「トキヤー」
「なんです?」

驚いた顔をしたトキヤに微笑む。

「今日、オフだったよね?」
「はい。そう、ですけど…」
「今日の夜9時から歌番組生放送なんだけどさ…見て欲しいんだよね」

トキヤが首を傾げる。

「別に構いませんけど…」
「新曲と一緒に未発表の曲を歌うことになっててさ…それを、聞いてほしい」
「わかりました」

不思議そうにしながらも頷いてくれたトキヤ。

「じゃあ、行ってくる」
「頑張ってくださいね」
「ん、頑張る」

いくつか仕事を終わらせて、歌番組の撮影が始まった。
次は私が歌う番。
新曲を歌った後カメラが私に近づく。

「次の曲は、未発表の曲です。」

カメラを指差して微笑む。

「貴方へ贈ります。聞いてください、君に贈る最初の詩」


****


言われた通り、番組を見ていると礫の歌う番になる。
いつも通り、新曲を歌った礫にカメラが接近する。

『貴方へ贈ります。聞いてください、君に贈る最初の詩』

彼女の歌う詩に目を見開く。
私と出会ったころからのことを歌うその歌に、画面から目が離せなくなる。

『今、貴方に伝えるよ。きっと届くでしょ?私も…貴方が好き』

恥ずかしそうに微笑んだ彼女に、画面の中の歓声なんか聞こえなくなる。

「私への返事だと、考えていいんですか?」

番組が終わってすぐに携帯に電話をかける。

『聞いてくれた?』
「あの…あれは…」
『トキヤに贈った詩だよ。ねぇトキヤ…』

ドアをノックするが聞こえる。
今は電話の方が大事なのに…
鳴り止まないノックに携帯に耳をあてながら渋々ドアを開けると、そこには見慣れた姿があった。

「ちゃんと、届いた?」
「礫…!?」
「歌ってすぐに帰ってきたんだよ」

電話から耳を離した礫が私を抱きしめる。

「好きだよ、トキヤ」
「私も、です」
「知ってる」

礫はクスクスと笑う。

「返事遅くなってごめんね。それから…私に追いついてくれてありがとね」
「え?」

貴方に追いつきます。胸を張って友達と言えるように
自分が言った言葉を思い出して、慌てて礫の顔を見る。

「胸張って友達とは言えないけど…胸張って恋人だといってくれる?」
「はい」
「そっか、嬉しいな」

少し恥ずかしそうに言った礫はやっぱり女の人だ。
凄く、綺麗だ…

「また、よろしくね。目指すものも歩く道も違うけど…隣にいて」
「はい。絶対に…隣にいます」
「ありがとう」

きっとこれから大変なコトだらけだろうけれど、きっと私は礫の隣に立っていられる。

「ねぇトキヤ」
「なんですか?」
「あの詩、トキヤが貰ってくれない?」

朱利が私に贈ったように、私も貴方に贈らせて?
そう言って微笑んだ礫が酷く愛おしい。

「いいんですか?」
「うん。君に贈る最初の詩だから」
「ありがとうございます」

次の日、彼の机の上には譜面が並んでいた。
2人を繋ぐ詩。
それを見てまた微笑む。

「トキヤー、仕事行くよ!!」
「はい、今いきます」

部屋の入口に来た礫の額にキスを落とす。

「早乙女さんにバレても知らないからね」
「きっともうバレてます」
「…それも、そうか」

礫は苦笑して手帳を開く。

「さてと、今日の仕事は…」
「礫」
「ん?」
「好きです」

私の言葉に礫は微笑む。

「知ってる。私も好きだから」


****


最近公私共に両立している。
なんて、初っ端から言いながらも私はHE☆VENSとST☆RISH、そしてQUARTET NIGHTの3組が同時に出演する歌番組の撮影に来ていた。
しかも、司会は日向サンと林檎ちゃん。

「人多いな…」
「礫!!」

私に飛びついてきたナギの頭を撫でる。

「今日はよろしくねっ」
「んー、よろしく」

綺羅さんはじっとこちらを見つめ、瑛一さんは溜息をついていた。

「お前は何故、すぐに礫の所に行く」
「え?だって、僕…礫のことだーい好きだもん。ねー?」
「ねーって言われても困る」

溜息をついた私の腕に抱き着いたのは茶色のふわふわした髪。

「ダーメ。礫君は僕らの!!」
「嶺二さん、大人なんだから…ナギみたいなこと言わないでよ」
「わー、今日も可愛いです〜」

逆の腕に抱き着いたふわふわの髪に私はまた溜息をつく。

「四ノ宮も、離れろ。動けない」
「あたしも、ぎゅー」

後ろから私に抱きついた林檎ちゃん。

「林檎ちゃんもなにしてるんですか…」
「お前、なにしてんだよ」
「林檎、お前までなにやってんだ」

呆れた顔の蘭丸さんが嶺二さんを、困った顔をしている日向サンが林檎ちゃんを引き剥がし、翔とトキヤが四ノ宮を引き剥がす。
そして、無言で綺羅さんがナギを剥がした。

「あーありがとう、みんな」
「礫、平気か?」

顔を覗きこんできた綺羅さんに微笑む。

「平気ですよ。わざわざありがとうございます」

番組の撮影が始まる。
始まる前と変わらずワイワイとした撮影。

そのまんまじゃんか…
カメラの前で切り替えるってことを知らないのか…

私はまた小さく溜息をついた。

「それじゃあ、ラストに御幸と3組でメドレーを」
「はい」
「今回は何とー!!?」
「なんと、俺が歌っちゃいます。皆と一緒に」

カメラに手を振る。

「今回限りの特別メドレー、お楽しみに」

ギターを持ってカメラの前に立つ。

私はこれからも迷い、足を止め、後ろを振り返る。
けど、きっと私は…貴方と一緒になら前に進んでいける。

カメラを指差して微笑む。

「まだ見ぬ未来へ…貴方と一緒に」

キャーッと聞こえた歓声。
ギターを奏で始める。

私は、きっと…
私として…未来へ行ける。



戻る

Top