6人と組むことになった七海の練習を眺める。
トキヤは、いない。
おそらく、HAYATOの仕事だろう。
携帯を弄りながらその様子を眺める。
「あーぁ、なんかいまいち盛り上がらねェな…」
翔が言った言葉にレンが答える。
「当然さ、メンバーが一人足りないんだ」
レッスンルームの空気が悪くなった。
トキヤのバイトについての話を聞き流していると携帯にメールが届く。
…早乙女さん…
携帯を閉じて彼らを見た。
「きっと、もうすぐ来ますよ!!」
七海の言葉に不服そうな顔をしながらも練習をしようとしたとき、ドアが開いた。
「すいません、遅くなって…」
…やっと、来たか…
「待ちくたびれたぜ。もう来ないのかと思った」
レンの言葉にまた空気が悪くなる。
「さぁ、全員揃ったところで練習再開です」
「そうそう、みんな始めようぜ!!」
四ノ宮と一十木の言葉に七海が慌てて鞄を漁る。
「翔」
「どうした、礫?」
「俺用事あるから抜けるな」
「え?」
彼らに気づかれないようにドアを開ける。
「またね」
ひらひらと手を振って外に出ると、紙が落ちてきた。
『監視室に来い 早乙女より』
そのメモに溜息をつきながら監視室に向かった。
「…どーも」
「待ってましたマシター」
画面に映る彼らを、壁に寄りかかり眺める。
「趣味悪いですね…監視カメラとか」
「どう思いマスカー?Mr.一ノ瀬」
「そろそろ、限界じゃないですか?」
練習をしている彼らを映す画面から別の画面に視線を向ける。
「敷地にパパラッチが来てるのは知ってるんでしょう?」
「気づいてたか」
「まぁ、一応」
真剣な声になった早乙女に携帯をしまう。
「彼は、大変でしょうね。最近は仕事詰めてるようだし」
「…そうだな」
「まぁ、俺には関係ないことですけど」
椅子をくるりと回してこちらを見た。
「4枚同時リリース…ランキングを総なめしてマースね」
「そうですね。いろんな人に好まれてるのは嬉しいです」
「美風藍とのコラボも順調デスカー?」
「えぇ、もちろん」
美風さんとの練習を最近始めて、あの人は凄いと改めて思う。
年下なのにな…
「そちらは心配ナッシングのようデスネ」
「はい。まぁ、問題はトキヤですかね」
画面に映るトキヤに溜息をつく。
「大きな問題にならないことを祈ってますよ。俺はこれで」
「また、明日もよろしくお願いしマース」
「仰せのままに」
その部屋から出て、お気に入りのレッスンルームに向かう。
「新しく、曲作らないとなぁ…」
震えた携帯を見ると寿さんのロケ現場からの写真。
『お土産かったよ〜』
*のついたそのメールにクスリと笑う。
楽しみにしてます、と返信をして体を伸ばす。
「もうひと頑張り、かな」
****
雨の降る次の日。
いつまでたってもトキヤは来ない。
一十木が何度も電話をかけていたが出なかったようだ。
「…なぁ、礫」
「なに、翔」
「礫は、心配じゃねぇの?トキヤのこと」
翔の問いかけに携帯を弄っていた手を止める。
「別に」
「何でだよ?」
「だって、仲間…なんだろ?信じる以外に俺らに選択肢ってある?」
翔が目を丸くしてから俯く。
「礫って、強ぇよな…」
「そう?」
「おう」
翔は帽子を深く被って、みんながいるピアノの場所に行く。
「御幸君も、来てくれますか?」
「え?あぁ…なに?」
「ここ、わからなくて」
七海の困った顔を見て、どこかモヤモヤとする気持ちをかき消して笑顔を作った。
「あー…これは…」
少しして、携帯が鳴った。
「あ、悪い…俺だ」
「マナーモードにしておきなよ、礫」
「ごめんごめん」
画面に映された早乙女の文字に嫌な予感がして耳にあてながら廊下に出る。
「もしもし」
『Mr.一ノ瀬が倒れたらしい』
「は?」
嫌な予感があたった。
『他の奴らには伝えるな』
「はい、了解です」
『今日は遅くまで帰って来れない可能性が高いと思いマース』
…やばそうだね、それ…
今でさえ、空気が悪いのに。
視線をドアの方に向けるとガチャリとドアが開く。
「え?レン?」
「悪いけど、俺は今日は帰るよ」
「あ、あぁ…じゃあ」
視線を彼の背中に向けながら一瞬離した携帯に耳をあてる。
「大変そうですよ、早乙女さん」
『彼らには試練が必要デース』
「意地の悪い人だ」
電話を切って、部屋に入るとみんな落ち込んでいた。
「…練習、しないなら解散すれば?」
「え?」
「みんなバラバラな気持ちでグループって無理があると思わない?」
みんなが頷いた。
「御幸君…」
「なに?」
「少し、付き合ってもらえますか?」
皆が帰った後に七海が私の腕を掴んだ。
「いいよ?」
「皆さんがいなくても…出来る限りのことをしたいんです」
「いい心構えだね。いいよ、付き合ってあげる」
ピアノの椅子に座った彼女の前に腰を下ろす。
「七海は…知ってるんだろ?トキヤの秘密」
「え?あ…御幸君も…知ってるんですか?」
「一応ね…」
ピアノに指を乗せる。
「七海は…彼を信じて待ってるんでしょ?」
「はい…一緒に、歌えると…信じています」
微笑んだ彼女に目を逸らす。
「大丈夫だよ、トキヤは」
「え?」
「ちゃんと…帰ってくる。俺もそう信じてるよ」
彼女の頭をポンと撫でて微笑む。
偽りの笑顔かもしれないけど…これが私のやるべきこと、でしょ?
「ありがとう、ございます…御幸君」
「いーえ。じゃあ…やろっか」
「はい!!」
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