ライブを終えて、舞台袖に蹲る。
「カッコよかったぞ、礫」
蘭丸さんが頭を撫でる。
「はい」
「お疲れ、礫」
「よかったぞ」
「はい」
美風さんとカミュさんが優しく肩を叩く。
「礫君〜」
ボロボロと泣きながら私に抱き着いた寿さん。
「感動した〜」
「はい…ありがとうございます」
折角止まったのにまた、頬に涙が伝う。
「ちゃんと、届いたと…思いますか?空まで」
「…届いたと思うぜ。お前の気持ちは」
寿さんが離れて、蘭丸さんが私を抱きしめた。
「朱利…愛してる。愛してたんだ…まだ、幼かったけど本当に」
「あぁ…」
蘭丸さんの手が私の頭を撫でる。
「もう、会えないってわかって…逃げたんだ、私は」
「…けど、ちゃんと向き合ったじゃねぇか」
「っうん…」
「大丈夫だ…よく頑張ったよ、礫」
子供みたいに泣く私をみんなが撫でてくれた。
愛してる。
愛してた。
もう、会えないけど…どうかそばにいて
「私は、ここで…みんなと頑張るから」
「当然だ」
「そうだよ、礫君」
「僕たちには礫が必要なんだよ」
「ここなら、大丈夫だ」
みんなの笑顔に胸が熱くなる。
頬を濡らす涙を拭って頭を下げた。
「これからも…よろしくお願いします」
****
ステージに立ったのは礫だった。
一曲目を聞いて、レン、翔、トキヤが礫…と名前を呼んだ。
前に座っていた日向先生がこちらを振り返る。
「ちゃんと聞いておけ。アイツがお前らを裏切ってまで掴もうとした未来だ」
「礫…」
「ここに、アイツの全てがある」
4人の人とコラボする礫は今まで見たことないくらい楽しそうだった。
「御幸君、カッコイイです」
「そうですね〜」
七海がキラキラとした目を彼に向ける。
最後の曲の前、礫が所々声を震わせていた。
フードを外した礫の顔は、清々しいと、楽しいとそう言ってるような気がした。
空に向けた左手がギターを奏でる。
今までとは全く違う、優しい声。
泣きだす観客が沢山いて、俺達もつい涙が溢れてた。
「聞いてくれて、ありがとう。もう朱利じゃないけど御幸礫を応援してくれたらうれしい」
歓声が、会場を包む。
「俺に…未来をくれて、ありがとう。来るべき未来でまた、会おう」
そう言って、朱利は舞台袖に消えた。
「これが…礫の未来…」
「これじゃ、引きとめるなんてできねぇよ」
「そうだね」
日向先生がこちらを振り返る。
「礫の楽屋…行くか」
みんな、顔を見合わせてから頷いた。
****
衣装を脱いで、変わりの服を着る。
そして楽屋のソファに体を沈めた。
「疲れてるね」
隣に座った美風さんにはい、と返事をする。
「みなさん、疲れてないですね」
「まぁ、一曲だしな」
「そうですか…」
美風さんがタオルをこちらに差し出す。
「あ、ありがとうございます。美風さん」
「…いい加減、それやめない?美風さんって。呼び捨てでいいよ」
「あ、俺も賛成〜」
寿さんが手をあげる。
「じゃあ藍と嶺二さん」
「らんらんとミューちゃんはそのままか」
「そうですね」
コンコンとノックの音が聞こえる。
「礫君の友達かな?」
「…多分」
「じゃあ俺達は隣行ってるから。終わったら打ち上げな」
「はい」
4人が出て行って、8人と、日向サンと林檎ちゃんが入ってきた。
「どうぞ、座って?」
私は微笑んだ。
全員が座ったのを確認して微笑む。
「びっくりした、よね」
「そりゃあな。俺達が憧れてた奴が隣にいたなんて」
「そうだよね」
藍に貰ったタオルで髪の毛を拭く。
「最初、早乙女さんに楽曲をCMで使いたいって言われて。けど、俺はまだ君達と学びたいとも思ってた。だから、名前を伏せて活動してた。その途中でトキヤの正体も知ったよ」
皆なにも言わずに耳を傾けてる。
「今日一緒に歌った4人に楽曲提供することになって、レッスンルームに籠ってドラムも練習してみたりして。…自分が朱利になったときからみんなとはちゃんと一線を引いたつもり」
「え?」
「俺はみんなと違う道に進む。そう分かったから…まぁ、みんなが変わったからっていうのもあるんだけど…」
トキヤに視線を向ける。
「トキヤは、よく知ってるよね」
「はい」
「みんな、七海に変えられた」
今度は七海を見る。
「俺も、七海もスゴイっていわれてる。今はね?」
「あ、はい」
「けど、最初が違かった」
全員わからない、という顔をした。
「最初は楽譜も読めなかった七海と、最初から一位を取っていた俺。七海は、努力したと言われ俺は天才と言われる」
