告白の後、私は蘭丸さんと仕事することがたくさんあった。
2人きりになっても、蘭丸さんはいつも通りだったけど、頭を撫でてくれることはなかった。

それが寂しくて、辛かった。
そこで、初めて気づいたのだ。
彼が好きだと…

「疲れましたね」
「そうだな」

仕事帰り、2人で歩く道。
歩いて帰るのは初めてだった。

空を見上げると綺麗な星と月が輝いていた。
その時浮かんだフレーズに私は内心苦笑する。
きっと気づいてはくれないだろうなと思いながらも口を開く。

「…月が、綺麗ですね」
「おう、そうだな…て、は?」

蘭丸さんが足を止める。
「蘭丸さん?」

顔を紅く染めて立ち止まった彼に、あぁ通じたんだと嬉しくなる。

「お前…わかってて言ってるのか?」
「…わかってますよ。I LOVE YOUの意訳、でしょう」

私は微笑んで、月を指差す。

「もっと、ちゃんと返事するつもりでしたよ。けど…つい零れちゃったんです。綺麗でしょう?凄く」
「…そう、だな…」

月を見上げた蘭丸さんに抱き着く。

「あ、おい!!」
「好きです、蘭丸さん。俺を受け入れてくれて…ありがとうございます。迷惑かけると思うんですけど…傍にいてもいいですか?」
「…んなもん、当然だろ」

背中に回った腕に私は微笑む。

「また、頭撫でてくださいね」
「は?」
「最近、撫でてくれてないでしょ?」

驚いた顔をしたあと、笑顔になってぐしゃぐしゃとかき乱された髪。

「可愛いことばっか言ってんじゃねぇよ」
「可愛くはないです」

体を離して、蘭丸さんが微笑む。

「帰るか、礫」
「はい」

繋がれた手に少し力を入れる。
お揃いのブレスが揺れる。

「初めて出会った日も、月綺麗だったんだぜ?」
「そうだったんですか?」
「お前は、下ばっかり見てたからな」

月を見上げて首を傾げる。

「あの日の空は真っ暗でしたよ」
「お前に映ってたのは…だろ?俺には綺麗な月とお前が見えてた。なんかの絵みたいに儚かったんだけどな」
「今は儚さはないでしょ?」

私の言葉に蘭丸さんが苦笑する。

「強くなったからな。けど、俺の前では弱くていい」
「…うん」
「何度だって助けてやるし、いつだって傍にいるし、守ってやるから」
「ありがと」

部屋に帰った私は頭に浮かぶ詩を譜面に乗せていく。

「タイトルは…君に贈る最初の詩かな」

完成した譜面を月にかざす。

「朱利、蘭丸さんと…幸せになるからね」
「恥ずかしいこと宣言してんじゃねぇよ」
「あれ?」

いつの間にか部屋の中にいた蘭丸さんが口元を抑えて視線を逸らす。

「ちゃんと報告しないと。幸せになってって言われたんだ」
「言われたって、いつ?」
「倒れたときにね、夢の中で」

私の言葉に蘭丸さんは優しく微笑んだ。

「幸せにする。朱利の分もな」
「ありがとう」

月にかざしていた譜面を差し出す。

「君に贈る最初の詩…私から、蘭丸さんへの気持ちを全て詰め込んだ詩」

譜面を受け取った蘭丸さんはすぐに顔を紅くする。

「今、歌ってとは言わないから。大切に持ってて。もし…私に最期の日が来て…さよならしないといけなくなったら」

言葉を続けようとした口を蘭丸さんの口が塞いだ。

「最期のときは、俺が歌ってやる。けどな…んな、悲しいこと今話すなよ」
「…うん、ごめん」
「俺はお前を独りにはしねェから」

酷く優しい笑顔に私の頬に涙が伝う。

「ありがとう」
「好きだ、礫」
「私も、好きだよ…蘭丸さん」

ねぇ、朱利。
きっと、彼なら朱利の分も私を大切にしてくれる。
そうでしょ?


****


最近公私共に両立している。
なんて、初っ端から言いながらも私はHE☆VENSとST☆RISH、そしてQUARTET NIGHTの3組が同時に出演する歌番組の撮影に来ていた。
しかも、司会は日向サンと林檎ちゃん。

「人多いな…」
「礫!!」

私に飛びついてきたナギの頭を撫でる。

「今日はよろしくねっ」
「んー、よろしく」

綺羅さんはじっとこちらを見つめ、瑛一さんは溜息をついていた。

「お前は何故、すぐに礫の所に行く」
「え?だって、僕…礫のことだーい好きだもん。ねー?」
「ねーって言われても困る」

溜息をついた私の腕に抱き着いたのは茶色のふわふわした髪。

「ダーメ。礫君は僕らの!!」
「嶺二さん、大人なんだから…ナギみたいなこと言わないでよ」
「わー、今日も可愛いです〜」

逆の腕に抱き着いたふわふわの髪に私はまた溜息をつく。

「四ノ宮も、離れろ。動けない」
「あたしも、ぎゅー」

後ろから私に抱きついた林檎ちゃん。

「林檎ちゃんもなにしてるんですか…」
「お前、なにしてんだよ」
「林檎、お前までなにやってんだ」

呆れた顔の蘭丸さんが嶺二さんを、困った顔をしている日向サンが林檎ちゃんを引き剥がし、翔とトキヤが四ノ宮を引き剥がす。
そして、無言で綺羅さんがナギを剥がした。

「あーありがとう、みんな」
「礫、平気か?」

顔を覗きこんできた綺羅さんに微笑む。

「平気ですよ。わざわざありがとうございます」

番組の撮影が始まる。
始まる前と変わらずワイワイとした撮影。

そのまんまじゃんか…
カメラの前で切り替えるってことを知らないのか…

私はまた小さく溜息をついた。

「それじゃあ、ラストに御幸と3組でメドレーを」
「はい」
「今回は何とー!!?」
「なんと、俺が歌っちゃいます。皆と一緒に」

カメラに手を振る。

「今回限りの特別メドレー、お楽しみに」


ギターを持ってカメラの前に立つ。

私はこれからも迷い、足を止め、後ろを振り返る。
けど、きっと私は…貴方と一緒になら前に進んでいける。

カメラを指差して微笑む。

「まだ見ぬ未来へ…貴方と一緒に」

キャーッと聞こえた歓声。
ギターを奏で始める。

私は、きっと…
私として…未来へ行ける。



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