ST☆RISHのメンバーとはあれ以降会っていない。
まぁ、私もデビューに向けてリハやら作曲やらコラボやらで学校には行けてないから。
そんな中、ST☆RISHのデビューライブが近づいてきた。
「朱利君、一緒にST☆RISHの見に行くんでしょ?」
ライブの打ち合わせをしていたとき寿さんが言った。
「あぁ、その予定です」
「朱利の友達なんでしょ?」
美風さんの言葉に苦笑する。
「俺が裏切ってきた人です。友達じゃないですよ、もう」
「裏切ったのか?貴様が?」
カミュさんがこちらを見る。
「はい。彼らを裏切って…ここにいます」
「俺らを優先したってわけか」
蘭丸さんが髪をぐしゃぐしゃとかき回す。
「はい。ST☆RISHのライブが終わって次の週には俺もライブだし…気にしていられないですけど」
「朱利君!!」
寿さんが俺に抱き着く。
「もう、お兄さん惚れちゃいそう」
「あ、どうも…」
「ちょ、冷たい!!」
4人とのコラボも順調で、曲は大体完成してる。
私のソロ曲も完璧だし…
ライブでは蘭丸さんがベースで入ってくれる場面もあるし。
正直わくわくしてる。
「そういや、ラストの曲だけ俺ら聞いてねェけど…」
「あ、それは内緒です。俺一人で歌う、大切な曲なので」
「ならば楽しみにしておこう」
カミュさんはそう言ってまた、楽譜に視線を落とした。
****
ST☆RISHのライブ当日。
私は蘭丸さんと寿さんの間に座ってる。
「たく、たいした奴らだ。グループでデビューしちまうんだからよ」
「本当。あの子たちにはいつも驚かせられっぱなしよ〜」
「ハッハッハッハッハー我らのパワーが奇跡を起こしたのです。エブリーバディー心して聞くがよい!!この世の何よりもスゴイミュージックを」
後ろの席から上空の何かに飛び移った早乙女さんがくるくると回り飛んでいく。
そして、一瞬会場が暗くなり画面が付いた。
舞台に彼らが出てきて歓声が上がる。
つい最近まで、私はあそこにいた。
あぁ、みんな…私の知らない顔してる。
道はもう、別れた。
交わることは…もうないだろうな。
一緒に、足並みをそろえて歩くことはない。
私の手を誰かが掴む。
そちらを見ると蘭丸さんが笑っていた。
「お前には…俺らがいる」
「はい」
「だから…んな、悲しそうな顔してんじゃねぇよ」
「そうだよ、朱利君」
寿さんが私に抱き着く。
「これよりも凄いライブ…しようね」
「はい」
ライブが終わって楽屋のある方に1人、足を進める。
コンコンッとノックするとどうぞー、と明るい声が聞こえた。
「失礼します」
ドアを開けると見知った顔が一気にこちらを向く。
「礫!!?」
トキヤが驚いたように立ち上がった。
「ライブお疲れ様。すごかったよ」
そう言って微笑む。
「今日は、ちょっとだけ用があってさ」
手に持っていた赤と黒の封筒をテーブルに置く。
「朱利、って覚えてる?」
「覚えてるけど…」
翔が封筒に視線を落とした。
「朱利のライブのチケット」
「え?」
「8人分あるから。君達と渋谷さんに。予定があえばおいで」
「何で礫がこんなもの…」
レンの言葉で視線がこちらに向けられる。
「渡してほしいって、頼まれたんだよ」
「え?」
「今日のライブ、来てたからね」
ドアノブに手をかけて、足を止める。
「七海」
「は、はいっ」
「よかったと思うよ、今日のライブ。やっぱり、俺のライバルだなって思う」
それだけ言って、楽屋を出た。
さてと、次は私の番だ。
もっと、もっと練習しないと…
****
私のライブ当日。
黒の衣装に身を包んで、4人と最後のリハをしていた。
「よし、完璧」
「ついにだね、朱利君!!」
「はい」
私が微笑むと皆が微笑んでくれた。
「お前なら大丈夫だ」
「僕が認めたんだ。大丈夫だよ」
「貴様に失敗はありえない。胸を張れ」
「頑張ろうっ」
「はい」
8人は来てるかな…そう思いながら白い布の張られた舞台に立つ。
バンドのメンバーが徐々に音を出していく。
布で見えないが向こうから歓声が聞こえた。
フードを被って顔を隠す。
照明が私を照らして、布にシルエットが映り歓声が増える。
音がやみ、ドラムの音が聞こえて曲が始まる。
舞台袖で4人が微笑んでいるのを一度見てから口を開いた。
「Remember again 」
学園で、初めて歌った歌。
1曲、終えると2曲目の間奏で布が落ちる。
目の前に広がる景色にただ、心が躍った。
早乙女さんの近くに8人が座っていた。
顔は見えないけど…
2曲目を終えて、マイクを持つ。
「みなさん、初めまして。朱利です」
歓声が上がる。
「正直、こんなに来てくれるとは思ってなかったんだけどな…」
困ったように言うと、可愛いという歓声が聞こえて正直びっくりした。
声って、こんなに届くんだ…
「この場所に立てたのは、皆さんのお陰です。たくさんの感謝を込めて歌います。最後まで、楽しんでいって下さい」
ギターを持って、音を出す。
「じゃあ、次の曲。」
4人とのコラボ曲も上手く終わった。
そして、次が最後の曲。
マイクを握った手がかすかに震えた。
ステージには私一人。
「長い間、聞いてくれてありがとう。次が最後の曲」
今までにないくらいの歓声に、左手で胸の辺りを掴む。
「初めて愛して、初めて愛してくれた人。その人が…最期に贈ってくれた曲です」
静かになった会場に、息が詰まる。
泣きそうだ…
「歌う勇気が、ずっとなかった。歌ってしまえば、過去を受け入れないといけないから。自分は凄く臆病で名前も顔も隠して…ここに立ってる」
そんなことない、違うという声に微笑む。
「ありがとう。けど、決めてた。この歌を歌うときは…ありのままの自分で歌うって」
フードを外す。
後ろの画面に私の顔が映し出され、歓声が上がる。
「朱利を好きになってくれたみんな、ありがとう。けど、ごめんね?朱利は今日でさよなら」
大きく息を吸って、マイクに向かって叫ぶ。
「この歌は、俺が…御幸礫が歌う。俺の愛した朱利と、俺と朱利を愛してくれたみんなに届くように」
今までにないくらいに、聞こえた歓声。
左手を高く空に向けて突き上げる。
「ここにいるみんなと、ここに来れなかったファンのみんな…それから、死んだアナタのいる空まで、どうか…どうか、届いて」
朱利、愛してる。
愛してた。
だから…
「聞いてください。…君が贈った最期の詩」
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