「あれ、トキヤ?」

テレビ局で見覚えのある姿を見つけた。

「礫…会うのは久しぶりですね」
「そう言われればそうかもね。これから仕事?」
「はい。礫は?」
「これから打ち合わせだよ」

手帳で次の予定を見ながら言う。

「相変わらず、大変そうですね」
「まぁ最近は慣れてきたかな」
「…そういえば…今度の休み、空いてますか?」

トキヤの言葉に首を傾げる。

「空いてはいないけど上がりは早いはずだよ」
「これ、よかったら言ってあげてください」

トキヤの鞄から出てきた子供の字でかかれたチラシ。

「これは?」
「音也が来て欲しいと、言ってたんですが…私は仕事で」
「へぇ…行けたら行ってみる」

チラシを写メってからトキヤを見る。

「…何か?」
「なんか、悩んでる?」

トキヤが目を丸くした。

「いえ、何も…」
「そう、ならいいよ。それから、音也に会う機会があれば伝えてくれる?」
「なんですか?」

手帳のメモのページを破って、ペンを走らせる。

「伝えるのは大変だろうから…これ、渡してもらえればいいよ」
「…番組の収録お疲れ様でした。監督がとてもよかったと言ってましたよ…ですか」
「わざわざ音読しないでよ」
「相変わらず、優しいですね。渡しておきます」

鞄にそれをしまって、トキヤは時計を確認する。

「…すみません、そろそろ時間が…」
「あぁ、引きとめてごめんね」

ポケットからあるものを出して彼に向けて投げる。

「疲れてますって、顔に書いてあるよ」
「え?」

礫が投げたものをキャッチして、ゆっくり手を広げる。

「…飴?」
「俺のお気に入り。じゃあね」

礫は手をひらひらと振って待っていたマネージャーに駆け寄る。

「貴方は、いつも私の前を走っていますね…」

マネージャーと去っていく礫を見送って手の平の飴に視線を落とす。

「あれ?」

黄色のパッケージに書かれた黒い文字。

「頑張れ、ですか…」

礫の書いたたった3文字に心が軽くなった気がする。

「絶対に、追いついてみせますよ。礫」

誰かに聞かせるわけでもなくただ呟いた。


****


週末。
トキヤの言っていたバザーを見に行こうとしたとき携帯が鳴った。

「もしもし?あ、日向サン?」
『礫、久しぶりだな』
「久しぶり。どうかした?」
『今日、時間作れるか?』

これから、バザーを覗いたとして…

「まぁ、夕方ぐらいなら」
『学園に来てくれ。頼みがある』
「了解。じゃあまた後で」

茶色のウィッグに黒縁の眼鏡をかけて、目的の場所に向かった。

「あ、結構人がいる…てか、クマ?」

5体のクマの着ぐるみに首を傾げながらも、そこに近づく。

「…何してんの、トキヤ」
「え?」

紫のクマのトキヤがこちらを向く。

「女装の次はクマ?…ちょっと、面白すぎる」

クスクスと笑うと、ピンクのクマの翔も近づいてきた。

「トキヤ、どうした?」
「いや、彼が…」
「…知り合い?」

あ、そう言えば…この姿で会うの初めてかも…

「あぁ、ごめん。これじゃわかんないか…俺だよ、御幸礫」

眼鏡を外してニコリと微笑む。

「「礫!!?」」
「そうそう。一応来てみたんだけど…面白いものが見れたよ」
「まさか、本当に来るとは…」

肩を落とすトキヤに苦笑して、子供の中心にいる音也を見る。

「彼は、相変わらずだね」
「え?」
「なんでもない」

数人の子供がこちらに駆け寄ってくる。

「お兄ちゃん、クマちゃんの友達?」

首を傾げる子供たちに視線を合わせるためにしゃがむ。

「俺の大切な友達だよ」
「音兄も?」
「うん」

嬉しそうに笑う彼らの頭を撫でて、音也に近づく。
隣には、七海がいた。

「2人はね、ラブラブなんだよー」

女の子が嬉しそう内緒だよってに教えてくれた。

「ちょ、何言ってんのさ!!」

それが聞こえていたのか音也が慌ててこちらを見た。

「…礫?」
「あ、わかった?」
「うん。て、そうじゃなくて!!え!?なんでいるの!?」

またまた慌てる音也に苦笑する。

「可愛いクマちゃんが呼んでくれたんだよ。それにしても、ラブラブねぇ…」
「いや、本当に違うからね!?」
「うん、知ってる」

横で首を傾げてる七海を見る。

「まぁ、大変そうだけど頑張って?」
「ちょ、礫!!?」
「七海も、仕事頑張れよ」
「あ、はいっ」

これ以上ここにいるのは、まずいかな。
時計を見ながら出口に向かう。

「もう帰るのですか?」
「急遽仕事が入っちゃってね。それに…」
「それに?」
「楽しそうな君らを邪魔するのは如何なものかなって」

トキヤの顔が引きつった。

「楽しい?」
「子どもといると、心が洗われるって言うじゃん?トキヤの悩みが渦巻く心…落ち着かせるにはいいんじゃないかなって」
「貴方はいつもそうやって…」
「じゃあ、また。みんなにもよろしく伝えておいて」

私はそこから出て、タクシーに飛び乗る。

「早乙女学園まで、お願いします」



戻る

Top