蘭丸さんたちの歌を作りながら学校の課題もこなしていた私。
あの日以来、トキヤとは喋っていない。
右腕はまだ痛みはあるが、ある程度治ってはきていた。
今日はテストで、翔とレンにトキヤの曲を聞きに行こうって言われたけど断った。
私は廊下の画面をただ見つめていた。
相変わらず心のない歌。
私には何もできないから教室に帰ろうとして聞こえた声に足が止まった。
「一ノ瀬トキヤ。お前をもうこのクラスに居させるわけにはいかねぇ」
日向サンが吐いたその言葉に、手を握りしめていた。
「Sクラスから…外された…」
もう、ダメだって思った。
トキヤがSクラスからいなくなったら私と彼を繋ぐものはなくなる。
「ごめんな、トキヤ……俺にはお前を救えない」
七海が、君を変える…多分。
いや、絶対に…
私は誰にも会わないように、教室に逃げた。
放課後、雨が降ってる外を眺めながら偶然通りかかった食堂。
そこにはいつものメンバーがいた。
多分、みんなトキヤの話をしてるんだと思う。
踏み入れようとした足は後ろに下がる。
「…やっぱり、私は無力なんだ…」
俯いて、逃げようとすると誰かとぶつかった。
「…日向サン」
「一ノ瀬のこと、気にしてるのか?」
「そりゃ…ね。…俺が言ったことが…追い詰めたのかも…しれないから」
日向サンに微笑む。
「…最低だよ、俺…」
「お前は、悪くないって…礫は礫の仕事を…こなせばいいんだ」
「…うん」
家に帰っていつも通り夕飯を作って、蘭丸さんの家に行く。
「蘭丸さん、美風さんの部屋教えて貰えますか?」
「藍?この部屋の真上だ。打ち合わせか?」
「はい。他の方のはもう完成したので。どうですか、歌ってみて?」
「スゲェ歌いやすい。俺に合ってるからな」
笑って言ってくれた蘭丸さん。
「よかった。じゃあ、行ってきます」
「行ってこい。無理するなよ」
譜面を持って、美風さんの部屋に行く。
「あれ?朱利」
「こんばんは、美風さん。お時間良いですか?」
美風さんが少し笑った。
「入っていいよ。調整でしょう?」
「はい。他の人は皆完成したので。美風さんのは少し難しいので時間がかかっちゃいました」
美風さんについて部屋に入る。
「CDの発売はいつになるのか知ってる?」
「確かまだ先だったはずですよ。これ、どうぞ」
「ありがとう」
アレンジをした譜面とUSBを渡す。
「ありがとう」
「いえ。あ、それとコラボの話許可が下りましたよ。今度また持ってきます」
「そう?嬉しいよ」
笑ってくれた彼に微笑む。
「楽しみにしています。それじゃあ、俺はこれで失礼します」
「わざわざありがとう。」
私は美風さんと別れて自分の部屋に帰った。
「おかえり、礫」
「ただいま。これで全員に渡せたよ。あとは練習あるのみ」
「そうか。頑張れよ」
トキヤのことに触れないのは日向サンなりの優しさかな。
次の日、学校に行くと生徒が騒いでた。
「何があったの?」
「お、礫。合宿だってよ」
「いつ?」
「来週からだってよ」
その間、蘭丸さんたちと会えないのかよ…
やだなぁ…
「どうした、礫?」
「寂しいなって」
「は?」
「なんでもない。楽しみだな、合宿」
HRでも日向サンが合宿について説明していた。
行先は南のリゾートアイランド…て、どこだよ。
「帰ってきたら卒業オーディションのペアを決める」
…私には関係ないんだ。
相手を選ぶって…トキヤ、どうすんだろうな…
「御幸…おい、御幸!!」
「え?あぁ…はい」
「話、聞いてたか?」
「あー……はい」
つーか、聞いても意味なくないですか?
私には関係ないし…
携帯、買いに行こうかな…
蘭丸さんたちと連絡取りたいし…
そうと決まれば、即行動。
放課後、制服のまま街に出る。
「んー…どれにしようか…」
「あれれ?朱利君?」
「あ、寿さん。仕事終わりですか?」
「そうだよ。朱利君は?」
手に持っていたサンプルを置く。
「携帯買おうと思って。夏季の合宿中連絡取れないのは不便かなぁと」
「そうなの?朱利君と電話できるようになるねっ」
「はい」
やっぱり、妥当に前の世界のと同じのにしようかな、同じ奴売ってるし。
色違いにしたら間違えないだろうし…
「決めました」
「即決」
「はい。あ、折角なので一緒に帰りませんか?」
「いいよー」
携帯を買って寿さんとアドレスを交換する。
家についてから蘭丸さん達のアドレスを聞きに回った。
「やっと携帯買ったんだね」
「はい。夏季の合宿中連絡取れないのは不便なので」
「仕事以外でもかけてもいい?」
美風さんが首を傾げる。
「もちろん、いいですよ。楽しみにしてます。それじゃあ」
「じゃあね、朱利」
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