トキヤが目を伏せた。
「それが、俺は嫌だった。天才という言葉に努力は消されるんだよ。それが、俺にとってなによりも苦痛だった。だから、そう思われない七海が羨ましくて、妬ましかった」
七海がえ?と驚いた顔をする。
「まぁ、今更こんなことを暴露したところでなんにもならないけどさ…七海に、そう言う感情を持ってたけど大切だとも思ってた。だからあの時、七海を庇った」
「あ…」
「さてと、俺が話したかったことは…これくらいかな…?」
ニコリと笑って彼らを見る。
「聞きたいこととか、言いたいこと…あったからここに来たんでしょ?まぁ、俺が勝手に語りだしたんだけどさ」
「私から…いいですか?」
トキヤがこちらを見る。
「どうぞ?」
「今日のライブ、凄かったです」
「え?あぁ、ありがとう」
そんなこと言われると思ってなかった。
「礫が選んだ未来なら、文句はありません。もう少し、何か言って欲しかったですが」
「あぁ、ごめんね?」
「…貴方の味方でいれなくて、すみませんでした」
頭を下げたトキヤに平気だよ、と笑う。
「あの曲…最後の曲…どういう意味か聞きてぇ」
翔が控えめに言う。
「あれは、俺の恋人が俺に贈ってくれた詩」
「恋愛禁止なのに、平気なのか?」
「平気だよ。もう、死んでるから」
「え?」
聞かれるとは思ってたけど…日向サンも驚いてる。
「その人はね、病気だった。余命宣告されたあとに俺と出会った。近い未来終わりが来るとわかってても、お互いを好きになった。けど、宣告通り亡くなったよ。そのあと…この学園に来た」
「そ、そうか…悪ぃ…」
「なんで謝ってんのさ。朱利は恋人の名前」
私はそういって、ピアスに触れた。
「御幸君、いいですか?」
「どうぞ」
七海が真剣な顔をしてこちらを見る。
「私、御幸君に楽譜の読み方を教えて貰いました」
「そうだね」
「御幸君に庇ってもらって、窓から落ちても無傷でした」
「あーうん…」
日向サンは、は?という顔をしてこちらを見る。
「御幸君に助けて貰ってST☆RISHが出来て、皆さんの歌を私が書けることになりました」
「そうだね」
「御幸君がいなかったらここまで来れてないです。御幸君に羨ましがられるような人じゃ私はないです。逆に、私は御幸君が羨ましかった」
「え?」
七海が微笑んだ。
「御幸君には才能もあって、努力もして…さりげなく沢山の手助けをしてくれて…みんなに信頼されて…自分の時間を削ってまで私たちを手伝ってくれて…何でもできちゃう御幸君みたいになりたかった」
「あ、ありがとう?」
「けど…負けたくはありません。ライバルだって言ってくれて嬉しかったんです」
私は右手を差し出す。
「え?」
「握手」
「あ、はい」
私の手を握った七海に微笑む。
「俺は、ソロでも活動して七海と同じ舞台にはいないことも多いと思う」
「え?」
「けど、作曲に関して七海に負ける気はない。お互い、頑張ろう?」
「はいっ」
手を離して、みんなを見る。
「ST☆RISHのお前らにも、負ける気はないから」
「望むところだよ、礫」
「一緒の舞台に立って歌える日を楽しみにしてるよ」
立ち上がって七海の頭を撫でる。
「レン、あの時言ったことは訂正させてもらうよ」
「え?」
「羨ましいなんて、もう思わない。今俺のいる場所は俺が選んだ場所だから。」
「そうかい。それはよかった」
皆と言葉を交わして、日向サンと林檎ちゃんを見る。
「日向サン、林檎ちゃん。いろいろ迷惑かけてゴメンな。けど、俺…ちゃんと前に進むから」
「うんっ」
「あぁ、頑張れよ」
あぁ、やっぱり…みんなと進めてよかった。
もう、一緒じゃないけど…大丈夫だ…
ねぇ、朱利…?見てる?
私は、前に進むよ。
もう、立ち止まらない…
…愛してた。さよなら…は言わないよ。
また、会おう。朱利
「これが、俺の選んだ未来だ」
翔が嬉しそうに笑って抱き着く。
「これからも、よろしくな。礫」
「よろしくお願いしますね〜礫君」
「よろしくっ礫!!」
「よろしく頼もう」
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
「礫…また、迷惑をかけると思います。けど…宜しくお願いします」
トキヤが差し出した手を握る。
「よろしく、みんな」
やっと、スタートラインかな。
←→
戻る
Top