合宿が終わり、学校に戻るとペアの話で持ちきりだった。
学園長室に呼ばれて、椅子に座る。

「…発売日は…来週デスネーこれ、サンプルデース」
「そうですね。…どうも」

紅茶を飲みながら微笑む。

「蘭丸さんに、美風さん、寿さん、カミュさん…みんな…俺の歌で俺の期待以上のものを作ってくれた。凄い、嬉しかったですよ」
「…楽しそうデスネー」
「楽しいですよ、最近。朱利として活動するの楽しいんで」

そこで、ノックの音が聞こえて部屋にトキヤが入ってくる。

「Ohー待ってましたヨー。Mr一ノ瀬」
「…失礼します。て、礫?」
「どうも…。じゃあ、早乙女さん俺はこれで」
「まだまだ、話終わってないデース」

立ち上がって、帰ろうとしたがそう言われてもう一度ソファに座る。

「じゃあ、ここで待ってる」
「お願いシマース」

紅茶を飲んで、目を閉じた。

「なかなかデリシャスじゃナーイ?この調子でGoGoGoね」
「はい」
「これならSクラスのカムバックもあるカーモ。音楽の神ミューズの島で救いの女神にNice to meet youしましたね?」

トキヤの息の飲む音が聞こえた。

「では…失礼します。…礫」
「何かな、トキヤ?」
「何故、ここに?」
「早乙女さんに呼び出されたからかな」

学園長室からトキヤが出ていく。
高笑いをしていた早乙女さんが椅子に座った。

「聞きましたよー、噂の女神の曲」
「気に入ってもらえた?」

林檎ちゃんが嬉しそうに微笑む。

「Got it!!太陽の如く温かく優しい、人の心を動かす……Mr御幸。ユーはどう思いますか?」
「いいんじゃないんですか?普通に。俺は好きじゃないですけど」
「どうして?」

林檎ちゃんが首を傾げた。

「トキヤ達の歌を書く分には何も言いませんけど…蘭丸さんや、美風さん、寿さん、カミュさんの歌は絶対に譲れないんで。あの人たちの歌は俺が書く」
「イイデスネー。好きですよーそういうの」
「…あの人達とは、相性がいいので。てか、まず…俺は、朱利は…あいつには負けれない」

ティーカップをテーブルに置く。

「礫君、カッコイイ〜」
「ありがとうございます」
「やっぱり、礫君が一番よ?」
「どうも。」

彼女は俺が欲しいものを全て、持っている。
私が欲しくて、仕方ないものを持っている。
…だから、絶対に…負けたくない。

「じゃあ、俺はこれで」
「また呼びますヨー」
「はい」

4枚のCDを持って、教室に戻る。
CDを鞄に入れて4人にメールを送った。

その日の放課後。

「何をしていたんですか、学園長室で」
「ん?ちょっと話をしてただけ。特例だからさ、俺」
「…卒業オーディションは1人で受けるんですか?」
「そうだよ」

Sクラスの教室でピアノを弾いていたときに入ってきたトキヤ。

「…トキヤは、ペア。七海にするんだろ?」
「え?どう、して…」
「林檎ちゃんから聞いた。今希望が5人集中してるんでしょ?トキヤが増えたら6人だね」
「あ、あの…礫?」

トキヤが珍しく慌てた顔をしている。

「6人とも、変えられたからね…七海に」
「…嫌、ですか?…やっぱり、彼女のこと…」
「俺はね。けど、それは関係ないだろ?君らが誰を選んで誰と歌おうが関係ない。」

卒業オーディションのライバルになるのは確かだけど…

「…礫、私は…」
「好きに、すればいい。ライバルだろ?」
「そう、ですけど…私は、礫の歌も歌いたい…と思っています」
「……俺とはペア組めないからな。歌いたいなら…プロになってからな」

ピアノを弾き始めると、トキヤは教室を出て行った。

「…ごめんな、トキヤ」


****


ペアの締切当日。

仕事の打ち合わせで早乙女さんに呼ばれていた。
だが、その話はまたあとでと言われた。

「じゃあ、なんですか?」
「miss七海が、6人を選ぶつもりらしいデース。But,それは認められない」
「そうですね。やっぱ、トキヤも希望出したんだ」
「…行きますよー」

