「おはよう、礫」
「おはようございます」
「おはよう、翔、トキヤ…と、誰?」
2人と一緒にいたロン毛のキラキラした奴。
「神宮寺レンだよ。覚えててほしかったな」
「あぁ、悪い。名前までは憶えてなかった。俺は御幸礫。適当に呼んでいいよ」
「じゃあ、礫って呼ぶよ」
「ん、了解。あ、トキヤ。HAYATO見たよ」
私の言葉にトキヤの眉間の皺が深くなった。
「なんか、不思議な子だね。君のお兄さん」
「あんなのが兄だなんて思いたくないですよ」
「トキヤの方がお兄さんな気がする」
私がそう言うとレンと翔が笑った。
「それは、言えてるかもしれないね」
「レン、黙りなさい」
「イッチー、ひどいなぁ」
今日から本格的な授業が始まった。
まぁ、日向サンと林檎ちゃんが私に教えてくれたことと同じだったからつまらなかった。
最近、って言っても数日こうやって生活しただけで自分が女だって忘れてきてる。
まぁ、昔から男扱いで生きてきたから抵抗はないが…
けど本当に、つまらない…
ノートは一応書いているけど、話は全部聞き流してた。
「礫、ちゃんと授業聞いてましたか?」
昼休み、私にそう問いかけたトキヤ。
「ん?聞いてたよ?あ、ご飯どうする?」
「私は自分で持ってきましたけど」
「そっかー…俺どうしようかな…」
学食行こうかなと立ち上がった時流れた放送。
『Sクラスの御幸礫。飯食う前に職員室に来い』
「うげ、日向サンか…行ってくるからトキヤ達は先に食べてていいよ」
職員室に行くと日向サンと林檎ちゃんがいた。
「何?」
「林檎が一緒に飯食いたいから連れて来いって」
「…放送の私物化…じゃなくて、食べ物なにもないんだけど」
「俺が朝弁当作った」
「日向サン、ナイス」
結局3人で応接室を借りてご飯を食べる。
「日向サン、」
「ほらよ」
「ありがと」
家と同じような調子でやっていたら林檎ちゃんが超笑顔になっていた。
「2人とも息ぴったりなのねっ」
「別にそう言うわけじゃないだろ」
「うん」
ん、日向サンの弁当おいしい…料理上手いよな…
「そういえば、林檎ちゃん。どうして俺とご飯食べたかったの?」
「ん〜知りたい?あのね、自己紹介の時に歌った歌聞きたいなぁって思って!!」
「あぁ、あれね。て、日向サン話したんだ」
「しつこかったからな」
日向サンが目を逸らした。
私を売ったのか…
「後で、歌ったデータ持っていくよ」
「本当に!!?やった〜」
「喜んでもらえてよかったよ」
弁当を食べ終えて、コーヒーを飲む。
「なんか、礫君。表情豊かになったわね」
「それは俺も思った。最近昔の刺々しさがなくなった」
「…流石に2か月も一緒に住んでんのに刺々しかったら扱い困るだろ」
この2人にはなんとなく心を開いた。
まぁ、完璧に開く気は今のところないけどな。
「まぁ、2人には感謝してるから…ね」
「キャーーーー、礫君可愛い」
「ちょ、痛い痛い!!」
こんな毎日も、いいかなって…思う。
楽しいから、ある程度…
まぁ、アナタがいないのは寂しいけどね…
結局、2人と喋って昼休みが終わってしまった。
教室に帰る途中、七海が一人勉強している姿が見えた。
「…頑張ってるな…俺も早く歌作らないと…」
口の中の飴を転がしながら窓の外を眺めた。
****
放課後、レッスンルームを借りて譜面を作っていく。
「礫君、USB貸してー」
「あ、林檎ちゃん。ちょっと待ってな」
突然の訪問者に多少びっくりしたがバックからUSBを出して渡す。
「結構たくさん入ってるから…えっとmagentaって曲がこないだ歌った奴だから」
「わかったわ♪聞いてみるねん」
彼女は嬉しそうに部屋から出ていった。
テストの曲、いい加減決めないとな…
magnetとか歌いたいけど…2人で歌わないといけないし…
会いたいとか?
またナノでもいいかなぁと思うけど英語の歌詞だとダメだろうし…
RADとかもいいかな…
「悩む…」
黒のノートをパラパラと捲って溜息をついた。
「男らしく、低い音のにしようか…いやけど…最近の男は声高いし…」
「何を一人で喋ってんだ、お前」
「あ、日向サン。どーしたの?」
「いや、見回ってたらお前がいたから入ってきただけ」
日向サンは楽しそうに笑う。
「テストの曲、英語と日本語どっちがいい?」
「皆聞くんだし日本語だろ」
「だよなー…音は?高い?低い?」
「お前ならどっちでもいいだろ。」
日本語で、高くても低くてもいいと…
そんなん、沢山あるじゃん。
「じゃあ、恋愛系がいい?それ以外?」
「恋愛も、いいと思うけど…お前っぽくないな」
「…うーん…難しい。ロックな感じの歌いたいけど…浮かばない…」
片っ端から聞いてはいるんだけど…
私の好きなの英語が多いんだよね…
あんまり痛いのは歌いたくないし…
…あぁ、あれいいかも…
「一個、浮かんだ。てか、ピアノとかドラムって先に録音したのを合わせてもいいの?」
「あぁ、いいけど…やるなら学校で録音しないとだな」
「手伝ってくれる?」
「そりゃ、まぁ」
私は広げた譜面やノートを片づける。
「あ、おい!!?」
「作ってくる!!あ、先に帰る!!」
「あ、あぁ…気をつけろよ」
****
走り去っていく後ろ姿に俺は笑みが零れた。
「なんだかんだ言って、好きなんだな…歌を作るのが…」
譜面を書いているときだけは、礫は楽しそうにしている。
もし、本当に楽しいと思ってくれているならこの学校に、入れてよかったかもしれない…
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