べる蘭丸さんに微笑むとそうだなっと笑われた。
「ちょっと、待って。蘭丸と朱利ってどんな関係なの?」
「料理まで上手いのか…」
「美味いぜ?今まで食った飯で一番美味い」
そこまで褒められると恥ずかしい。
「俺と蘭丸さんは…なんですかね。不思議な関係ですよね」
「まぁ、よくわかんねぇな。」
「ねぇ、朱利。その卵焼き食べたい」
箸で挟んでいた卵焼きを指差されて、私はそれを美風さんの方に向けた。
「どうぞ?」
「ん……あ、おいしい…」
「それはよかったです」
寿さんにも食べたいと言われたが、蘭丸さんが止めていた。
なんでだろう?
「それじゃあ、そろそろ帰ります」
「もう帰るの?あ、じゃあ携帯の番号交換しよう?」
「あ、俺も!!」
…携帯…
そういえば、私…
「携帯持ってない」
「は?」
「あ、すいません。必要なかったんで…」
家族いないからわざわざ買う必要なかったんだよな…
「じゃあ、蘭丸とどうやって連絡取ってたの?」
「連絡なんて取ってないですよ。部屋、隣なので」
「はぁ!!?」
うわ、みんな驚いてる…
「あれ?て、ことは…みんな同じマンションじゃん」
「あ、そうだね」
「皆さん、同じなんだ…」
まぁ、事務所のマンションだからな。
だったら、普通に会えるのか…
「じゃあ、僕の部屋おいでよ」
「お兄さんのところも来ていいよ」
「俺も構わん」
「あぁ、はい。じゃあ行かせてもらいますね。部屋は蘭丸さんに教えて貰います」
荷物をかばんにしまって、立ち上がる。
「今日はありがとうございました。それじゃあ、失礼します」
私は頭を下げて、部屋を出た。
…楽しかった…
蘭丸さんが言ってた人達ってあの人達なんだろうな…
「あの人たちに、完璧な歌…歌って欲しいな」
迎えの車に乗ると早乙女さんがニヤリと笑って、座っていた。
「ドウデシタカー?」
「楽しかったですよ。あの人たちになら…俺の歌を任せられます」
「それはよかったデース。美風藍とのコラボ、やってもイイデスヨ」
「…聞いてたんすね。…ありがとうございます」
美風さんと、できるんだ。
「ユーの歌は、人を惹きつける。ユーに無理矢理音楽を教えてよかったデース」
「無理矢理だったけど…今はよかったと思ってる。歌いたい歌もあるから」
「楽しみにしてマース」
私はそのまま学校に送ってもらってレコーディングルームを借りた。
「まず、この歌か…」
1人機械を操作しながら、歌を歌っていく。
「…ここは、もう少し高い方がいいかな…」
歌いながら、譜面にメモを残して、また歌うを繰り返す。
「時間、過ぎていますよ」
「え?あ、トキヤ」
歌い終わって、曲を聴いていたときにかけられた声。
「あぁ、ごめん。予約してた?」
「はい」
「そっか。ちょっと待ってな」
マイクのところに置いた譜面を取ってぺらぺらと捲る。
「これ…礫が書いたんですか?」
「え?そうだよ」
「…礫の歌は曲調がコロコロ変わりますよね」
「同じって面白くないだろ?」
譜面をファイルにしまいながら言うと、トキヤが横からそれを覗いた。
「全て、貴方が?」
「そうだよ。」
「…貴方は、どんどん成長していきますね」
ファイルを閉じて、トキヤを見る。
「俺にはまだ歌えない歌があるから」
「そうですか…」
「また、怒らせるかもしれないけど言ってもいい?」
「何でしょう?」
鞄に全てしまって、トキヤを見る。
「逃げんなよ」
「え?」
「トキヤ自分の歌から逃げてる。HAYATOが自分じゃないっていうけどさ…結局HAYATOもトキヤだよ」
私が御幸礫で、そして朱利であるように、トキヤは一ノ瀬トキヤでHAYATOなんだ。
けど、私は朱利を自分の歌を歌う姿だと思ってる。そりゃ御幸礫として歌いたいと思うけどそれは今じゃない。もっともっと、出来るようになってからなんだ。
「HAYATOが歌を歌えなくなったからHAYATOを捨ててトキヤになるのか?」
「え?」
「そんなに自分って軽く捨てられるもの?ねぇ、トキヤが…歌いたい歌ってなに?」
ドアに手をかけて、トキヤを見る。
「歌に心がない。それってさ、トキヤが迷ってるからだよ」
「迷ってる?」
「トキヤはHAYATOを捨てていいのかわかってない。今のトキヤはHAYATOにもトキヤにもなりきれてない。だから、心がいなくなったんだよ。HAYATOの曲も、トキヤの曲も」
****
…HAYATOを捨てていいのかわかってない、か…
礫はいつも私の本音を…見抜いてしまう…
「じゃあ、どうすればいいんですかっ!!私は歌いたいんです…歌いたい…だけ、なんです」
「だから、逃げんなよ。俺はもう逃げない。もう、迷わない」
礫はそう言って、横を通り過ぎていく。
「一人でも、進むよ。俺は、俺の行きたい場所を目指す」
彼はそう言って出て行ってしまった。
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