腕を引かれて、連れて行かれたのはレッスンルーム。

「全て聞きましたヨーン」

ドアを開けて中に入る早乙女さん。

「グループでオーディションを受ける?なかなか面白いアイデアナリButそれは認められません」

背中を壁に預けながら、その話に耳を傾ける。

「何でダメなんです!!?」
「ペアの意味わかってるー?6人を選ぼうなんて…ダメなのよー」

何か言い返そうとした七海を止めて、真面目な声で早乙女さんが言った。

「決まりを守ってください」

全員が解散した後、音也に腕を引かれた。
てか、なんでここに連れてこられたんだろう…

「礫…お願いがあるんだ」
「…何?」
「協力、してくれない?」

私は音也の顔を見る。
そんなとき携帯が鳴った。
音の理由はメール。
メールの文面を読んで納得した。

「…そういうこと…いいよ、協力してあげる」
「本当に!!!?ありがとう、礫」

夕方になってさっきのレッスンルームに行く。

「本当に、ありがと礫!!」
「いいから、さっさと中はいれよ」

音也がドアを開けると中には七海がいた。

「一十木君、御幸君…」
「俺さグループでもなんでもいい。七海じゃないとダメなんだ。…これ」

音也が七海に譜面を渡す。

「歌詞…まだだろ?礫に手伝ってもらって考えてみたんだ」

私はドアの横で、それを眺める。

「こら、音也!!油断も隙もねぇな」

横にあるドアが開く。
ドアのせいで、顔は見えないけど翔だろうな。

「翔君それに、四ノ宮さん…」
「歌い手として、協力したいんです」
「みんなに聞かせたいんだよ、七海の曲をよ。誰かさんだけいい顔させたくないしよ」

…あの2人、私がいるの気づいてないでしょ?

「選べないんじゃない、と言ったな」
「聖川さん…」
「俺も七海の言う夢にかけてみる気になった」
「あれ!!?歌詞、もう出来てんじゃん」

翔が七海の手に持つ譜面を見る。

「そりゃ、そうだろ?俺が手伝ってんだし」
「礫…え?いつからいたんだ?」
「最初から。音也と一緒に来たから」
「あーー!!えっと、さっきのは違くてだな」

駆け寄ってきて何か喚いてる翔から視線をずらす。

「さっさと、練習したら?」
「…ありがとうございます、みなさん…それに、御幸君も」

夜も遅くなって私は今度こそ仕事の打ち合わせの為、ヘリポートに停まるヘリに乗っていた。
そして、たぶん彼らはここに来る。

「待ってください!!!」

早乙女さんがヘリに乗ろうとしたとき聞こえた声。
ヘリに乗っていた私は腕を組んで、外に視線を移す。

「お願いです、私たちの曲を聞いてください」
「miss七海まだ諦めてなかったのですか?」
「出来たんです」
「学園長!!!」
「聞いてくれよ俺達の歌を!!」

必死な4人の声。
七海って本当に愛されてるな…

「ルールを破ったら失格と言いました」
「失格かどうかは俺達の歌を聞いてからにしてくれ」

そこに現れたトキヤとレン。

「学園長、彼女の才能をご存知でしょう?」
「ここで聞かないと一生後悔するぜ」

私は立ち上がって早乙女さんの背中を押す。

「「「「礫!!!?」」」」
「早乙女さん。アンタの可愛い教え子たちの我儘、1つぐらい聞いてやれよ。打ち合わせは遅れるって連絡済みだろ?」
「…仕方ないですネー」

私もヘリに乗ったまま、彼らを見つめる。
6人が歌い始めて、林檎ちゃんが駆け付けた。
変えられたんだよな、みんな。
曲が終わって早乙女さんが膝をつく。

「この曲のタイトルは?」

突然の言葉に七海が慌てている。
プロペラが回りだす。

「その曲には何回でも聞きたくなる愛があります。タイトルはマジLOVE1000%。それ以外のタイトルで君たちを認めるわけにはいかなーい」
早乙女さんがそう言って、中に入った。

「行きますヨー、朱利」

彼らに聞こえないように言われた言葉に頷く。

「…わかってます」

チラッと彼らに視線を寄越してからヘリに乗り込む。


****


「やったー、七海」
「これで卒業オーディション受けられるぜ」

喜ぶ皆さんになぜか心がざわつく。
どうして、礫は学園長とヘリに乗ってるんですか?

みんな気にしてないですが…

「礫…」

貴方は…一体?



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