日向サンから連絡を貰って河原に行くと日向サンと林檎ちゃん、それから早乙女さんがいた。

「こんにちは」
「おう」

日向サンの隣に並んで早乙女さんとST☆RISHのやり取りを眺める。

「どういう状況ですか?」
「社長が新曲が決まったって言ったら愛島を待つって言い始めたんだ」
「でもシャイニーはここにセシルちゃんがいたとしても仲間には認めないって言ってるの」
「アイツらうたプリアワードにノミネートが決定したんだ」

6人のバランスを崩したくないってことか…

「ユーたち、これ以上クレイジーなことお願いするならノミネートは辞退デスネッ」
「もうっ、どうしちゃったのよ!!貴方たちっ」
「俺は愛島を待ちます」

聖川が、そう言った。

「え?マーくん!?」
「僕もです」
「アイツと歌ってみてぇんだよ」
「7人で歌いたいんですっ」
「お願いします」

聖川に続いて、四ノ宮、翔、音也、トキヤがそう言った。

「一ノ瀬まで…」
「みんな何があったって言うのよ」
「ミーの考えが伝わらなかったようザンス」

上空から飛行機の音が聞こえてくる。
そしてそこから落ちてくる何か…

「アイムソーリー。今回のうたプリアワードは見送るということで」

私は上空を見上げながら微笑む。

「礫、どうした?」

日向サンがこちらを見る。

「本当にさ、人って不思議だよね…」
「え?」
「大切なものの為なら…本当に何でも捨てられるんだ」

日向サンが首を傾げる。

「連絡しておきマース」

そう言った早乙女さんに間も入れずに聞こえてきた声。

「ちょっと待ってくださーい」

音也が上空を見上げて声をあげる。

「あっ」
「セシルさん!!?」
「早乙女。6人のST☆RISHで満足しているのですか!?」

拡声器を片手に空から落ちてくるセシル。

「この奇跡のハーモニー聞かないと一生後悔しますよ!!」
「言ってくれるね」
「…セシルちゃん…」

着地したセシルが微笑む。

「俺は、聞きたいな」
「Mr.御幸!!?何を…」
「いいんじゃない?聞いても」

ST☆RISHのメンバーがこちらを見る。

「俺は、彼らの繋がりが作った奇跡…興味あるな」
「ムムムッユーがそこまで言うのなら聞きまショウっ」

私はセシルに近づく。

「お帰り、セシル」
「はいっ」
「…見せてあげなよ。君達の奇跡を」

準備が整って、星空の下で歌い始めた彼ら。

「みんななにやってんの?」

嶺二さんたちが来て、驚いた表情をした。
曲を聞いて様子がおかしくなっていくみんなを見つめる。

「…心を震わせる歌、なんだろうけど…」

私には、届かないんだ。
崩れ落ちた日向サンや林檎ちゃん。早乙女さん、嶺二さん、カミュさん。
そして、少なからず驚いている藍と蘭丸さん。

「すごい、こんなに素敵なハーモニーになるなんて」
「す、すげぇ」
「最高だよ!!」
「愛島…」

みんなの視線がセシルに向けられる。

「私…音楽は人と神を繋ぐものだと思っていました。でも、春歌の曲は人と人をも繋ぐことが出来るのですね。私、沢山の笑顔を運びたい。ずっとみんなと一緒に歌いたい」

セシルが楽譜から視線をあげて言葉を続ける。

「こんな出会い、二度とありません」
「セシルさん…」

七海がペンダントをセシルの掌に置く。

「セシルさんが帰ってくるのみなさん、信じてましたから」
「セシル」
「これからも一緒に歌いましょう」

セシルが、早乙女さんの方を向いて頭を下げる。

「お願いします。わたしをST☆RISHに入れてください」
「…だってさ、早乙女さん?」

私は早乙女さんに視線を向ける。
突然叫びだした早乙女さんに苦笑する。

「この曲とユーたち7人。シャイニング事務所社長としてこのまま捨て置くわけにはいきまセーン。改めてユーたちに命じマス!!ユーたち7人は…」

全員が早乙女さんを見つめる。

「今日から新生ST☆RISHデース」

