外のベンチで、2人きりになった私たち。
私は閉ざしていた口を開いた。
「今まで、隠していたことを話します」
「礫…」
「…俺は、この世界の人間じゃありません」
「は?」
目を丸くして固まる蘭丸さんに言葉を続ける。
「正直、頭おかしいと思われるかもしれません。けど、全て事実だから。聞いて」
「お、おう…」
「俺が生きていた世界には早乙女さんはいいなかった。もちろん、蘭丸さん達もいない。アイドルはテレビの中にいたけど、興味もなかったから俺はあまりよく知りません」
前の世界を思い出しながら言葉を続ける。
「中学生のころ、入院していた朱利と出会って、お互いを好きになって…付き合っていました。けど、朱利は余命宣告通り亡くなって…一人残された俺は屋上から飛び降りた」
小学生で祖母を亡くして以来、私は独りだった。
そんな私を愛してくれた朱利を失い、私はまた独りになった。
人の温かさを知ってしまった私に、独りで生きることは出来なかった。
「そこで、俺は死にました。けど、気づいたらここにいたんです。早乙女さんは倒れていた俺を拾って、アイドルか作曲家を目指さないかと提案してきました」
「おい、待てよ。お前…死んだって…は?」
「信じられないだろうけど、それが真実なんです。提案を断った俺に、早乙女さんはここで死ぬか、学園に入るかどちらか選べと言ってきて…俺は死を選びました。朱利が私の全てだから。彼がいないなら、どんな世界でも無意味だから」
また大きく見開かれた瞳。
「…けど、そんな俺を日向サンが育てると言って…俺の意見を無視して引き取ったんです」
「それで学園に入って俺達出会ったのか?」
「はい。この間壊れたピアスと携帯、ウォークマンは前世から持ってきていたものです。もう、限界が来て壊れちゃいましたけどね」
それらはもう砂になってしまった。
砂は小瓶に入れて大切に保管してあるけど…
「俺がこの世界の人間じゃないことはきっとすぐにわかりますよ。俺には、戸籍がないから」
「嘘じゃ、ねぇんだな…」
「はい。前に腕を怪我して蘭丸さんの部屋に行ったことありましたよね?あれも病院に行けないから蘭丸さんのところに行ったんです」
私は胸のあたりの服をキュッと握りしめる。
「私にある過去は、この世界のものじゃない。俺にも、過去はない。だから…過去が欲しかった。私が私である証明が欲しかった。私は自分を見失いたくなかった」
「…そう、か…」
「けど、もういいんです」
私は微笑む。
「過去がなくても、俺を愛してくれるファンがいる。何も知らずに傍にいてくれ友人がいる。…早乙女さんとも、上手く和解できたと思います。だから…胸を張って、皆さんの隣に立てるようになったと思ってます」
「…どうして、俺に話した?」
「約束だったので。たとえ、蘭丸さんが俺を嫌いになっていたとしても…もう裏切らないと言いましたから」
笑いながら言うと、蘭丸さんが私を抱きしめた。
「え?」
「悪かった…ヒデェこと言って…勘違い、した。お前が移籍すると…思った」
「しませんよ。その代り、一緒に歌うことになりました。勘違いさせるようなことをしてごめんなさい。それから…ずっと隠していてごめんなさい」
背中に回った腕がキツくキツく私を抱きしめる。
「お前は悪くねぇ…ちゃんと、お前の全てを受け入れる」
「こんな夢物語なのに?」
「お前は、嘘は言わねぇ…俺も、約束守るからな」
体が離れて、至近距離で私を捕えた色の違う瞳。
「好きだ」
「え?」
「お前のことが好きだ」
好き?
あれ、最近よく告白されるな…
「今すぐに返事はいらねぇ…けど、考えてくれたらうれしい」
「少し、時間を貰いたいです」
「あぁ。…悪かった礫」
優しい手が私の髪を撫でる。
「これ、返す」
私がつけていたブレスを蘭丸さんが腕に付けてくれた。
「これ…」
「もう、外さねぇから…礫も、外すな」
「…はい」
腕に光るブレスを撫でる。
「ありがとう」
「俺も、ありがとな」
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