喜ぶ彼らに早乙女さんが続ける。

「そして、この歌。聞いてすぐにミーはピーンときたぜよ。この曲のタイトルはマジLOVE」
「「「「「「「2000%!!」」」」」」」

ピースをしながら言った彼らに私は微笑む。

「いやいやいやユーたちわかってきましたね。では早速ミーは政府に手を回してMr.愛島を守るべく「その必要はありません」」

セシルが巻物を掲げる。

「なにそれ?」
「私がST☆RISHの一員になること王に許していただいた許可証です」
「読めねー…」
「これ貰うのに少し、時間がかかっちゃいました」

早乙女さんがマジックハンドでそれを奪い取る。

「ブラボーッ」

早乙女さんがどこか嬉しそうにそう言った。

「アイツら…」
「王位継承を蹴るだけでなく許可証まで…」

嶺二さんがポケットから何か取り出す。

「興味本位でアグナパレスにこれ送ったんだけど…まさか、完璧に完成させるとはね」

私があの時嶺二さんに渡した楽譜に書かれた歌詞。

「貴様…」
「礫君には俺の企みバレバレだったけどねん」

ST☆RISHのデビューが決定した時のように空に光が走る。

「全国アイドルファンのもなさん、こんばんは!!輝かしい新人アイドルが現れたときに贈られる幻のタイトル。うたのプリンス、ブランドニューアワード開催のお知らせを生中継でお伝えします。なんと今回のノミネートは2組!!」

空に映像が映し出される。

「一組目はST☆RISH!!そして、二組目はHE☆VENS!!」

空に彼らの顔が映し出された。

それを見ながら私は視線を伏せる。

「キセキですね」
「え?」
「受賞はほぼ彼らに決まっていたらしいです」

ST☆RISHのメンバーが空の映像をじっと見つめる。
その瞳に迷いはなかった。
映像がHE☆VENSのライブ会場に切り替わる。
凄い歓声だな…

「今回のノミネートおめでとうございます。では、テレビの前の皆さんに今のお気持ちを一言」

司会者に向けられたマイクを鳳さんが奪い取る。

「HE☆VENSの鳳瑛一だ。ノミネートに関しては心外の一言だ。他のコメントなどあるのか?いや、ありえない」

マイクを司会者に投げて、鳳さんが言葉を続ける。

「俺達が他のものと比べられるなんて、ありえない。そうだろ?天使たち」

投げキスをしながら言った鳳さんにファンの歓声が上がる。

「綺羅、挨拶!!僕の順番が来ないでしょ?」
「HE☆VENSの皇綺羅」

それだけ言って黙った皇さんに帝さんは不服そうな顔をしている。
てか、本当に喋らないな…皇さん。

「HE☆VENSの宇宙レベルでキュートなアイドル、帝ナギだよ。うたプリアワードは僕達が頂くよ」
「さ、さすがうたのプリンスに一番近いと言われていただけのことはあります。しかしながら、今回はもう一組」

ST☆RISHに中継が繋がっております、という司会者の言葉に驚く声。
カメラから避けようとカメラを探していると腕を掴まれた。

「え?ちょ、林檎ちゃん?」
「ちょっと、お手伝いお願いねっ」

マイクを持たされて引っ張られる。
「はーあい、夜でもおはやっぷ〜」
「みなさんこんばんは」

作り笑顔を張り付けながら映像を見つめる。
HE☆VENSのライブ会場から聞こえる私と林檎ちゃんの名前に溜息をつく。
てか、カメラ回してるの日向サンかよ…

「えー、ST☆RISHは今休暇中でキャンプ場に来ていまーす」
「ST☆RISHの皆さん、現在の心境をおねがいします」

マイクを四ノ宮に渡して私は日向サンの横に移動する。

「何でカメラマンやってるの?」
「やれっていわれたんだ」
「お疲れ様…」

この人もつくづく、苦労しているな。

「今回ノミネートは2組。ですが、栄光を手にいれられるのは1組。そこでうたプリ委員会は今回特別にこの両者の戦いに相応しい場所を用意しました!!」
「戦い?」
「勝負はなんと、ライブ対決です!!」

ライブねぇ…
てか、HE☆VENSとのコラボの件どうなったんだろ…

早乙女さんがカメラの前に立って、セシルの新メンバーとして紹介した。

「何人増えようが、同じことだ」

低い声が聞こえて、司会者が慌てた声を出す。
そして、カメラは葉巻をふかす、おじさま?にカメラを向けた。

「泣く子も黙るHE☆VENSの生みの親。レイジング鳳だぁ!!」

…誰?

「レイジングエンターテイメント社の社長。レイジング鳳」
「鳳瑛一、彼の父親か…」

鳳さんのお父さんで、事務所の社長、ねぇ…

「久しぶりよのう、早乙女」
「相変わらずデスネー。今日は一つ、ミーからの提案がありマース。どちらが真のうたのプリンスか見極めるにはこの勝負より近い条件で歌うべきざますっ」

早乙女さんが言葉を続けていく。

「同じ作曲家による曲を歌うのがベストオブザベスト」
「え?」
「同じ作曲家?」

て、ことは…七海の歌ってこと?

「ここに、Miss七海が作った素晴らしい曲がありマース」

楽譜の束を空に掲げた早乙女さん。

「どれでも好きなのを持って行ってアレンジしちゃってクダサーイ」

七海の表情に驚きと困惑が現れる。

「そ、それは…みなさんのために書いた…」
「何を言い出すかと思えば…」

ST☆RISHにも困惑の色が見える。

「力の差が露見するだけだ。…よかろうっ」
「面白い戦いになりそうデース。わくわく」

司会者が同じ作曲家の曲で戦うという前代未聞の戦いになりました、と声を荒げて言う。
レイジングさんがニヤリと笑って立ち上がる。

「聞け、HE☆VENSよ。この勝負負けたら解散!!よいな?我がレイジングエンターテイメントには敗者などいらぬ」

ファンから聞こえる悲鳴の中、鳳さんが光悦な表情を浮かべながら笑う。

「いいっ、最高にぞくぞくする」

鳳さんって、少し変な人…?

「ならば、ST☆RISHも負けたら解散といこうか」

全員が驚いて声をあげる。
解散をかけた戦い、か…
そりゃ、それを邪魔する奴は少ないに限るよね…

「おっと!!?ここで、HE☆VENSから重大発表があるそうです」

鳳さんがマイクを握る。

「俺達が勝つ。だから、解散はありえん。…それから、重大発表がある。御幸礫!!」

鳳さんが、私の名前を呼んだ。

「え?」

日向サンがカメラをこちらに向けた。
空には私の顔と鳳さんの顔が映る。

「俺達HE☆VENSと礫のコラボが決定した」

ライブ会場は歓声に包まれ、ST☆RISHは驚きの声をあげる。
早乙女さんは苦い顔をしている。

「礫、どういうことだよ!!?」
「どうもこうもないけど」

驚く日向サンにそう答えて、カメラに笑顔を見せる。

「今夜9時から放送の番組でコラボの経緯がわかるから是非チェックしてね?ライバル事務所だけど、俺には関係ない。…俺がHE☆VENSに歌って欲しいと思ったから最高の楽曲を提供する」
「楽しみにしているぞ、礫」
「はい。俺も楽しみにしてます」

鳳さんを映していたカメラがレイジングさんに切り替わる。

「お前が、御幸礫か…」
「はい」
「若くして、いい詩を書くではないか」
「え?あ、ありがとうございます」

なんで、褒められてるんだ?

「期待しているぞ」
「はい」

カメラはまた鳳さんを映した。

「礫、またな」
「じゃあ、また」

やっと、コラボの話が進展した。

「礫、どういう事だよ」
「何が?」
「俺達より先にHE☆VENSに楽曲提供って…」

詰め寄ってきた翔と哀しそうな顔のトキヤに首を傾げる。

「あの人達なら歌えると判断した。…それに、」
「それに?」
「厄介なライバルが2組いないだけマシでしょ?」
「え?」

じゃあ、おやすみ。
私はそれだけ言ってコテージに向かった。


****


「お前、本当にコラボやるのか?」

蘭丸さんがベッドに腰掛ける私にそう問いかけてきた。

「…本当だよ」

鞄から楽譜をいくつかテーブルに乗せる。

「それが、今のところ完成してるHE☆VENS用の楽曲」
「よく、シャイニーさんが許可したね〜」

嶺二さんが楽譜を見ながら言う。

「それは僕も思った。ライバル事務所でしょ?」
「普通ならありえん」

藍とカミュさんもそう言ってこちらを見る。

「あの人の我儘を聞いた代わりに、頼んだだけだよ」
「我儘?」
「そう。…もしかしたら、見つかったかもしれないのに」

4人が首を傾げる。

「何か探し物?」
「まぁ、そうだね…何処にあるかもどんな形かもわからない。けど…見つけたかった」

過去のない私が未来に生きるには、現在に存在するには…
何か決定的なものが必要だと思った。
私がいると、そう知らしめるような…

「礫…」

蘭丸さんが私の頭をガシガシとかき乱す。

「お前、最近変だぞ?」
「…そうかな?」
「まぁ、朱利のこともあんのかもしんねぇけど…」

蘭丸さんの言葉に目を伏せる。

「ごめん、ちょっと…自分の中で納得いかないというかスッキリしないんだよね」

俯いたまま言葉を続ける。

「朱利のことは、まぁ…多分平気。けど、自分のことがさ…どうにもわからなくて」

ただでさえ迷っていたときに、早乙女さんから言われたあの言葉。

「どうすればいいか、わからないんだ」

心配そうな彼らの瞳から逃げるように立ち上がり、ちょっと散歩してくると一方的に告げてコテージの外に出る。
少し歩いたところで日向さんを見つけた。

「日向サン?」
「礫…」

ベンチに座っていた日向サンが隣を叩く。

「ちょっと、話すか?」
「うん」

日向サンの隣に座ると、頭に手が乗せられた。

「さっき聞いた。うたプリアワードの件」
「…そっか」
「ST☆RISHのためにノミネートを辞退させるなんてな…」

日向サンの言葉であの日の社長室が思い出された。



「Mr.御幸。ユーにうたプリアワードにノミネートしたいと連絡が来まシター」
「え?」
「もちろん、お断りの連絡はいれてありマース」

早乙女さんの言葉に目を伏せる。

「ST☆RISHの受賞のためデース。わかりますよね?」
「…はい」
「ユーには、そんな称号なくともこの世界で生き残ることが出来マース」

早乙女さんは、やっぱり気づいてない。
いや、興味もないのか…
どう足掻いても私は早乙女さんの元でしか生きれないから。

「どうしマシター?Mr.御幸」
「…いえ」

そうなるだろうとは、思ってた。
だから、落ち込む必要なんかない。
なのに、どうしてだろう…

「わかりました」

ほんの少し、認めたくない。



思い出してまた、なんとも言えない気持ちになる。

「出たかったのか?」
「そういうわけじゃない。けど…もし、受賞出来たら俺が探してるモノが見つかったかもしれないんだ」
「探してるモノ?」

受賞出来れば沢山の人が認めてくれる。
今よりももっとたくさんの人が私を知ってくれる。
そしたら、私の過去さえも埋めてくれるんじゃないかって…そう思った。

「礫?」
「…ごめんね、日向サン。わけわかんないこと言って」
「いや、別に構わねェけど…お前、大丈夫か?」

顔を覗きこんできた日向サンと視線が交わる。

「学園にいたころと、似た目をしてる」
「え?」
「なんか、変なこと抱えてんだろ?」

変なことか…
まぁ、普通は悩むようなことじゃないよね…
この世界に生まれていたなら…気にも留めないこと…

「大丈夫だよ、多分。なんとかなるから」
「そうか?」
「うん、大丈夫」



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